41 / 239
第41話
「うん。仕事が忙しくてなかなかね。両親とは通話アプリで月に一回は話しているから、元気なのは確認しているんだけど」
「そうなんだ」
当たり障りのない会話を続けながら、朝霧は夏川が本当に自分とは違う存在なのだと、あらためて思い知らされた気分だった。
朝霧がトイレのついでに会計を済ませようとすると、既に夏川が支払った後だった。
そのことで帰りのタクシーの車中で、朝霧と夏川は口論になった。
朝霧がいつもよりイラついていたせいで、口論は妙に長引いた。
それでもいつも通り夏川の部屋に入ると、2人は濃厚なキスをした。
寝室まで夏川はキスをしたまま、朝霧を抱えてゆったりと歩く。
ベッドに朝霧を押し倒すと、夏川はその股間をまさぐった。
そこはいつものように熱くならずに、少しも反応していなかった。
いつもキスだけで、はしたないくらい勃ち上がる朝霧のそんな反応に、夏川は目を見開いた。
「ごめん。なんか疲れてて」
朝霧は申し訳なさそうに表情を曇らせる。
「そういう日もあるよな」
夏川は笑うと、朝霧のスーツを脱がせ始めた。
今日は勃つか分からないな。
夏川に触れられるのは嫌ではなかったが、いつものような我慢できないほどの興奮を、朝霧は全く覚えていなかった。
朝霧は変に緊張しながら、ボタンを外す夏川の長い指をじっと見つめていた。
夏川は朝霧のスーツを綺麗にハンガーにかけ、クローゼットにしまうと、紺色のパジャマを持ってくる。
夏川が朝霧のために用意したシルクのパジャマだった。
「自分で着られる」
夏川は朝霧の主張を無視して、自らの手でパジャマを着せてゆく。
着せ終わると、夏川は自分のスーツを脱ぎ床に放ったままにすると、適当なスエットと襟の伸びたTシャツを素早く纏い、朝霧の横に寝転んだ。
朝霧を抱きしめ、夏川はその額にキスを落とした。
ともだちにシェアしよう!