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dear03
顔にかかる程度ゆるくカールした黒髪。
いつもなに考えてんのかわからない二重の眼。
広い肩幅を魅せるように胸元の空いたTシャツを着ている。
百八十の身長にふさわしい長い足は紫のパンツがよく似合う。
つまり、傍目にはモデルのように格好よい人物ってこと。
俺もはじめのうちは騙された。
「やっと出てきたね。ああ、たまんないっ。今日の龍は露出が過ぎるよ。ボクを愛殺す気!?」
誤解しないで戴きたい。
俺は愛用の水色シャツのボタンを二つ外しているだけだ。
「勝手に死んでてください。その代わり先輩の牛バラ定食は確実になくなってますから」
頭を抱えて悶えてる亜廉の横をスタスタと通りすぎる。
「待っててあげたナイトを置いてく気?」
肩を掴んで囁かれる。
一瞬で鋭くなった瞳が俺を動けなくさせてしまう。
「…ッ、いいから黙って歩いてください、恥ずかしい」
「なんでそんな欲情したバラみたいに真っ赤になってるの。龍はボクをどうしたいの?」
「う、るさいっ。この辺は友人も住んでるんですよ。いつも先輩のせいで俺がホ……変な趣味じゃないかって疑われるんで迷惑してんです! 馬鹿なこと垂れ流すんなら一人で行きます」
鞄を担ぎ直してフイと顔をそらすと、後ろから力強く抱き締められた。
頭ひとつ以上に身長差のある俺はすっぽりと腕の中に収まってしまう。
「ごめん。もう言わないから龍と一緒に歩かせて? 一日三時間は龍の半径一メートル以内にいないと耐えられないんだ」
なんで怒ってたのかわかってるんだろうか。
無言で歩き出すと亜廉も隣につく。
入学して二ヶ月。
二人の歩調は無意識に揃った。
「お腹空きました」
「えっ、本当に? 大丈夫? 歩ける? ここからはボクがお姫様だっこして」
こんな調子で一日が終わる。
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