20 / 121

―醒めない悪夢―

俺は毎日夜が怖くて眠ることさえも怖くて、身体が震えて仕方なくなる。真っ暗な部屋の隅で両膝を抱えてガタガタと肩を震わせて、自分の親指の爪を無性に噛みたくなる。 自分の中で膨れ上がる不安が増して行くと、目をキョロキョロさせて、周りを見渡す自分がいる。一体、何に怖がっているのか……。  下から聞こえてくる物音にさえ、つい体が反応してしまう。 ――あの時、終わった悪夢に。毎晩眠るたびに俺はベッドの上で酷く魘される。とてもじゃ満足に、眠る事さえもできない状態だ。  どう言うわけか最近じゃ、同じ『悪夢』を繰り返し見る。まるで呪いみたいに、何度も同じ夢を見て満足に寝れた試しがない。 安心して眠りについた記憶も無く。ベッドの上で瞳を閉じると、その悪夢が俺の近くで息を潜んでいそうで堪らなく不安になって、胸が押し潰されそうになる。  その事を考えたらいつも眠れない自分がいた。最近、それが急に強まりだしたのはいつの日か、自分の部屋に飾ってあるカレンダーを不意に見た時からだ。  俺のカレンダーは、ある一ヵ所の日付けだけが黒いマジックで何度も塗り潰してある所がある。その日にちだけは決して見ないように今までそうして生きてきた。 あの日は俺にとって消えない過去であり、心に負った深い傷でもり。消す事も出来ない、俺の一生を戒める『過去』なのだから――。

ともだちにシェアしよう!