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車内 —強姦—
「クスリ、よく効いてるみたいだね」
「ふっ……うっ……」
目隠しをしている布地が濡れる。にゅぽっと指を抜かれたら、排泄感に体がビクビクと跳ねた。
「僕のを入れてあげるね」
……えっ。
待て、まてまてまて!
快感に震えていた脳みそが、一気に覚醒した。
「いっ、いやだ!」
自分の尻穴に性器をあてがわれて、慌てて体をひねって逃げようとした。
「逃げないでって言ったよね」
「——ッ!」
乱暴に髪を引っ張られて、パンッパンッと両頬に平手が飛ぶ。
——ッッ痛い! 痛すぎる! いやだ、もう痛いのいやだ!
「痛いの好きなの?」
「ふぅッ……もッ、叩かないで」
必死で首を横に振った。もう打たれるのはいやだ、あんなに痛いの耐えられない!
気を抜いたら声を出して泣いてしまいそうだった。思考力も飛んで、まるで幼児にでもなったような気分だ。
『あまりひどくするなよ』
『うるさい! 黙ってろ!』
目の前の人物から酷い放送禁止用語が聞こえて、思わずビクッと体が跳ねた。俺をさらった二人が口論している声でさえ、ひどく怖くなって怯えてしまう。
恐怖で肩をすくませて縮こまっていると、温かく俺を抱きしめる感触がした。
「大丈夫、抵抗しなければ痛くしないよ」
頭をよしよしと撫でられて、自分を恐怖のどん底に落としている相手に、安心感を抱いてしまう。
自分の体や、思考がおかしくなっている事は分かっていた。それでも、自分で解決できるような状況ではなかった。
うつ伏せにされて、腰を持ち上げられて、後ろから性器をゆるゆると扱かれれば、俺の体はすぐに熱を取り戻した。
「アッ……! あぁ……っ」
「とっても可愛いよ」
普段排泄しているところに、男の性器があてがわれる。もう逃げたり抵抗したりする気力は、俺にはなかった。
尻穴をヌポヌポと上下に刺激されて、それさえもゾクゾクして体が震えた。
グッと腰を進められると、俺の中を拡げながら、圧迫感のある質量が押し入ってくる。
「ううぅっ――! ンう゛ぅっ!!」
苦しい……! 入ってる……男のち◯ぽが入ってる! 俺、男とセックスしてる……!
はぁっ、はぁっと浅く息を吐き出して、どこに逃せばいいか分からない苦しさに涙が溢れた。
前後しては奥まで入ってくる質量に、まだ入って来るのかと絶望のようなものを感じた。
さっきまで指で触られていた場所はとうに過ぎた。自分の体の奥まで突き刺される感覚に、足がガクガクと震える。
「あああっ、大っぎぃ!」
「嬉しい事言ってくれるね」
褒めてないい……! もう入らないから!
ギチギチに自分の中に納まっていて、異物感は指の比ではない。
なのに、自分の体は快感を拾うように腰をくねらせる。
「洸也、気持ちいいよね? 動くからね」
「うっ……」
グリグリと中をかき回されて、ぬちゃぬちゃと卑猥な音がする……! 引き抜かれて、刺されて……指で散々刺激されたところを、今度は性器で押し潰される。
「んあぁぁぁっ……!」
「こっちはどう?」
「――っ!!?」
ズンッと奥を抉られれば、脳天までしびれる様な快感が突き抜けた。
「あ゛あぁぁっ! や゛ぁぁ……!」
だらしない声が漏れる、涙が溢れる、口元からこぼれた唾液が、揺さぶられて前後する自分の頬でシートに広がっていく……。
「あぁっ! アッ、アッ……ふっ! ゔッ!」
パンッパンッと肉のぶつかり合う音と、粘膜の擦れるいやらしい音がする。
まるでAVだ……激しく抱かれてヨがる女優、そして腰を打ちつける男優を脳裏に浮かべて、自分が犯されている状況をリアルに想像してしまった。
乱れる女優より、腰を振る男優を思い出して興奮した。最悪だ……犯されている自分を想像して、気持ちよくなるなんて。
「あ゛ぁぁっ! やっ、ヤダッ……イきたくなッ、い゛っ!」
出てくる言葉と体はあべこべで、腰はカクカク振っているし、足は自分の体が支えていられないほど快感に震えている。
バックで流れる音楽も、山場を迎えるように激しくなっていった。
奥っ、奥えぐられるのがきもちいいッ……! いやなのに、レイプされてるのに……! あたまおかしくなる!
「イけない? じゃぁ触ってあげるね」
「——ッ!! やめッ!」
俺の腰を掴んでいた手がそのまま前に移動して、根元から先端までを上下に激しく刺激する。
「ああぁぁんっ……ヤッ、やめッ! うっ、あっ、イく! イく!」
手を縛っている布が手首に食い込んで痛いっ……なのに、尻穴突かれるのが気持ちよすぎて、男に犯されてイッちゃう!
