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第一部 奪われた尊厳
酷く身体が重く、節々がどこもかしこも悲鳴をあげている。
目線が地面と同じ高さで、目の前には何者かの軍靴が見える。オルガ・ローレンスタは、その靴を見て、自らが一瞬気絶していた事に気がついた。
「は、はは、お、オレの、勝ちだ、ローレンスタ将軍」
地面に倒れ伏したまま、軍靴の持ち主を見上げる。
燃えるような赤毛の、熊かと見間違うような風貌の豪傑が、今しがたオルガが抉った右目から血を流し笑っていた。
激しい戦いに疲弊しているのか、肩で息をしながらも、晴々とした豪快な笑顔だ。
アイルザン帝国の『暴れ熊』ルイス・ディスター准将。
オルガが仕えるイスタ王国は、長年帝国の侵略に抵抗し続けている。
オルガは一つの砦を任されていた。しかし、遂に堕とされた。
先陣を切り突入してきた、このディスター准将率いる隊に蹂躙されたのだ。
「は、はは、は、ディ、ディスター准将、貴殿には、勝てなかった」
「ひひ、あんたとは、何度鉾を交えたか…だが最後はやっぱり一騎打ちに、限る」
「いや、畏れ入った。貴殿自ら先陣を切るとは、士気も上がろうというもの…」
「あんたと直接闘いたかったからに決まってるじゃねぇか、ローレンスタ将軍」
「そうか。その言葉、地獄で誉れにしよう」
これ程の豪傑に、そう言われるなら本望だ。
心からそう言って、オルガはいっそ清々しい気分で眼を閉じた。しかし、いっこうに首を刎ねられる気配はない。
眼を開けてみると、ディスター准将は困った顔で剣を鞘に納めてしまっていた。
驚いて身を起こそうとするが、倒れた拍子に頭を打っていたのか、酷い眩暈がしてまた地面に手足を投げ出す。
「すまんな、ローレンスタ将軍。あんたは殺さず連れ帰れと、命令を受けてる」
「……虜囚になるくらいなら、貴殿の手で死なせてくれ。今、ここで武人として」
「なあ、生きていりゃ、再起も出来ようさ……な、また再戦しようぜ」
慰めのつもりかそんな事を言って、ディスター准将は部下に命じオルガを担架で運ばせる。
動かない身体では抵抗も出来ず、舌を噛み切る余力もない。
死に損ねてしまった。
冷たいものが臓腑から這い上がるのを感じながら、オルガは目を閉じた。
今は少し眠りたかった。
*****
目を覚ましたのは、見知らぬベッドの上だった。
少し眠っただけのつもりが、気絶して居たのだろう。傷の手当てが済み身体は綺麗に拭き清められている。
起き上がろうとして、ガチャリと重い手ごたえと共にベッドに引き戻された。
オルガは丸裸で仰向けに手足を広げて、ベッドの四隅に鎖で縛り付けられて居た。
「な、……なんだっ!!これは!?」
ハッと天井を見ると、天井は鏡張りになっている。そこは、見慣れたオルガ自身が映っていた。
12歳で軍に入りはや25年。それだけの月日戦いに明け暮れ、戦場で鍛えた無駄な肉の無い強靭な肉体には、無数の古傷が刻まれている。
だが、黒い癖毛の下にある、翠の目には困惑と恐怖が滲んでいた。
これから、拷問を受けるのか。
鞭打ちか、股裂か、焼き鏝 か。
脂汗が額に浮き、頬を伝い落ちた。
「目覚めたようだな。待ちかねた」
まるで歌劇俳優のような美声と共に、誰かが部屋に入ってきた。
目玉を動かしてそちらを見ると、美しい男がベッドに乗り上げオルガを見下ろしている。
