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この世界に馴染めないということ 1
もともと、多分俺は生きるのが下手くそだった。
変な言い方かもしれないけど……本当に。
幼い頃からこの世界に違和感しかなくて、普通に馴染んでる周りの奴らがただただ気持ち悪かった。
発達しているテクノロジーと、目には見えないが無数に張り巡らされてるネットワーク。
毎日当たり前のように動く交通機関。
繰り返される日常と、行き交う人の群れ。
ここは、どこだ?
ちゃんと母さんの腹から産まれたはずなのに。
名前をもらって、この世界に居場所があるのに。
それなのに、何かが〝違う〟と……〝馴染めない〟と感じてしまう自分がいた。
『ねぇ、やっぱりあの子変よ』
それはまだ幼稚園に通ってる時、ふと聞いた両親の会話。
『いつまで経ってもあまり言葉を覚えてくれないし、服だって未だに1人じゃ着れない。
ちがう!ちがうー!ってそればっかり…もうなんなのあの子は……』
『食事もなかなか摂ってはくれないな…一体どうしてなんだ……』
『今日ね、園の先生に言われたの。一度お医者さんを頼られたほうがいいのかもしれないって。
でも、私たちだってもう何回も何回も頼っているのよ!けれど障がいも何も無いって言うの……
何か理由があるならそれで納得できるのに、なんで何も無いのよ……普通の子と変わらないなら、どうしてあの子は変なの?
誰か教えて? あの子はなに? なんなの……? もう…もう私、おかしくなりそう……』
『落ち着くんだっ』
その時はまだ子どもすぎて、感じる違和感を全て両親にぶつけてしまっていた。
(そうか。おれは、おかあさんを泣かせちゃってたんだ)
それからは、ずっと我慢。
服だってちゃんと着て、ご飯だってしっかり食べて、言葉も一生懸命覚えて……
当たり前を当たり前にできるよう…〝普通〟になれるよう精一杯努力した。
なんでこんなに違和感を感じるのかわからない。
どうしてみんな、普通に受け入れられるの?
俺だけが、変なの……?
なにをやっても浮かんでしまうその疑問。
けれど、それを口に出したらもっと両親が困ってしまう。
だから……
まるでこの世界にひとりだけ取り残されたような…そんな感覚に陥りながら、怖くて怖くて叫びたいのを必死に耐え続けてきた。
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