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第124話

 朝霧が夏川と付き合っていることを渡会に告白してから、何となく渡会からのボディタッチが増えているように感じていた。  頭を撫でるなどは日常茶飯事で、この前などいきなり後ろから抱きつかれ、流石に朝霧も驚いて固まってしまった。  渡会はゲイじゃないし、もしかして俺がゲイであることを気にしてないっていうアピールでそうしているのかも。そうだとしたら逆に気を使わせて悪いな。  そんなことを考えながら、朝霧は帰り支度をした。  オフィスのビルをでると、外は既に暗くなっていた。  9月になってもまだ蒸し暑い。  そういえば最近渡会から飲みに誘われることも増えたな。こういうのが友達っていうのかな。  朝霧は今まで周囲に性癖を隠していたせいもあり、友人と呼べる相手がほとんどいなかった。  渡会の近すぎる距離感も、男同士の友達だとそんなものなのだろうと思ったし、気を許してくれているようで嬉しくもあった。  渡会のこと、来週は俺から飲みに誘ってみようかな。  そんなことを考えながら、朝霧は愛しい恋人が待つ家路を急いだ。 「おかえり、帝」  玄関で夏川にハグされ、朝霧は微笑んだ。 「ただいま」  リビングの食卓には既に料理が並んでいた。  朝霧はいつも以上に豪勢な夕飯に目を見開き、夏川に尋ねた。 「今日何か特別な日だっけ? 」  食卓にはマッシュポテトを付け合わせにしたステーキ。サラダ。コンソメスープ。バケットが並んでいた。 「大体だけど、付き合って半年くらい経ったから。簡単なお祝い」  夏川が赤ワインのコルクを開ける。 「そっか。用意してくれてありがとう」  朝霧は自分がそんなことにも気付けなかったと反省しながら手を洗い、もこもこした部屋着に着替えると、夏川と対面で座った。 「乾杯」  赤ワインは芳醇な味で、ステーキとの相性も抜群だった。 「美味しいよ」  微笑んでそう告げると、夏川の目元も和らぐ。

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