「あ゛ぁぁぁっっ……! ――ッんうぅぅっ!」
皮のシートに額を押し付けて、突かれる度に飛び出す精液の快感にうち震えた。
「あー、締まって気持ちいい」
中にその凶悪なものを突っ込んだまま、恍惚とした声を男があげる。
自分の中にある存在に対して、吸い付くように締め付けている自分の体。こんな……こんなの知ったら、もう男に戻れない……。
涙と唾液で汚れた顔面にくわえて、鼻水まで出てきたのだから、きっと今の自分はボロ雑巾のように汚らしい。
ズッと鼻をすすると、こぼれてきた涙も一緒に入ってきた。鼻がつんとして痛い。
拘束されたままいろんなところに力を入れたせいで、肩が外れそうに痛い……全身あちこち痛いし、もちろん尻の穴もヒリヒリする。
なのに、なのに……俺の体は、またそこから快感を感じはじめた。
「アッ……も……いやだ、俺の体、おかしくなってるッ!」
思考力も低下したまま、ただただ怖くて拘束されている腕でもがいた。何が悲しいのかもわからないまま涙があふれて、嗚咽が漏れる。
その時、スルッと腕の拘束が解かれて、俺の腕は力なく座席のシートに落ちた。
「――っ!?」
突然のことにびっくりして、腕をついて起きあがろうとしたら、男の性器が抜かれて仰向けに転がされた。
「泣いているの?」
目を塞いでいた布が取り払われて、思わずギュと目を瞑った……開けるのが怖かった、自分を犯した男を直視するのが怖かった。
恐る恐る目を開くと、一番に飛び込んだのは鮮やかなブルーグレーの瞳。
あぁ、なんて綺麗な……。
「綺麗な目……僕、大好きなんだ、その真っ黒な瞳が」
そう言った口は小さくて、愛らしく微笑んだ。真っ直ぐに俺を見つめてくるその綺麗な瞳は、くりくりと大きく、長いまつ毛は少し茶色い。
栗色の綺麗な髪が、その甘い顔によくマッチしていた。
なっ……なっ、なんで!?
確かに可愛い方がいいって思ったけど! 思ったけども!! 想像以上の顔面の良さに、心臓がバクバクとバグを起こして、飛び出しそうな勢いだ。
おれ、この顔に犯され……!
今度は顔から火が出そうなほど熱くなった。
こんな甘い顔に、そんな凶悪なものが付いてるはずが……思わず股間を見下ろして、自分のと並ぶそのブツのデカさに喉がヒュッと鳴った。
つ、ついてた……!
そして服の隙間から見える腹筋はバキバキだ……このギャップは萌えない!!!
「洸也、キスしよう」
「えっ、ちょ……んうっ――!」
何の躊躇もなく唇が合わさって、何度も何度も角度を変えながら一方的に貪られるキスは、まるで洋画みたいだなんて感想を俺に抱かせた。
あぁ、ヤバイ……全然嫌じゃない。
キスって男女関係ないんだな、柔らかくて気持ちいい。
「んっ……んふぁ、まっ……!」
舌が入ってきて、俺の舌の端をなぞってから上顎を舌先でくすぐられる。
「うぅっ……!」
一方的に主導権を握られてするキスは初めてだった。ビリビリと快感と欲情が迫り上がってきて、まただ……また、体が勝手に欲しくなってる。
俺の意思とは関係なく、相手に腰を擦り付ける体に、もう手遅れだと絶望した。
「洸也、愛し合おうね」
「んぅっ……!」
ブルーグレーの瞳は、右手で俺の足を持ち上げて、狙いを定めて先だけを侵入させてきた。
空いた左手は、俺の肘の辺りからスルッと撫で下ろしてきて、まるで恋人とするように指を絡めて握ってくる。
違う、これは恋人同士なんかじゃない。
強姦だ、どんなに優しくされても、許す気なんか……!
「んんん――ッッ!」
口付けながら奥まで突き入れられて、手を握られて、甘く優しく抱かれたら……リミッターが外れたかのように感度が上がった。
「あぁッ……あ゛ぁっ! 入ってる……」
「入ってるね」
相手の体重がかかって、唇を貪られながら一番奥に何度も叩きつけられて、気持ちよすぎて涙があふれた。
間近でそのブルーグレーの瞳に見つめられて、両手を握られて、まるで愛し合っている恋人同士のようなレイプに、思考力も溶けていく。
「はぁっ、アッ! あぁんっ! もっ……」
「もっと?」
「んっ! もっと! やっ、きもひぃの……もっ、やっ!」
相手の手をギュッと握り返して、相手の動きやすいように腰を浮かす。自分に叩きつけられる動きに合わせて腰を振って、蓄積されていく快感に身を任せた。
「あぁっ、洸也! すごく素敵だよ! 舌出して」
言われるがままに舌を出すと、いやらしく舌を絡ませてくる。吸われたり、舌先でチロチロと舐められたりしたら、お腹の奥がキュッとした。
「アッ、アンッ! あぁっ、きもちッ……イッ、イく! イくッッ……!」
絶頂を宣言すれば、それを後押しするかのように最奥をぐりぐりと潰しにくる。
これダメ! 気持ちよすぎてあたまおかしくなる!
「あ゛ぁぁぁっ!!! イぐっ! うぅんんんッ!」
足の指先がピンッと伸びて、快感が頭の中でビリビリと跳ね回って……ダメだ、意識が……。
意識を手放す瞬間、その両腕に抱き締められた感触が温かくて、不思議と幸せな感覚のまま落ちていった。
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