4 / 16

4

「お前ら、ちゃんと勉強してるか?もうすぐ受験だぞ!!気を抜かず、しっかりやれよ」 そう言って、先生は授業を始めた。 もうすぐ受験―― 僕は、家から通える、県内有数の進学校を受験することに決めている。 夢とかは、特に無い。 ただ近いし、先生も両親もそこにしなさいって言うから、それだけ。 だから、電車に乗るのは中学まで。 高校からは徒歩だ。 (あの人は、どうするんだろうなぁ) 授業中なのに、思い出すのはあの人のことで。 (きっと、僕のこと知らないよね…当たり前だけど) たった1回ぶつかって、ここまで思ってる僕のほうがおかしい。 …あの人は、どこの高校に行くんだろう。 部活してるから、スポーツ推薦かな。 それとも、どこか遠くの学校に行くのかな。 いや、もしかして留学とかしたりして。 いやいやっ、無いか… …でも、もししちゃったら…… でもなぁー 悶々と考えながらも、結局1番に思うことは (…もう、会えないのかなぁ……) 名前も知らないあの人。 あっちは、きっと自分のことすら知らないだろう。 僕が一方的に知っていて…でも、向こうは知らなくて…… 何回も話し掛けようと思った。 でも、いざ話そうとしても緊張して、結局辞めてしまうのだ。 (せめて、少しでも話してみたいなぁー) 僕は、女の子みたいに話は上手くないし、寧ろ下手な方だけど。 …でも、『おはよう』って言ってみたいなぁ…… (…いやいや、知らない人から『おはよう』って声かけられるのも変か……) 受験が終わると、すぐ卒業。 あの人を見れなくなるときは、すぐそこまで来ている。 (せめて、どこ受験するかぐらい分かったらなぁ……) 「おいっ、お前当たってるって!!」 後ろの友だちから小声で言われて、慌てて前を向けば 恐ろしい形相で笑ってらっしゃる先生。 「ほーう。俺の話が聞こえないくらい真剣に考えていたのかぁ?そうかそうか」 (やばっ!!考えすぎてて全然聞いてなかった!!) そしてこの後、僕はみっちりしごかれたのである。

ともだちにシェアしよう!