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第1話

 オレは水春蘭(シゥェイ・チュンラン)。戦争兵器の汚染影響で右手の指は生まれつき四本しかない。    スラムで暮らしていた時に秋嶺財閥の御曹司である秋嶺清羽(アキミネ・キヨハ)と出会った。愛し合うオレ達を良く思わなかった清羽の父の清麿の命令で、肘から下の左腕と膝から下の両脚を失った。  清羽と無理矢理引き離され、オレに残ったのは右手の四本の指だけ……。見世物小屋で極道の呉慶亮(ウー・キンリャン)に買われてからは、オレは最新鋭の義手、義足を身に付け慶亮の債務奴隷として男娼兼殺し屋として生きている。    新重慶大厦(シンチョンキンマンション)に住むオレは今日の仕事を終え部屋に帰りシャワーを浴びた。  腰下まで届く薄い朱色の長い髪をドライヤーでさっと乾かし半分残っていたペットボトルの水を飲み干すとキングサイズのベッドへ腰掛けた。    慣れた手つきで義手、義足を外しベッド脇にあるコンソールに収納するとそのまま全裸でベッドに潜り込む。麻のシーツに包まるようにして身をまかせると疲れていたこともありそのまま深い眠りへと誘われていった。  * * *  超高層マンションのだだっ広いリビングにいるオレ。窓に写る姿には左腕、両足もある。窓の外には夕日と夜の闇が入り交じる。あともう少しすれば一面の夜景が見れるはずだ。  豪華なマンションの一室になぜいるのかというと、オレの彼氏は秋山財閥の御曹司。この春から本格的に財閥の跡取りとなるべく副社長の仕事を始めたんだ、オレは清羽のサポートをするために同居しているんだけど……今まで自由気ままに暮らしていたから最近はこの生活が窮屈でもあった。  何かもっと自由に行動してみたい、出来れば清羽の役に立つことで……。 「そういえばあいつ、この前立ち寄った熊猫宝宝珈琲店が気に入ってたよな」  最近疲労で表情が固かったけど、あの時はリラックス出来て穏やかな顔をしいてた。頬に手を当てて考えを巡らす。  あいつの好きなもの………………。ん! そうだ、これだ! 清羽はお茶や珈琲が好きだった。  何でも好きなものを買ってもいいよと、清羽からはブラックカードを渡されていたのを思い出す。こんなのもらっても別に欲しいものなんてないし今まで生活に使うものしか買ったりしなかった。これで準備できるかもな。だけどな、オレには技術がないよな。  困った顔でふうっと息を付く。だが、ここで諦めるオレではない。技術がないならそれを身に付けたらいいだけだ。店の奥の壁にアルバイト募集の張り紙があったことを思い出しニヤリと笑った。  さっそく善は急げだ。このマンションのコンシェルジュに電話をかけた。ここのコンシェルジュは仕事が出来る。一見無理な願いでも大抵のことは叶えてくれる。まあ、その分べらぼうに高い手数料がかかる訳だが。  スラム育ちで右手は四本しか指のないオレ。学校にも通ったことはなかったが、なんとか熊猫宝宝珈琲店でバイトさせてもらえることになった。  その店にお願いしたことは、オレに美味しいカフェラテやホットコーヒーが淹れられるように技術を教えること、それとこの店オリジナルのコーヒーカップや従業員が着用している帽子やエプロン、そしてコーヒー豆など一式もらい受けることだ。  どんな手を使ったのかは知らないがコンシェルジュの(チン)さんが話しをつけてくれていたようでスムーズに話は進んだ。そこでオレはみっちり一週間修行をし、コーヒーの淹れ方をマスターしたのだ。  そしてついにこの日がやって来た。この修行中、清羽は出張に行っていて不在だった。その間にオレはあの珈琲店で真面目に練習をし、いつでも本場の味を提供出来るようにとカフェラテを作れる業務用の機械はもちろん食器や珈琲豆、エプロンも完備した。 「うん。これで完璧のはずだ。