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第43話 秘密のレッスン
「アイル様はまだ、Ωに覚醒されていないご様子で」
柔らかに男は微笑んだ。
さざなみが湖水色の表層を揺らす。
「おっと、逃げないで下さい」
腰を抱き寄せられ、右手が頬を撫でた。
指一本だけなのに、カァっと触れられた場所が熱くなる。
「唇も愛でさせて下さい」
下りた指先が下唇を辿った。
「咥えて下さい」
小さくノックした人差し指の先っぽを唇に挟む。
(どうして?)
拒めないのだろう。
「お口の中の指を舌先でつついて下さい。できますか」
口の中の異物に恐る恐る舌を伸ばす。
「そう……お上手です」
ツンツン、ツンツン
舌で突く度
ツンツン、ツンツン
ランハートの指も応えるように動く。
「フフ、何だか楽しくなってしまいますね」
そうだね。
指を咥えて答えられない俺は、かわりに舌先で指をつつく。ツンツンツン。
「ありがとうございます。アイル様も……同じ気持ちのようですね。応えて下さって嬉しいです」
俺もランハートと同じ気持ちだから、ツンツンツン。
「そうですね。舌や口内の柔らかな場所を私の指で撫でて差し上げましょう。何もセックスは挿入だけではありません。私達は本番前の前段階を行っているのですよ」
……えっ。
「前戯と申します」
ドキンッ
「舌をひだ、口内を粘膜だと思って頂ければ、私の指が何なのか容易にお察しがつくかと存じます」
ランハートの指……
それって、それって!
(ランハートの、ち★★)
キャアアァアー!!
「おっと、興奮して噛まないで下さいね」
フッと微笑んだ吐息が落ちて、耳が真っ赤になる。
「本当にお可愛らしい。セックスのリハーサルで、ここまで興奮して下さって嬉しい限りです」
本番、楽しみですね……
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