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あの人を意識し始めたのは中3の春。
電車に乗り遅れそうで走ってた僕と、ぶつかったのが始まり。
――あっ!!すいませんっ!!――
――いいよいいよ。電車やばいんだろ?行けよ――
――…っ!!ありがとう…ございますっ……!!――
交わしたのはたったのこれだけ。
でも、それでも、ギリギリ電車に乗れた僕の顔は、違う意味で真っ赤だった。
あれから時間がたち、今、中3の冬。
(あっ、今あくびした)
相変わらず、向こう側のあの人を見ている。
あの人の着てる制服の学校は、僕の通ってる学校と逆方向にあるから、いつも電車は真逆で。
だからいつもホームが向こう側で。
僕はいつも参考書を片手に、読むふりをしてチラチラ見ている。
参考書なんて、ただのカモフラージュだ。
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