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第41話

「うん。仕事が忙しくてなかなかね。両親とは通話アプリで月に一回は話しているから、元気なのは確認しているんだけど」 「そうなんだ」  当たり障りのない会話を続けながら、朝霧は夏川が本当に自分とは違う存在なのだと、あらためて思い知らされた気分だった。  朝霧がトイレのついでに会計を済ませようとすると、既に夏川が支払った後だった。 そのことで帰りのタクシーの車中で、朝霧と夏川は口論になった。  朝霧がいつもよりイラついていたせいで、口論は妙に長引いた。  それでもいつも通り夏川の部屋に入ると、2人は濃厚なキスをした。  寝室まで夏川はキスをしたまま、朝霧を抱えてゆったりと歩く。  ベッドに朝霧を押し倒すと、夏川はその股間をまさぐった。  そこはいつものように熱くならずに、少しも反応していなかった。  いつもキスだけで、はしたないくらい勃ち上がる朝霧のそんな反応に、夏川は目を見開いた。 「ごめん。なんか疲れてて」  朝霧は申し訳なさそうに表情を曇らせる。 「そういう日もあるよな」  夏川は笑うと、朝霧のスーツを脱がせ始めた。  今日は勃つか分からないな。  夏川に触れられるのは嫌ではなかったが、いつものような我慢できないほどの興奮を、朝霧は全く覚えていなかった。  朝霧は変に緊張しながら、ボタンを外す夏川の長い指をじっと見つめていた。  夏川は朝霧のスーツを綺麗にハンガーにかけ、クローゼットにしまうと、紺色のパジャマを持ってくる。  夏川が朝霧のために用意したシルクのパジャマだった。 「自分で着られる」  夏川は朝霧の主張を無視して、自らの手でパジャマを着せてゆく。  着せ終わると、夏川は自分のスーツを脱ぎ床に放ったままにすると、適当なスエットと襟の伸びたTシャツを素早く纏い、朝霧の横に寝転んだ。  朝霧を抱きしめ、夏川はその額にキスを落とした。

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