年頃は二十代半ばか、後半くらいだろう。顔立ちはまるで彫刻のように彫りが深く、端正に整ったきりりとした美形だ。
長い白銀の髪をひとまとめにして、肩に垂らしている。
仕立ての良い燕尾服を着ていて、夜会から抜け出してきたように見えた。
「だ、れだ……貴様は」
「俺を知らぬのか。ふん、イスタの田舎軍人なら仕方ないか。……俺はアイルザンの現皇帝、デイトリヒ・アイルザンだ。……半年前即位したばかりだがな」
虚を突かれ、オルガは言葉を失う。アイルザン帝国の前皇帝が身罷 ったという話は聞いていない。
他国に漏れないよう箝口令を敷いていたのか、長く砦に引きこもっていたからオルガ自身が時勢に疎くなったのか。
いずれにせよ、こんな若い皇帝が即位していたとは知らなかった。
「皇帝自ら、私を拷問しようというのか」
「拷問?……甘いな、俺は拷問より酷い事をする気でいる」
「何を吐かせたいのか知らんが、私は国を売るような真似は」
「違うな。俺はただ、貴様を苦しめたいだけだ」
訝しむオルガの上にのしかかるようにして、オルガの眼前で綺麗な顏を憎悪に歪ませる。
「イスタの守護者、盾の英雄などと呼ばれているらしいな。オルガ・ローレンスタ」
「……それが、どうした」
「そんな貴様に、俺の大事な『友人』は殺された。2年前のシュリザ平原での戦いだ」
「仇討ちだと、ふざけた事を!あれは貴様らから仕掛けた戦ではないか!」
「戦の是非を問う気はない。俺はただ、憎い貴様に、この手で、死ぬより辛い責め苦を与えたいだけだ。この部屋はな、その為に用意したのだ」
そう言って、デイトリヒはベッドの横にあるサイドテーブルから、小瓶を取り出した。
中身をいきなりオルガの恥部にぶちまける。
ぬるぬるした粘液だ。
「冷たっ……な、なんだ!?」
まさか一物を切り落とす気ではと青ざめる。しかし、そうではなかった。
デイトリヒの手はするりとオルガの尻に伸びる。つぷっと、後孔に指が触れた。
「単なる潤滑剤だ。濡れないと入らんだろう」
「なっ!!」
ぐぷんと指が押し込まれ、違和感と嫌悪に呻く。
まさかとデイトリヒを睨みつけると、にやりと口角を吊り上げた。
「今日から、お前をこの俺の性処理に使ってやる。喜べよ、高貴な王族の精液を排泄して貰えるのだからな」
「な、んだとっ!貴さ、あ!」
潤滑剤の滑りを借りてぐぷぐぷと指が出入りし、不快感に声が出た。固く締め付けて拒もうとしても、力尽くで捻じ込まれ余計に痛む。
情けなさと屈辱で、身体が震えた。
「こんな、こんな!殺せ、早く、殺せ!」
「殺すか。せっかく苦労してディスターを言い包めて、生け捕らせたのだ」
「ディスター、奴もこれを、知っていたのか!知って、私を生かしたのか!?」
「ディスターは知らん。奴は貴様を好敵手だと尊敬している。はは、なに、その内会える。貴様が具合の良い性奴隷になれば奴にも使わせてやるからな」
指が二本突き込まれ、ぐぐっと狭い穴を広げられた。
ギリっと肉の輪が無理矢理引き伸ばされ、痛みに呻く。そこに小瓶の口を押し付けられて、中の冷たい潤滑剤を流し込まれた。
「っ……ぐ、うっ」
「今日は、痛くしてやる。処女喪失は、血が流れなくてはな」
「…気色の、悪い下衆がっ……貴様などにっ」
舌を噛み切ろうと、舌を出した瞬間その舌を鷲掴みにされた。
柔い肉を掴まれる痛みと不安感に、目を剥いた。
「おっと。死ぬなよ。死ねば、捕虜にしている貴様の部下は全員処刑する」
