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 背中についた爪の痕が、痛いのか熱いのかわからない。  僕に溺れている君があまりにも愛おしくて、少し深くまで抉ってしまった。  いっぱいいっぱいだって、わかっているよ。『もう挿入(はい)らない』だなんて、わざわざ声を絞り出さなくともわかってる。わかっていてシているのだから僕自身、意地が悪いと自覚している。 「ねぇ、(しん)? ごめんね」  愛らしくシーツに(くる)まり、背中しか見せない僕の愛しい人。 「······やだ」 「やだって····、嫌いになった? 僕ともうシたくない?」  意地悪な問いも、答えが分かっているから聞ける。 「シたくない··わけじゃないけど、あんなに奥まで入ってこられたら····ちょっと怖い」  だよね、少し怯えた顔をしていたものね。知っているよ。快楽に溺れ、どこまでも堕ちていってしまう自分が怖かったんだよね。  トロントロンにふやけ、緩んで涎が溢れるだらしない口元も、涙を浮かべてハートが見えそうな瞳も、全てが僕の与える快楽に堕ちてしまった証。  口では『やめろ』だの『抜け』だの反抗的なのに、首筋まで赤くしているから、つい噛み千切りたくなってしまったのだ。君だって、本当にやめたら泣いて縋ってくるくせに。 「ごめんね。今度はもう少しゆっくりするから。肩、大丈夫? 少し血が出てる····」 「怖いつってんのに強引に奥まで挿れられて、そのうえ流血するくらい噛まれて大丈夫だと思う? めちゃくちゃ痛いっつぅの」 「ごめんなさい」 「····で、なにニコニコしてんの? 全然反省してねぇじゃん」 「だって、芯の奥気持ちイイんだもん。それに、僕がつけた痕が綺麗で····」 「キモ。うわ····またデカくなってんじゃん」 「······ダメ?」 「うっ··、ダメじゃない····けど奥はダメ」  奥まで()れないなんて約束、どれだけ頑張ってもすぐに破ってしまいそうだ。心の中で先に『ごめんね』と呟いた。芯に聞こえはしないけど、きっと僕の目を見て気づいたんだね。  ギュッと固く目を瞑った芯に、キスでフェイントをかける。油断して、少し力が抜けたところを狙う為に。  挿入(はい)った瞬間、芯の見開かれた瞳に僕が映る。  あぁ、僕ってこんなにいやらしい表情(かお)をしていたんだね。芯といい勝負じゃないか。  涙ぐむ芯にまた欲情して、ぱくぱくしている口を塞ぐ。息ができない芯は、これでもかと締めつけてくる。

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