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失踪4
本人は謙遜していたが、副業じゃなく本業としてやってみればいいのに。
そう思ったが、恐らくそれは雪之丞自身が望んでいないのだろう。口に出すことはせず、そっと心に秘めておくことにした。
「ねぇ、蓮さんもやってみない?」
「え? 僕はそう言うのはあまり……ゲームには興味が持てなくて」
突然の美月の提案にたじろぐ。確かに面白そうだなとは思ったが、自分はゲームなどあまりやったことがない。
「とか何とか言って、オッサン、負けるのが恥かしいんだろ」
横から東海に茶々を入れられ、カチンときた。コイツは本当に生意気なヤツだ。
「あ? 誰に言ってるのさ。いいよ。やろうか」
売り言葉に買い言葉。よせばいいのに、つい乗せられてしまった。
結果なんて火を見るほど明らかで……。
数分後、蓮は画面に映る自分のキャラクターを見ながら深いため息をついた。
結果は惨敗。開始早々敵にボコられて即ゲームオーバーとなってしまったのだ。
美月とも対戦してみたが秒で大技を食らい、トラップに引っ掛かってあっという間にKO。
「あっはっは、くっそ弱いじゃんダッセー」
「蓮さんって、何でもこなしちゃうイメージだったのに意外だな」
「……クッ」
勝ち誇った笑みを浮かべる東海と、苦笑を浮かべる美月。
二人の反応に苛立ちを覚えるものの、事実なので言い返すことも出来ない。悔しさに顔を歪めながら、もう一度挑戦してみるが何度やってみても結果は同じだった。
「くそっ、もう一回――」
「た、大変ですっ!」
苛立ちを隠しきれず、ついムキになってスマホを再び手にした時、別の撮影の仕事で合流が遅れていた弓弦が血相を変えてスタジオに駆け込んできた。
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