「んむ!?ふ、ぐぐっ!」
「ただの処刑ではないぞ。熱した湯に放り込んで、生きながら煮て殺す」
「……ぐ、……う、う」
抵抗を止め、オルガは力を抜いた。
こんな恥辱を味わいながら生きるなど、耐えらない。
だが、部下の命を引き換えになど、出来るはずがなかった。
「……よし、大人しくしていろ」
デイトリヒは自らの前を寛げて、性器を取り出した。
既に勃起しているそれを数回扱いて、オルガの尻に押し当てる。
熱いものが、じわじわと中に入り込もうとしてくる恐怖に、オルガは身体を震わせ鎖をジャラジャラと鳴らした。
「う、うっ……」
「天井を見ていろローレンスタ。貴様が女になる記念すべき瞬間だぞ」
足を大きく開かされ、天井に向かい恥部を晒す体勢を取らされる。そのまま腰を推し進められて、デイトリヒの剛直が尻肉を割って食い込んだ。そしてついに、ズブッと無理矢理亀頭がオルガの中に捻じ込まれる。
ビリッと裂けた激痛と、中を犯される圧迫感にオルガは悲鳴をあげた。
「ぐあ!!あ、ぐぅぅっ!」
「う、……きつ、いな。だが、中々熱くて悪くない」
一番太い部分が入れば、後は大した抵抗もなく根元まで押入られた。内臓を押し上げられる苦しさに、眦から涙が伝う。
呆然と天井の鏡を見上げれば、男根を尻に咥え込まされ、虚ろな顔で涙を流すオルガ自身が映っていた。内腿には僅かに血が付いている。
「どうだ。処女を失った気分は」
「…最、悪だ……」
「だろうな。俺は最高の気分だ……では貴様の尻穴、使わせて貰うぞ」
裂けた傷を気遣う様子もなく、デイトリヒはオルガの太腿を掴み持ち上げて激しく腰を揺すりはじめた。
流し込まれた潤滑剤がグチュグチュと湿った音を立てる。
血の混ざったジェル状のそれが摩擦で溢れて、結合部から垂れ落ちベッドに染みを作った。
「う!ぐ、…っ、ふ、…ぐっ!う」
「は、はは、いいぞ。貴様の尻の具合は、悪くない」
「っぐ!う、うっ!」
「色気の無い声を出すな。喘いで見せろ」
「ふ、ざけっ!るな、痛、っい!」
ぐちぐちと傷口を擦り上げられながら内臓を突き上げられ、身体が裂けそうな痛みと吐き気に呻き声しかでない。甘い喘ぎなど、演技でも出ない。
「ふ、これも処女らしくて、良いか。これから、慣らして、ここを弄られたら喘いで喜ぶように、してやる」
「ぐ、あ!ぐ、ぅ、うっ!」
身勝手な動きに翻弄され、屈辱と苦痛に耐えながら、デイトリヒに揺さぶられ続けた。遅漏気味なのか、中々終わらない。
早く終われ、早く終われ、と心の中で繰り返す。
鏡に映る自分の情け無い姿と、それに覆いかぶさり腰を振るデイトリヒの動きを、どこか他人事のような気分で眺めていた。
「は、……ぐ……う………ぐ……」
「どうした、弱々しく、なってきたなっ」
「…ふ、…う、は、やく……お、われっ……」
「はは、なんだ。出して欲しいか……なら、出してやる。貴様の中にな」
「う、い、嫌だ、やめ、ろお!そ、れは!ぐ、あ!」
「嫌なら、逃げてみろ、ほら、どうした」
「あ゛!ぐあ、嫌、だ!嫌だ、ちく、しょう!」
「はは、腰を振って、強請ってるのか?ああ、出そうだ、そら、早く逃ろ」
身を捩り逃げ出そうとしても、鎖に自由を奪われている上、長い間股を開かされ揺さぶられていたせいで、腰が抜けたようになっていた。
わずかに腰を揺らし身動ぎしただけで、腰を掴み激しく打ち付けてくるデイトリヒからは逃げられない。
