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第72話
「はっ、…ぁ、…っ…」
刺激が強過ぎたのか、絶頂の余韻が長く続く。
呆然と荒い呼吸を繰り返していると、御薙が冬耶の足を掴み、腰を抱え直した。
「…いいか?」
欲望に掠れた声で聞かれても、霞んだ頭は何を聞かれているのか中々認識しない。
冬耶は、ただぼんやりと滲んだ視界で御薙を見上げた。
よくわからないが、自分ばかり気持ちよくなっているのが、何だか釈然としない。
「…ゃ、です…」
「え…」
「…俺ばっかり、気持ちいいの…、や、だから、…大和、さんも、…もっと」
「っ………、」
妙な間があり、足と腰を掴む手の力が強くなる。
「…お前って奴は…っ、」
唸るように言った御薙は、腰を押し込んだ。
「あっ……!?」
ずぶ、と冬耶の中に熱い塊が挿入ってくる。
粘膜が灼けつきそうな錯覚を覚えて、冬耶は身を捩った。
「ぅんっ…、っは、…やまと、さ……っ」
「ったく、乱暴にしないようにとか気ィ遣ってんのに、いつもいつも端から理性を奪っていきやがって…っ」
「ゃ、はぅ、あっ、んん…っ」
「…く、もうちょい、緩めろ。無理やり押し込みたくねえ」
「っあっ…、う、ゃ、できな…、」
言われても、冬耶の身体はもはや冬耶の支配下にない。
気にしなくていいから、御薙のしたいようにして欲しいと切れ切れに伝える。
冬耶の内部は、それでも柔軟に御薙を受け入れた。
折り曲げられた身体に、御薙の腰が何度も打ち付けられる。
「…はっ…、くそ、二回目なのに、全ッ然、余裕ねえな…っ」
「あ!っん、…っふぁ、はげし、あっ、あっ!」
もはや、どこがどう刺激されて気持ちがいいのかもわからない。
冬耶は箍が外れてしまったように、ただ御薙と抱き合うことに夢中になっていた。
羞恥心が、今は遠いところにある。
ぎゅっと抱きつくと、逞しい腕が抱き締め返してくれた。
その力強さに、心の底から安堵するような感覚を覚える。
「(……ああ、そうか)」
俺は、この人のことを、好きになっていいんだ。
孤独な子供の憧れとしてではなく、キャストの真冬の片想いとしてでもなく、ただの平坂冬耶の初恋として。
御薙を好きで、好きだと言って、こうして抱き合うことに何の禁忌もないんだ。
御薙は何度もそれでいいと言ってくれていたけれど、今ようやく、実感できた。
実感できたことがなんだかとても嬉しくて、涙がこぼれそうになる。
「…冬耶?」
顔を覗き込んだ御薙が、心配そうに眉を寄せたのがわかった。
涙で視界が滲んでも、どんな表情をしているのか想像できてしまう。
「すき…です」
愛しさが、自然と零れ落ちた。
「大和さんが、すき…、」
「……!冬耶…っ」
「んんっ…!」
噛みつくようにして御薙が唇を重ねてくる。
入り込んできた舌に、冬耶も自然と舌を絡めた。
こんなに繋がっているのにまだ足りない気がして、広い背中もぎゅっと抱き締める。
夢中で縋ることに、不思議な既視感があった。
もしかして、酒を飲みすぎて失った記憶だろうか。
だが、一瞬浮かんだそれらも、激しい抽挿にかき消された。
「ゃ、あっ…!だめ、きもちい…っ、」
「っお前、ほんと可愛いな…、」
「ひぅ、や、まとさ……っ、も、おれ、」
「は、…っ、もっとお前とこうしててぇが、俺も、限界だ、」
御薙が自分の中で快感を得てくれていることが嬉しい。
「んっ……、やまとさん…、も、い、いっしょ…に…っ」
促すように冬耶も腰を揺らすと、ぐっと御薙の身体が強張る。
何度か強く打ち付けられて、冬耶も限界を迎えた。
「冬耶…っ」
「あっ!あ……っ、あぁ……っ!」
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