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第13話 滑るその手は、確信犯

 口の中へと収まるはずだった精液が、俺の首回りを中心に、ぶち撒けられた。  ねっとりと貼りつく感触と、むわりと広がる雄の匂いに、そわりと胸が震える。  首筋に飛び散った粘液を指先で、掬い集める。  無意識に、口許へと運ぶ俺の手首が掴まれた。 「喉に悪いでしょ」  子供の悪戯を窘めるかのような声が降ってきた。  いつの間にか俺の上から退き、ティッシュを手にしていたマコトに、綺麗に拭き取られてしまった。 「オレが気持ち良くなって、…汗かいて、どうすんだって話だよ」  荒い息遣いのままに、ったく…と声を零された。 「もう、正当法で。風呂入ろ」  その方が早そうだし綺麗にもなるし、一石二鳥でしょ、と横抱きにされた俺は、風呂場に運ばれる。  バスタブに湯を溜めながら、縁に座らされたオレの身体の上を泡だらけになったマコトの手が滑っていく。  俺もとボディソープへと伸ばした手は、ぺしりと叩き落とされた。 「いいから、大人しくしてて」  少しだけムッとしたニュアンスで紡がれる声に、俺は大人しくマコトに身体を洗われる。  ぬるぬると滑るその手は、確信犯だ。  洗うのは二の次で、俺の興奮を煽る悪戯を仕掛けている。  俺を療養させる気があるのか、ないのか。  本能に食い散らかされているマコトの理性。  容易く、本能に白旗を上げてしまう理性も、マコトの可愛げのひとつではあるが。 「洗ってるだけなんだけどね?」  〝触って〞と強情るように、存在を主張し始めた俺の乳首に視線を据え、カリカリと引っ掻きながら、不思議がるように紡がれる声音に、マコトの頬をむにゅりと摘まんだ。 「嘘、吐いてんじゃねぇよ」  摘まんだ頬を横に引き伸ばし、ぱちんと弾く。  その手で顎を掬い、顔を上げさせた。  にやりと故意の滲む笑顔を浮かべるマコトに、さっき〝お預け〞を食らった仕返しをしてやろうと、思いつく。 「さっきイケてねぇからな。さっさと済ますから、お前は黙って見てろ」  バスタブに張られた湯から水蒸気が立ち上ぼり、もわもわと空間を温めていく。  長風呂なんてしたら、のぼせてしまいそうだと、既に硬くなっている自分自身に五指を絡めた。  わざとに、見せつけるように足を開き、にゅるりと扱く。 「は……っ」  マコトのじっとりとした視線と、ぬるりとした自分の手の感触に、熱の籠る吐息が零れた。  我慢の利かなくなったマコトの手が、俺へと伸びてくる。  俺はその手を、無下に弾いてやる。 「黙って見てろって言っただろ……、はっ」  右手で自身を扱きながら、左手で弾いたマコトの手を拾い、指を絡め握った。 「〝お預け〞が……、どんだけ辛いか、思い……っ、知れっ…」  独りで慰め乱れる俺の姿に、マコトの息遣いが荒くなる。  堪らないというように、繋がっているマコトの指先が、うずうずと蠢いていた。

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