体内でデイトリヒの性器が、ビクビクと震えた。
「……出るぞ。ローレンスタ。これで貴様は、もう英雄ではない、ただの性処理係だ」
「ぐ、嫌だ!殺す、はあ!貴様、は!ぐ、う、うっ!」
ぶるっとデイトリヒの腰が震え、体内で熱いものが弾けた。びゅくびゅくとと精液が噴き出して、腹の奥に溜まる。
中に出された。
汚い他人の精液が、腹の中に吐き出された。
性欲処理の道具にされた。
その絶望に言葉も出ない。デイトリヒの端正な顔が射精の快楽に歪み、精液を全て出し切ると、ほうっと色っぽくため息を吐くのを、オルガはただ虚ろに見上げていた。
「はあ、スッキリした。……初めてでこの使い心地なら、慣れれば中々良さげだ。明日も使いにくる。それまでは、休んでおけ」
ぬぽっとオルガから萎えた性器を抜くと、さっさと身支度を整えデイトリヒは部屋から出て行った。
情事の匂いだけを残し、しんと部屋は静まり返る。
中に出されたものを掻き出す事も出来ないオルガは、天井の鏡に映る自身の下肢に白濁が絡みついているのを見て、悔しさと情けなさに唇を噛んで泣いた。
これは、始まりに過ぎないのだと、理解していたからだ。
*****
デイトリヒが消えた後、身分の低い下男らしい男が部屋に来て、オルガの身体を拭き、盥と湯の入った水差しを使い腸内を洗った。
もはや、その屈辱的な行為にもなんとも思わない。むしろ、精液を流してくれて感謝したいほどだ。
最後に裂けた傷に軟膏を塗ってくれた。
手洗いは二時間に一度。食事は一日二回。デイトリヒが『使いに』来る前にまた腸内を洗い身体を拭いて綺麗にする。
自分がそれらの世話をすると、下男はオルガに説明をした。
オルガは黙って頷く。
「筋肉が萎えるか、貴方に抵抗する気力がなくなるまでは拘束は解かれません。その後は部屋には手洗いも風呂もありますから、ご自分でできるようになりますよ」
下男はそう言っていた。
筋肉が萎えるまでとは、どれくらいかかるのだろうか。
鎖は少し長く縛り直され、ベッドの上で体勢を変えることはできるようになった。
尻と腰に負担がかからない体勢を探して、寝返りを繰り返す。
腰は重だるいし、尻の穴はじくじくと痛む。眠ってしまいたいのに、怒りと恐怖と痛みで気が高ぶり眠れない。
うとうとしては、犯される悪夢に目を覚ます。
それを何度か繰り返し、下男が腸内洗浄と身体を拭く為にやってきた。丁寧な隅々まで拭かれ、最後に香水を首筋と内腿につけられた。
デイトリヒが来る。
また、性欲処理のためにオルガを犯しに来る。
あまりの嫌悪に吐きそうになった。
実際にデイトリヒが部屋に姿を現わすと、吐き気と共に、血が沸騰しそうなほどの怒りがオルガを襲う。
「……デイ、トリヒッ」
「なんだ。待ちかねていたか?……足を開け」
「ふざけるなッ……」
「もう処女ではないのに、今更、何を恥じらう」
「殺す。殺してやる」
「部下を死なせたいようだな」
「…ッ…」
デイトリヒを睨みつけたまま、オルガは脚を開いた。
目で人を殺せるなら、デイトリヒはもう百回は死んでいる。
しかし、現実はそんな事は起こらず、デイトリヒはまたあの潤滑剤を手に、オルガにのしかかってきた。
「……今日はな、良くしてやろう」
「何をッ」
「ちゃんと尻で感じるように、躾けてやる。俺のを咥えてイケるようになるまでな」
「うっ!ぐっ」
