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嫉妬

 次の日が来ても、俺の心はずっと真っ白だった。  あのあと、一時間以上経ってやっと動けるようになった俺は、ふらふらと玄関から外に出て静流の姿を捜した。  だが、あれからかなりの時間が経っているのだから、もちろん見つけられるはずもなく。  アパートに戻った頃にはもう朝になっていた。  朝食を食べる気も起きなくて、のそのそと緩慢な動きで制服に着替え、放心した状態のまま学校まで来たのがいまだ。  いや、来れるだけマシだろう。  本当なら行きたくなかった。  でも、学校に行けば静流に会える。  ちゃんと話ができるかも知れないと思ったのだ。  だけど、当の本人は登校してきていないようで、会うことすらできなかった。  当たり前に隣にいた存在がいないというのが、俺の心に影を落とす。  授業にすら身が入らず、始終、静流のことばかり考えていた。 「……こんなの、戻ったって言えねぇじゃねぇか……」  そんな中、俺の気持ちなど全く知らない静流が昼休み前に教室に入ってきたことで、ようやくずっとどんよりと沈んでいた心に光が差した。 「はよー」 「なに、静流。遅刻かよー! もう昼だっての!」  教室のドアに近い席にいたクラスメイトの一人が静流に陽気な態度で話しかける。 「あはは、用事あって遅れた」  明るく笑った静流が不意にこちらに視線を向けたことでばっちりと目が合った。  その瞬間に体の中がカッと熱くなる。  色素の薄い瞳が戸惑うようにふわりと揺れてふいっと逸らされる。 「そーだ。秋人(あきひと)、今日一緒にお昼食べない?」  にっこりと微笑んで話しかけたクラスメイトの首に腕を回す光景に胸が鋭い痛みを覚えた。  自分以外の人に触れている静流を見て、息が苦しくなる。  笑い合う二人を見て、心臓を殴りつけられたような衝撃を感じ、勢いよく椅子から立ち上がった。

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