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甘やかな夜
静かな夜に、俺と君の呼吸の音だけが聞こえる。
鈴虫の声も、風の音も、確かにあるはずなのに、俺の耳には君の息を継ぐ音と甘い声しか届かない。
それくらいに目の前の君の白い肌は俺の心を掴んで離してくれなかった。
交じり合う熱も、触れる指先も、どれもこれもがあまりに甘美で。
溺れるように、何度も君を、優しく甘い世界へ導いていく。
官能にとろけた身体にはじんわりと汗が浮かんで、俺が触れるところすべてが応えるように赤く染まる。
体に伝わるこの熱が自分のものなのか、君のものなのか、もうそんなことすらわからなくなるほどだった。
境界線をなくしていく感覚があまりに心地良く、俺は本能のままに君の体を貪る。
甘い声に交じって、何度も、何度も、名前を呼ばれ、それが快感にすり替わって、自身の限界を感じた。
求めるように君の腕と足が絡まってきたことで俺の体が引き寄せられ、引いていた腰が導かれるように中へ誘われた。
ぞくぞくとしたいいようのない甘い痺れが全身を巡り、その気持ちよさに身を委ねるようにそのまま君の中で果てた。
二人分の乱れた呼吸が優しく交じり合う。
そうすることが当たり前のように、唇を触れ合わせてから、上体を起こすとシーツの上に寝転ぶ君を見下ろした。
月明かりの中に浮かぶ君の表情はあまりにキレイで、もう何度目になるか分からない心の疼きを俺は確かに、この胸に感じていた。
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