ヌプッと、また指が捻じ込まれる。昨日とは違い、傷に触れぬよう気遣いながら、中を探るように掻き回された。体内を撫で回される感触に鳥肌が立つ。
ぬる~とゆっくり抜かれ、またゆっくり差し入れながら、腹側の睾丸の裏辺りをグリグリと探られた。
「…う、う」
やがて、指にある一点を押された時、何かコリッとした感触と共に腰が勝手に跳ねた。
ビリッとした感覚に、オルガは酷く戸惑う。
「なっ、んだっ?」
「前立腺だ……ここだな」
「は、やめ、う!うっ!」
コリッコリッと繰り返し引っ掛かれると、その度にビクビクと身体が揺れてしまう。
これは、快感だ。
忌まわしい事に、確かに快感を得て身体が反応している。
「そこ、触る、なっ!さ、わるな!」
「はは、気持ちいいのか。自分を強姦した男の指で、感じているのかローレンスタ」
「ち、がう!あっ、ちが、う、うっ」
「抗うな。貴様はな、尻穴を弄られるのが好きな変態だ。それが貴様の本性なんだ」
「ちが、ううっ!く、うっ」
指を二本に増やされ、ぐぽっぐぽっと激しく穿 られる。ビリビリと痺れるような快感に、下腹部が熱くなって、オルガの性器は首を擡 げはじめた。
「勃ってきたな」
「まさか、そんな、嘘、だろう」
「ははは、嘘に見えるか?」
ビンと指で弾かれて、軽い痛みと刺激に完全に勃起してしまう。
自らの身体が信じられない。この男の行為に快感を得てしまうなんて、オルガは自分自身に裏切られた気分だった。
「さて、ここから本気で弄るぞ」
「なに?本気?本気、とは、あっ!う、うっ!やめっ!」
グリグリと前立腺を弄りながら、デイトリヒはもう片方の手にも潤滑剤をたっぷり絡めて、オルガの竿を握りしめ上下に擦りはじめた。
前後を同時に弄られ、思わず悲鳴をあげる。
「うあ、ああっ!やめっ!はああっ!」
「止めろ?見ろ、お前のちん×は喜んで雫を零しているぞ。やめて欲しいようには見えんな」
「い、やだ、あっ、いや、だあぁ、あ」
「それとも、貴様の嫌、やめては、もっとしてと言う意味か?」
「う、うあ、ああ、駄目、だ、そんな、後生だ、ああ、やめて、うっ、くれっ」
「イキそうなんだな。尻の中が、ビクビクしているぞ。まるで俺の精液を強請っているようだ」
「ひ、ち、が、ああ、くうぅっ!」
ぬめぬめと滑る手で敏感な裏筋と亀頭を撫で回され、尻の中の指は三本に増えて中を掻き回し前立腺を抉る。
二箇所からそれぞれ違う強い快感が生まれ、オルガは限界だった。気力で絶頂を堪え、激しく息をして射精感を誤魔化そうとする。
「はは!堪えろ堪えろ、イケば貴様は淫乱な性奴隷だと認めるようなものだものな!」
「くぅっふ、ふぅっふ、あ、う」
「そんなに歯を食いしばって耐えて。だがな、我慢すればするほど、イッた時の快楽は深くなるぞ」
「んっ、ふぅ、ん、うぅっ、ん、ン、あ、あ、駄目、だめ、や、嫌だ、あ」
もう頭がどうにかなりそうだった。限界を超え、込み上げる射精感に腰が浮く。駄目、駄目、と叫びながら、シーツを掴んで耐えようとするが、無駄だった。
今まさに、イク、という瞬間。尻から指が引き抜かれた。
そして、より熱く巨大なものが、前立腺を擦り上げながら押し入ってくる。
「んな?!嫌、ああ、あーーっ!」
はじまっていた絶頂は止まらず、挿入と同時にオルガは射精してしまった。
ガクガクと腰が跳ね、無意識のうちに体内のデイトリヒの性器を締め付けてしまう。そのせいで、また前立腺が刺激され、情けない悲鳴と射精が止まらない。
