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第六章 二つの愛が交わる瞬間 01
部屋の中はまだ少し寒い。体温が上がっているのが分かるのは、お互いに触れる肌が同じように熱いからだ。真宮は音が聞こえるようにあちこちにキスをしながら、少しぎこちなく藤崎の服を脱がせて行く。緊張しているのか慣れていない手つきは微かに震えているようだった。
「初めてだよね? 同性と……その、するの」
「はい。初めてだから……あの、間違ってたら教えて?」
本当に抵抗はないのか、と聞いたつもりだったのに、どうやら問題点はそこではないようだった。赤い顔の真宮が不安そうな目で見下ろしている。あまりにもかわいいことを言われ、照れくさくなりながら頷いた。
電気が付いたままの部屋ではすべてが見えてしまって恥ずかしい。隠れている部分が徐々になくなっていくと、畳に押し倒した藤崎の上で真宮は動きを止めた。
「な、なに……」
ぺったんこの胸を見て、やはり無理だと思ったのか。肩口まですべて出るほどに脱がされたシャツを、藤崎は思わず両手でかき合わせた。
「え……藤崎さん、どうして……?」
「だ、だって、今、君……がっかりしたんじゃないの?」
そう言いながら体を横に向け真宮の腕の間で小さくなる。好きだと言ってくれたことを疑っているわけではない。けれどヘテロな人間がいざというときにやっぱり無理だった、と思うことは珍しくはないのだ。
「ちが、違うってば。こっち向いて……ね?」
ひと際あまい声を出してくる真宮に、藤崎は背筋を震わせる。ゆっくり視線を上げると、やさしく微笑んだ彼の顔があった。
「色が白くてキレイだなって思って、ちょっとびっくりした。今からこの人を抱くんだって思うだけで、もうなんていうか、興奮しすぎて気絶しそうになってた」
「えっ……だ、だって、そんな風じゃなかった。だって、僕もう、三十近いおっさんだし……、キレイじゃ、ないよ」
剥き出しになった肩口を赤くして微かに震えながら言えば、真宮の喉が動いた気がした。それが煽っていうのに、と小さな声でひとこと言ってから、かき合わせたシャツを一気に開かれる。
「あっ! ……やっ」
「嫌じゃないでしょ? 俺のこと、好きなんでしょ?」
「すき、好きだけ、どっ……あっ」
噛みつくように喉元に唇を付け、甘噛みをするように歯を立ててくる。ねっとりとした暖かい感触にビクンと体を揺らした。首筋を舌が這い、焦らすようにあがってきて耳朶を口に含まれた。
「全部、確認……したい」
なんの、と言いかけて、壊れ物を扱うような真宮の手がやさしく、ゆっくりと胸の尖りへと触れた。藤崎の反応を伺うように、親指の腹で転がすように何度も弄られる。くすぐったいような感覚の中に、徐々に性的な快楽を見つけ出し、直接腰の奥にある神経に触れられているような気がした。
「ひっ……んんっ! あっ、んっ」
乳首を弄りながら真宮は震える肩先にキスをする。声を出すのが恥ずかしくて何とか飲み込もうとすれば、真宮は不安げな顔を向けて様子を伺ってくるから、安心させたくて微笑んでみせる。
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