あとは清羽が帰ってくるのを待つだけだな」  朝から張り切って淹れる練習をしていたオレは、熊猫宝宝珈琲店特製パンダのロゴマーク入り青紫の帽子とエプロンを身に付けたままで、リビングのソファーで待ちくたびれて眠ってしまった。  ゆさゆさと、優しく身体を揺すられて目を開けると、オレの目の前には一週間ぶりの清羽がいて、栗色の大きな目でじっと見る。オレを揺さぶっていたものだから清羽の薄茶色の髪までサラサラと揺れてていた。 「あっ、春蘭起きたね。その格好は一体どうしたんだい?」  この格好に驚いたようだ。 「清羽と前に熊猫宝宝珈琲店に行っただろ、その時あんまりにも美味しそうにカフェラテを飲んでいたし、最近仕事で疲れてるだろ、だからオレが清羽を少しでも癒やしてあげたいなって思ったんだ。そうは言ってもオレには学もないし、出来ることなんて限られているからさ……だから。この前行った珈琲店気に入ってたみたいだからその味を自宅で再現して清羽を癒やしたい」  急に恥ずかしくなり俯くと、清羽がギュッとオレに抱きついて来た。あんまりにもギュウって抱きつくから胸が苦しいぐらいだ。 「春蘭、ありがとっ!」 「わ、わかったから。離れろよな」  はにかみながら清羽を押しのけキッチンへ向かう。テーブルの上にはあらかじめ用意しておいた物品がある。 「清羽、珈琲何飲む? 普通にホットコーヒーも出来るし、カフェラテとか、キャラメルラテとかも出来るぜ」 「えーーっ! カフェラテも作れるのか……もしかしてこの前行った時に僕がカフェラテを飲んでいたからそれも淹れれるようにしてくれたのか。ありがとう、嬉しいよ」  清羽はにっこり微笑みを浮かべた後、うーん、どうしようかと悩み始めた。そのまま一分ほどうなり続ける。 「よし、決めた。いつもはホットコーヒー派だけど、あのお店のカフェラテ美味しかったし、春蘭も練習してくれたし、カフェラテを飲んでみたい。お願い出来るかな?」 「ああ、まかせとけ」  オレはやる気に火が付き、張り切ってカフェラテを淹れる準備を始めた。  熊猫宝宝珈琲店のウリは有機無農薬の戦争で汚染が少ない地域のものを独占契約している。    この島嶼有里山産の稀少な良質の豆を使用しているから他の珈琲店にはない唯一無二の店の味なのだ。  業務用の店にあるのと同じ全自動カフェラテマシーンに自慢の珈琲豆とミルクをセットする。    するとすぐに挽き立ての豆の良い香りが漂ってきた。そのまま待ってボタンを押し、カフェラテを作り清羽の前にセッティングした。 「お待たせ致しました。どうぞ」 「あ、ありがとう、春蘭」  子パンダのロゴマークが入ったカップを手に取り、香りを嗅いだあと一口ごくりと飲み込んだ。 「おいしい、やっぱり美味しいな。春蘭が淹れてくれたから当然だけど、今まで飲んだカフェラテの中でナンバーワンの味だ」 「そうか……良かった」 「うん、フルーティで優しい味わいがする」  そう言って清羽は味わうようにじっくりカフェラテを飲み始めた。 「あっ、そうだ。店のスイーツも用意してるんだ。ちょっと持って来るから待っててくれ」  清羽が飲み終わる前に運ぼうと急いで準備する。熊猫宝宝珈琲店特製のパンダ模様のロールケーキを皿に乗せ、グラスにミネラルウォーターを注いで、トレイの上に置き運んだ。だが、小走りで向かったせいで滑って転んでしまった。 「うわぁぁ!」  ロールケーキは清羽が受け止めてくれたから無事だったけれど、水はそのままオレの上に落ちてきて、帽子や服、エプロンもびしょ濡れになってしまった。濡れたシャツが身体に張り付いている。 「大丈夫か、びしょ濡れじゃないか」 「大丈夫。ちょっと濡れちゃっただけだよ。それよりも店の自慢のロールケーキは無事だったんだから、それを食べてくれよな」  濡れてしまったエプロンを外すと思ったよりも生地がスケスケになっていて乳首が透けてしまっている。清羽はその胸元をじっと凝視している。