目の前に火花が散るほど、激しい絶頂だった。
「挿れた途端にイッたか。そんなに男が好きなのか?この淫乱め」
くたりとベッドに四肢を投げ出すオルガを、デイトリヒは嘲笑した。
違う、貴様が、イキそうなところに、突き込んだのではないか。
そう言いたかったが、声が出ない。
開いた口からは、あー、と言う呻きしか出なくなっている。
「壊れるのは早いぞローレンスタ。俺が楽しむのはこれからだ」
一旦身体を離したデイトリヒは、じゃらっと足の鎖を外すと、オルガの身体をひっくり返した。
うつ伏せで腰だけ高くあげた格好を取らされる。
背後から抱かれる体勢に、強い拒否感を感じたが、身体に力が入らずされるがままになってしまった。
「随分従順になったな。そんなに欲しいか?なら、たっぷり使ってやる」
「や、…あ、…う!はぐっ!あ、あ!」
腰を掴んで引き寄せられ、ズボッと一気に根元まで押し込まれた。
痛みと圧迫感が凄いが、同時に弄られ過ぎて敏感になっている前立腺から、激しい快感が生まれる。
教え込まれた。
尻の中に、掻き回されて感じる快感を、教え込まれてしまった。
その事実にオルガは悔し涙を流した。
「泣くほど、いいかっ、こちらも、昨日より、具合がいいぞっ」
激しく腰を振りながら、デイトリヒが揶揄してくる。シーツに顔を埋め、顔を隠して声を殺した。
「…ぅ、……ぅ、……ッ」
「たった、一回で、こんなに解れて、絡みつく穴になった、貴様の天職は、軍人ではなく、男娼だな、ローレンスタ」
「…ッ……ぐ、う、うっ、うっ」
「泣け、泣け!苦しめ、はは、胸がすく!」
こんなにも心の中は怒りと憎しみと、嘆きに満ちているのに。
身体は確かに性感を得て喜んでいる。
それが悔し過ぎて、涙が止まらない。
パンパンと肉がぶつかる音と、オルガの鳴き声が部屋に響く。
背中に覆い被さり深く強く抉りながら、デイトリヒが性器に指を絡めてきた。また、前立腺と性器同時の快楽に、オルガの腰がガクガクと揺れる。
「ん、はあ、そんなに、尻を振って。早く、欲しいか」
「ぐ、ぅ、あ、嫌、あー、あ」
「貴様も、またイきそうだな、中が、凄いぞ、痙攣して、吸い付いてくる、はは、この、変態が」
「ひ、あ、う、うっ、うっ」
「…く、出そうだ、貴様もイけ、中出しされながらイけ、淫乱女のようにっ」
「う、ひうっ、あ、あっ、ううぅぅーーッ!!」
ドクン!と、デイトリヒの性器が大きく跳ねて、オルガの中で熱い精液を射精したと同時に、オルガもデイトリヒの手の中に精を吐き出した。
射精する性器を、きゅう、きゅう、と締め付けてしまう。その度に、絞り出されるようにデイトリヒから精液が噴き出してきた。
まるで、本当に欲しがって吸い付いているようだと、射精の快楽に蕩けた思考でそんな事を考える。
「……ッ、ふ、凄いな、絞り取られるっ……はあ……復讐の為だったが、これは拾い物だ。こんないやらしい尻なら、これから楽しめそうだ」
ぬるんと、性器が身体から出て行く。つうっと太腿を熱い液体が伝った。出された精液が滴っているのだ。
その刺激にすら、ひく、ひく、と身体が震える。
たった二回目で、こんなに感じさせられて、この先どうなるのだろう。
部屋を出て行くデイトリヒの気配を感じながら、オルガは自らの身体に絶望し打ち震えた。
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