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銀花姫 12
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「痛って・・・!」
忘れていた。
雪に思いっきり背中引っ掻かれてたんだっけ・・・。
オレは汗とかで汚れた体を洗おうと、シャワーを頭からかぶった途端に、背中に走った痛みに顔をしかめた。
シャワーを止めて、浴室に備え付けられている太ももくらいまで映る大きめの鏡に、背中を向けて傷の確認をすると、肩甲骨の周辺や腰の上の辺りまで、いく筋もの爪痕が見えた。
小さくカサブタができていたりして、なかなかに悲惨なことになっている。
まあ・・・雪もわざとやった訳じゃないし・・・むしろ何がなんだかわからなくてオレに縋(すが)りついてきた結果だから・・・嬉しいっちゃあ・・・嬉しいか・・・。
オレは思わず昨夜の雪の色っぽい喘(あえ)ぎ声や、奇しく艶(あで)やかにのたうつ体とか、オレを誘うように睨みつけてくる大きな瞳や、真っ赤に濡れた口唇なんかを思い出して。
思わず元気になりそうになったので、慌てて再びシャワーを出して頭からかぶり、大きく深呼吸を繰り返す。
落ち着け。とりあえず落ち着け。
鎮(しず)めようとしているのに、頭の中に次々と昨夜のことが甦(よみがえ)ってきてしまって、全然まったく落ち着けない。
思い出しちゃいけないって、わかっているのに。
なのに。
どうしても初めて見る雪の表情や、聞いたこともない掠(かす)れた声が、こびりついて離れない。
昨夜のオレは理性が正常に働かない状態で、雪の白い細い体を抱きしめながら、雪の中を犯して体の隅々(すみずみ)まで全部蹂躙して、雪に確認する余裕がないままに雪の中で出してしまっていた。
やっと雪とそういうことができた嬉しさから、童貞みたいにテンパってて、想定外に雪が綺麗で可愛くて、オレに余裕がなかったとはいえ、やらかしたと思って。
「ごめん・・・!中で出しちまった・・・」
オレは抱きしめていた雪を離して、雪の中から出ようと腰を引こうとした。
雪はぐったりと全身から力を抜いて荒い呼吸を繰り返していたが、急に両足でオレの腰を挟み込んで押さえ込んできた。
「待って・・・やだ・・・」
「いや、ちょっと待て」
「抜かないで、もっと・・・して・・・」
「え?は?」
「猛の、もっと欲しい。もっと奥まで、全部欲しいの」
恥ずかしそうに瞳を伏せながら、真っ赤な潤んだ口唇を尖らせて、頬を仄(ほの)かに染めながら、雪は両足をオレの腰の後ろに回して、恐る恐るといった感じでオレの腕に指を這わせて。
そっと、爪を立てる。
そんなことを言われて。
こんなことされて。
あんな表情(かお)見せられて。
興奮しない男は、いない。
オレは一気に勃起したもので、思いっきり腰を振って、雪の中を犯し続けた。
雪は嬌声(きょうせい)をあげながら、嬉しそうに微笑んで、必死にオレにしがみついて、イく度にオレの背中を爪で傷つけた。
声をあげる度に、少しずつ掠(かす)れていく高い声が、耳元で『好き』と『もっと欲しい』と囁(うぞぶ)いて、オレの理性をどんどん削っていった。
中で何度も出したせいで、雪の中からオレの精液が溢れてこぼれ落ちていく。
ぐちゃぐちゃと濡れた音がして、雪のお尻や太腿を汚して、シーツに落ちていっても、もう止めることなんかできなかった。
四つん這いにして後ろから挿れても、座った状態で下から突き上げても、雪は嫌そうな素振りは見せずに、頭がおかしくなったように、喘ぎ声をあげてねだり続けた。
「たけるぅ・・・もっと、もっとして!好き・・・もっとぉ!」
全身で汗を滴(したた)らせて、甘い香りをふりまきながら頭(かむり)を振って、雪は目尻から涙を落として、口唇の端から涎(よだれ)を溢(こぼ)して、嬉しそうに笑って、オレにキスをする。
オレは思いもしなかった雪の淫乱ぶりに驚きつつも、あまりの色香と可愛さとあざとさと、雪の中の気持ち良さに骨抜きにされて、雪が望むままに突っ込んで擦って、出してを繰り返していた。
もう何度繰り返したかわからないくらいの時に、雪がイくと同時に身体中の力を抜いて、気絶してしまった。
そうなってから、やっと、オレは理性を取り戻した。
雪の中から出ると、そっと雪をベットに横たえて。濡れたタオルで雪の白くて細い体を拭いて、自分の体もざっと拭くと、そのまま雪を抱きしめて眠った。
甘い深い雪の香りを嗅ぎながら、どろどろした眠りに落ちていた。
永遠に目覚めたくないくらいの、甘い眠りだった。
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