それは獲物を狙うような目つきでもあった。 「僕はロールケーキよりも春蘭の方を食べたいよ。もう食べ頃なんじゃないか?」 「もう、オレよりケーキを食べろよな!」  せっかく準備したのにと思ってちょっとイラッとしてしまったけれど、清羽の色っぽい視線を見たらオレもなんだか清羽に抱かれたい気分になってきた。 「春蘭、このままいいだろ……君を抱きたい」 「…………分かった。オレも清羽に抱かれたい。挿れてほしい」  その言葉が合図になり、清羽はオレの服を脱がせていく。水に濡れた服や下着が身体に張り付いて脱がせにくかったようで少し苦戦しているようだったが、その間もチュッと口づけを繰り返し、全裸になる頃には深い口づけに変わっていた。  「ふうぅぅんっ…………っ…………」  舌と舌を絡め合いお互いを確かめ合った。そうすることで今互いにここいいる、そう実感できて嬉しかった。  清羽の指が左乳首へとやってきてその真っ赤に彩る蕾をきゅっとつねる。 「あっ!」 「そんな言い声出されたら早く挿れたくなる」  清羽はそのままオレを抱きかかえると寝室のベッドへまで運び、押し倒した。 「脚、開いて。春蘭の大事なとこ、よく見せてよ」  恥ずかしいけれど、早く清羽と一つになりたくて、思いっきり脚を押し広げた。孔も早く来てと、ヒクヒクと動いている。 「春蘭、僕を求めてヒクついているよ。ほら」 「うん。オレ清羽のオチンチン欲しい、オレのナカ清羽でいっぱいにして!」  指を一本中へ入れると、きゅうっと清羽の指を締め付けた。そしてゆっくりと指を出し入れすると、クチャッ、クチャッという水音が響いてきた。そしてオレが感じるポイントに指をこする。 「ああっっ……そこ、やだっ……」  嫌だと言っているのに清羽はそこを執拗に責め立てる。そして抽送を早めていく。 「あん。ダメ、イクぅーーーー!」 目の前が白くなり、それと同時にオレは自分のソレから精液をビュッと放出した。 「春蘭、かわいい。そんな姿見たらたまらないよ」  清羽は指をすかさず二本に増やし、中を刺激する、するとオレの中はまたすぐに二本目の指までもギュウッと締め付けすぐに指は三本に増やされた。  それなのに早く清羽のを挿れてもらいたくてたまらなくて孔の中はうねうねとひくついていた。 「春蘭の中に早く入りたい、挿れるよ、いいかい」 「うん、早くぅ!」  清羽はオレの孔に大きく膨らんだ男根を添わせるとゆっくりとナカに入ってきた。待ち構えていたオレの孔はそれに歓喜してギュウっと絡みつく。やっと一つになれた喜びと快感が押し寄せた。  清羽が男根を激しく抽送するたびに声を上げる。 「あっ……きもちいいよぉ!」 「僕もだ、春蘭。今度は一緒にイこう!」  孔の更に奥へと男根を抜き差しすると、パチン、パチンと互いの肉と肉が激しくぶつかる音がし、それと共に二人の悩ましげな吐息が続いた。  最後にドンと強く奥をひと付きするとナカに生温かいものを感じオレも白濁を放った。 「清羽、ずうっとこうしていたい、離れたくないよ」 「僕もだよ」  二人だけの空間でオレと清羽は強く違いに抱き締め合いそのぬくもりを感じていたはずなのに、遠くの方から誰かの気配がした。  * * *  AIの冷たい音声が聞こえる。『指紋および虹彩パターンを認識、登録ナンバー00002 呉 慶亮様、確認しました』ドアの開く音が聞こえる。  ああ、そうだ、あれは夢だったのだ。今のオレには左腕も膝から下の両足も無いじゃないか。それに清羽だっていない。全てはあの日に変わってしまったのだ。ここにいるのは呉 慶亮の債務奴隷のオレだ。  絶望感でいっぱいになり唇をぎゅっと噛みしめた途端、瞳から涙がつーーっと流れ落ちた。  でも春蘭はまだ知らない。清羽と再び再会出来るまであとわずかであることに。

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