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番外編 ドキドキ! 禁断の学校えっち!?(1)★

「こらこら、学校でそんなことしないのっ」  ある日の放課後。廊下で橘と鉢合わせた諒太は、突然キスを迫られていた。  周囲に人がいないのをいいことに、何をしでかすというのか――慌てて制止すると、橘は気まずげな表情を浮かべる。 「いや、多分……ちょっと襟元にゴミがついてたと思ったんすけど」 「……君って本当に正直者というか、嘘つけないタイプなんだね」  あんまりな言い分に諒太は苦笑を返した。  だが、それも束の間のこと。またもや橘が距離を縮めてくる。 「こーらっ」  今度は手にしていた学級名簿で、軽く頭を叩いてやった。  もちろん、その程度で引き下がる相手ではない。橘は不服そうな顔でこちらを見てくる。 「正直、ヤりたいんすけど」  ストレートすぎる物言いに思わず面食らってしまった。正直にもほどがあるのではなかろうか。 「その……橘。そういったのは禁止、って言ったよな。学校では先生と生徒――ちゃんとわかってる?」 「わかってますけど……でも俺、もうすぐ卒業するし。少しでも、先生との思い出を作っておきたいっつーか」  橘は至極真面目な顔をしていた。  確かに、もう間もなく彼も高校を卒業する。思い出を作りたい、という気持ちは諒太にだって理解できるものがある。  が、言っていること自体はやはりめちゃくちゃだ。そもそも付き合っている時点で問題だというのに、校内で性的行為に及ぶなど言語道断である。 「駄目だよ。常識的に考えて、そんなの無理に決まって――」 「………………」  寂しげな眼差しに気づいた瞬間、諒太は言葉を詰まらせた。  ここでほだされてはいけない。心を鬼にして言わなくては――などと思いながらも、心がぐらぐらと揺れ動く。 (だってそんな目されたら……でも、さすがに)  そうやって少しの間葛藤したのち、結局諒太は折れてしまった。やれやれ、とため息交じりに口を開く。 「わかった。次の学年末考査、地理で満点とったら考えてやるよ」 「っ……」  途端、橘の目つきが変わった。  彼の成績はおおよそ中の上といったところ。それを承知で条件を出したわけだが、なんとも焚きつけてしまったようで、のちに諒太は後悔することとなったのだった。     ◇  二週間後、二人の姿は社会科準備室にあった。 「呼び出してくれた、っつーことは……ヤらせてくれるんすよね?」  部屋に入るなり、ねっとりと口づけながら橘が問いかけてきた。あれから猛勉強をしたらしく、彼は約束どおりテストで満点をとってきたのだ。 「うう……まさかこんな展開になるなんて」 「教員に手ェ出すとか――なんか、《いけないコト》してるみたいっすね」 「『みたい』じゃなくて、実際に《いけないコト》してるんでしょっ」  放課後の校舎内は静かだ。社会科準備室は職員室や教室からも離れているし、ここだけ世界から切り取られたような錯覚を覚える。  とはいえ、いつ誰が来るかもわからない状況に、諒太の胸は高鳴りっぱなしだった。それを察してか、橘がニヤリといやらしい笑みを浮かべる。 「先生の胸、すげードキドキ言ってる」 「あ、当たり前だろ……こんなの誰かにバレたらっ」 「それだけ?」  言うと、橘はスラックス越しに下半身を擦り合わせてくる。そこはすでに硬くなっていた。 「ちょっ、橘……」 「先生のも勃ってきてません? 実は期待してたんじゃないすか」 「バッ、んなこと――」  堪らず腰を引いたら、背後にあった長机にぶつかってしまった。ガタッと大きな音が響いて心臓が飛び跳ねる。 「っ、するなら早くしてよ……こっちは気が気でないんだから」  諒太は焦れたように言って、橘のネクタイを引っ張った。  噛みつくようにキスを交わすなか、橘が脇腹や腰骨を撫でまわしてくる。次第にその手が下腹部に辿り着くと、カチャカチャとベルトを外す音が耳に届いた。

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