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第21話

「お前は食べないのか? 」 「俺はもう食べた」  夏川はそう言って、近くのごみ箱を指さした。  そこから牛乳パックがちらりと見える。  全て食べ終えた朝霧は頭を下げた。 「ごちそうさまでした。サンドイッチと牛乳の代金、いくらだった? 」 「いいよ、そんなの」  そう言って夏川はベッドの上で朝霧を抱きしめた。  肌の感触を楽しむように、夏川が朝霧の腰に大きな掌を滑らせる。 「すごく良かった」   朝霧の耳元で夏川が囁く。  朝霧は眠りにつく前の自分の痴態を思い出して、顔を赤くした。  昨晩、乱れに乱れまくったあげく、初めて寝た男に「殺して欲しい」と懇願したなんて……朝霧はすぐにでも記憶喪失になりたい気分だった。  激しい交わりに身も心も疲れ切ったのか、誰かの傍では熟睡できない朝霧だが、今日はこんな時間まで一度も起きなかった。  誰かに抱きしめられていたのに、目を覚まさなかったのも、初めてかもしれない。  そんなことを思いながら、朝霧は夏川の顔を見上げた。  夏川は朝霧と目を合わせると、嬉しそうに笑い、朝霧の顔中にキスの雨を降らせた。 「ちょ、何? 」  朝霧はくすぐったさから夏川の腕から逃れようとしたが、簡単に押さえこまれてしまった。  夏川は朝霧を押し倒すと、愛し気にその髪を撫でた。 「帝、俺、あんたのことが好きになっちゃった。付き合おう」 「ええっ」  らしくもなく、大声で叫んだ朝霧を夏川が軽く睨み、髪を撫でていた手を止める。 「そんなに驚くこともないだろ。だって俺達、体の相性ばっちりだったし」 「それは、そうだけど」  ばっちりとまで断言した夏川の言葉に、朝霧はつい嬉しくなってしまう自分を止められなかった。 「帝、もしかして本命の恋人でもいるの? 」 「まさか。いたらこんなことはしない」  朝霧は恐る恐る夏川に尋ねた。 「リョウは? 」 「俺だって流石に恋人がいる状態で、帝に付き合ってくれなんて言わないよ」 「そっか」  ほっとして肩の力を抜く朝霧の額に夏川が口づけた。

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