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まるで、油が切れたロボットのように。桃枝は『ギギッ』と音が鳴りそうなほどぎこちない動きで、小首を傾げた。
「じゅ……なんだって?」
「授乳手コキです」
「……はっ?」
告げられた単語の意味を知らないのか、知っている上で理解が追い付いていないのか。桃枝の表情からは、うまく読み取れない。
だから山吹は、掴んでいた桃枝の手をパッと放した。その後、山吹は自らの手で洋服をペロリとまくったのだ。
「課長がボクのおっぱいをちゅっちゅしながら、ボクに抜いてもらうんです」
胸を露出させて、無知な桃枝にも分かるように。露骨すぎるほど分かり易い説明に、桃枝の理解は追い付いたことだろう。
その証拠に、桃枝がボボッと勢いよく赤面した。
「おッ、おまッ! ほッ、本当に兎だな……ッ!」
「性欲が強い恋人はお嫌いですか?」
「──やめろそんな訊き方するな語弊のある答えになっちまうだろッ!」
「──『好き』って思ってくれて嬉しいですっ」
すぐに山吹は、着ていた服をパサッと脱ぎ捨てる。
「さぁ、課長。ソファに寝転がってください」
「うッ。ぐ、ぐぐ……ッ」
桃枝が、動かない。彼の性格を考えたら、当然の反応だろう。
だがこうなると、優位なのは山吹だ。
「ボクに甘やかされるの、イヤですか……」
シュン、と。演技でもなんでもなく、本心から山吹は落ち込む。桃枝の反応を『拒否だ』と思っているからだ。
以前までの山吹なら、狼狽する桃枝を見るために【わざと】落ち込んで見せただろう。だか今の山吹は、いい意味でも悪い意味でも桃枝にゾッコンなのだ。
「……。……ッ。……あぁッ、くそッ!」
そして厄介なことに、山吹の心情の変化を理解している桃枝は以前よりも一層、山吹の【落ち込み】に敏感となってしまった。
悪態を吐いた後、桃枝はソファの上で寝そべる。
「これでいいかよ、エロガキ……ッ!」
「白菊さん……っ!」
「なんでそんな、花が咲いたような笑顔をこの状況で浮かべられるんだよ、お前は……」
いそいそと準備を始める山吹を見て、桃枝には呆れしか出てこない。
山吹は桃枝の頭に手を添えて、まるで赤子に向けるような慈愛の色を瞳に宿しながら、桃枝を見つめた。
「ふふっ。白菊さん、カワイイです」
「……クソが」
訳、お前の方が可愛いんだよ。全てを諦めた桃枝は、煮るなり焼くなり好きにしてくれ状態だ。
だが、これは山吹なりに奉仕の心を表しているのだろう。ならば、あまりつれない態度を取るのは得策ではないはずだ。
「どさくさ紛れに白菊さんとエッチなことができる展開にもつれ込めて、嬉しいです。いっぱい気持ち良くしますから、白菊さんも遠慮なくボクのおっぱいを虐めてくださいね? ふふっ、ふふふぅ~っ」
奉仕の心なのだと、思いたい。桃枝は諦めの中、心からそう願った。
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