1 / 43

借金!

 −−−島野瑞希side−−−  突然だけど、両親が交通事故で逝ってしまった。  おしどり夫婦で評判だった俺の両親は、休みの日に二人でドライブに出掛け、居眠り運転のトラックに崖から落とされた。  警察の話では即死だったらしい。二人でしっかり手を繋いでいたと聞いた。死ぬときまで仲良く二人一緒か。人間なんて呆気ないものだ。父親が脱サラして、二人の夢だった『町のパン屋さん』を始めたばかりだったのに。  親戚に手伝ってもらい、葬式も終わり、一人になり家の片付けをしながら父さん母さんの写真を見ては涙ぐんでいた所に、その集団は現れた。  ピンポンピンポンピンポン。  続け様にチャイムを鳴らす音がしたと思ったら、ドンドンドンドン!  激しく玄関のドアを叩きながら聞こえた柄の悪そうな怒鳴り声。 「島野さーーん。島野さーん、今月の支払い滞ってるんですよ〜。こちとら慈善事業じゃないんすわ。振り込んでもらえないんなら、直接頂くしかないんですけどね〜。島野さーん、いるんでしょ、開けて顔見せて下さいよ〜」  口調は丁寧なんだけど、有無を言わさない感じで怒鳴ってる…。怖いけど、出なきゃいけない。 「はい………。すみません、父と母が事故で死んでしまって……俺が返すので振込先教えて頂けませんか……」  玄関を開けたら見た事ある顔がそこに立っていた。変わった点と言えば昔はおろしてた前髪が上がってるくらい、かな。鋭い目つきというか、吊り目は変わらない。  俺の高校の同級生で一年間だけクラスメイトだった鈴木遼一。  同じクラスになった時は島野と鈴木だから、席が前と後ろだった。  鈴木遼一は、いつもクラスメイトから一線おいて付き合ってる感じで、あまり話しかけちゃいけないような雰囲気をもっていた。話しかければ笑顔で対応してくれたけど、話しかけてくれる事はなかったから、一年が終わる頃には少し疎遠になってた、そんな記憶がある。   一人でいる時の、なにもかも諦めたような目。俺の中ではその目が印象に残ってる。そんな鈴木がまさか金貸しのヤクザになってたなんて…。 「あぁ…、島野瑞希って名前見たことある気がしたなと思ってたんだけどさ。高校一緒だった瑞希くんだよね?」  鈴木は、昔と同じ友好的な感じで話しかけてきた。 「そ、そう。鈴木遼一くんだよね」 「そう。よく覚えてたね…。瑞希…か。ふぅぅぅん……いい名前じゃん。…源氏名としても使えそう」  目が悪いのか近づきすぎるくらいに近づいてきて、少し細めた目で俺を上から下まで観察しているようだった。  父さんと母さんがお金を借りて、自営の店を始めたのは知ってたから、払いきってない残った借金の取り立てが来るのだけは予想がついていた。  来たのが同級生…。同級生のスタンスで話していいものかそれとも、お金は必ず返しますので待ってください…と、よくあるテレビドラマのセリフのように言えばいいのか…。 「うん。いいんじゃん?瑞希、お前多分早くに借金返せると思うよ。俺んとこのゲイ向け高級ソープで働こう。顔も可愛らしいし体つきもなんだか妙にエッチだし、No.1になれるかもよ。品定めするから俺んち行こう」  「は、はい!」  

ともだちにシェアしよう!