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第14話 酔ったのかな?
「そうっすか、なら……良かったっす」
なんとかそれだけを口にして、俺は自分の体を抱きしめて歯を食いしばった。
下手に口を開いたら、変な声が出そうで怖い。
「ミジェが作った魔道具はもちろん性能もいいけれど、造形にもこだわりがあって美しいね」
好きだなぁ……と呟くように言って嬉しそうに俺を見て笑う目の前の男の邪気のなさと、俺の体をまさぐってくる魔力の容赦のなさに言いようのないギャップを感じる。
「ミジェ、聞いてる?」
聞いてる。けどもう声が出せない。
グラスが割れるんじゃないかと思うくらいギュッと握りしめて耐えていたら、すうっ……と唇の上を魔力が撫でた。
「君は酒を飲むといつも、どうしてそんなに可愛い顔をするんだ……」
艶を含んだ声にぎょっとして目を上げると、チェイス室長の潤んだ瞳がオレをじっと凝視している。体中の温度が一気に上がった気がした。
この雰囲気はヤバい!!!
この前魔力でキスされてるって感じた時も、こんな切なそうな顔をしていた。ただでさえ体が昂ってこの人の魔力を感じやすくなってるってのに、あんなことまでされたら……!
逃げるように椅子から立ち上がったオレの全身を、ふわっと大きな魔力が包んだ。陽だまりのように暖かくて安心できる、いつものチェイス室長の優しい魔力。
思わず身を預けたくなってしまうけど、服の中の魔力は相変わらず絶好調で、オレの胸の尖りの周囲を蠢いている。乳首に触れそうで触れないギリギリのラインを何度も行き来していて全然油断できない。
緩やかな刺激に絶え間なく翻弄されているのに強い刺激は与えられなくて、もどかしさまで感じるようになってしまった。
マジでヤバいって。
せめてトイレに行きたい。一発抜いとかないと、こんなの耐えられっこないじゃんか。
なんとか動こうとニ、三歩歩いてみたけど、酒のせいなのかチェイス室長の魔力セクハラのせいなのか、脚が震えてしまってテーブルの支えがなくちゃ立ってるのすら苦しくなってきた。
「ミジェ、どこへ行くんだい?」
オレの全身を包む魔力が、ぎゅっと力を増す。
「また何か魔道具のアイディアでも閃いた?」
必死で首を横に振る。きっと赤くなってるだろう顔を見られたくなくて、オレはチェイス室長から顔を背けた。
「頬が赤い。酔ったのかな?」
可愛い、と小さく呟く声が聞こえて、恥ずかしさのあまりオレはまた首をぶんぶんと横に振る。記憶だって飛んでないし、思考力だってある。顔が赤いのは完全に別の理由だ。
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