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【記録1】とりあえず、場所考えようか。

 ダンジョンでの役務を終えて、取っていた宿に戻ってきた。日当たりの良い大部屋を運良く押さえられたから宿泊料との費用対効果も申し分ない。  ……のに。   「んっ、ん……ふ、ぁ……リレ、イ……っ」 「っは……ハーファ……」 「ん……ぁ、んぅ……」  目の前に広がる光景に、イチェスト・スフェイは深く、それはもう深く深くため息を吐いた。 「何で俺こんなの見せられてんだ……つかここ大部屋なんだが……?」  冒険から帰ってきて、沼地の湿気と泥を風呂で落として。夕食をどうしようかと振り返って今に至る。  ベッドの上で熱烈にいちゃついている二人はパーティの仲間だ。何だかんだあって神殿の観察処分になった冒険者ギルドの魔術師とその相棒。  二人は恋仲だとその時の騒動で一応知っているけれど。 「おいこらーっ! いちゃつくなら人目を憚れーっ!」 「は!? いっ……いちゃついてなんかないっ!」 「いやいやいやいや熱烈にキスしまくっといて何言ってんだ! エロい声と雰囲気出すなら他所でやれー!!」 「なっ、ばっ……魔力分けて貰ってるだけだ! 何かたくさん消費したからっ……!」    あーそうだろうな!    相棒がくれたってハーファが喜んでた腕輪、お前の魔力ちゃっかり吸い取ってるからな!  俺は魔力適正があるからチョロチョロとハーファから腕輪へ伝ってる魔力の流れが分かるけれど、適正のないハーファは気付かないらしい。  負荷がかかると腕輪に流れる量が増える仕様なのか、ダンジョンから出てくる頃には結構消費してた。ハーファの戦闘スタイルは【眼】の能力以外に魔力を使わないからあんま影響なさそうだけど。 「全く、トルリレイエも腕輪使って何やってんだよ。結局やるなら取らなきゃい……」  説教するつもりでハーファにのし掛かってる魔術師を睨んだのに、振り返ったトルリレイエの笑顔に気圧された。  ……正確には、笑顔の背後から伝ってくる魔力の圧に屈した。 「どうかしたのか?」  にっこりと微笑む魔術師の全身から魔力が波のように押し寄せてくる。出力制限を受けているとは思えない程の重たさだ。    そして。 「イチェスト?」   余計なことをほざくなと、その顔が言っている。 「……イエ、ナンデモナイデス……」  押し潰されそうな魔力に、俺は早々に心が折れてしまったのだった。  でもさぁ俺……上司なんだよ、一応さぁ……。

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