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第8話
「いらっしゃい、律の母です」
「は、初めまして!如月凪咲です!」
まさかのお泊まり会をする事になり、連れてこられたのは結構広めの家だった。
中に入ると綺麗な律の母親が出迎えてくれて、凪咲は少し緊張をしながら頭を下げた。
そのまま母親に連れられて客室に案内をされた。
「凪咲さん、お部屋はここを使って。服はお客様用の寝巻きを貸すわね」
「あ、ありがとうございます!いきなりすみません…こんな事を…」
「いいのよ!こんな可愛い子が家に1人なんて怖いでしょ?それに律が友達連れてくる事そんなにないから嬉しくて…」
嬉しそうに笑う律の母親に釣られて凪咲もニッコリ笑うと「良かったらお風呂もどうぞ」と言われて、凪咲はお風呂に入る事に。
「お風呂ありがとうございましたー」
お風呂から上がり、お借りした寝巻き姿でリビングへ行くと黒猫と戯れている律が居て凪咲はすぐに近寄った。
「可愛いー、名前は?」
「とび丸だよ」
凪咲がそっと手を伸ばすと自分の方から頭を擦り付けてきて、凪咲は嬉しそうに頭を撫でた。
「猫好き?」
「うん、動物は何でも好きだよ」
「それは良かった」
猫と戯れていると律の母親から声をかけられて凪咲と律はキッチンに向かった。
夕飯のお手伝いをして欲しいと言われ、凪咲と律は横に並んで料理をする事に。
「律って料理するの?」
「こうやって手伝う事が多めかな、凪咲は?」
「たまーにするよ、今度何か作ってあげようか?」
提案をすると律の顔がパァっと明るくなり、凪咲は嬉しそうに笑ってしまった。
そんな様子を眺めながらニコニコ嬉しそうに笑う律の母親と目が合い凪咲は驚いてしまった。
「あら、ごめんなさい。邪魔しちゃったかしら?」
「い、いえ!邪魔なんてそんな…!」
「律と凪咲さんが結婚したらこんな感じかな、って思ってね」
その言葉に凪咲は顔面を真っ青にして、すぐに自分の性別を話そうとしたが…その前に律の母親が口を開いた。
「同性婚出来ないのが残念ね」
「……え?あ、あの…僕の性別…」
「ちゃんと律から聞いているわ、可愛い男の子だって…あと律の恋愛対象も」
まさかの発言に驚いていると、玄関から「ただいまー」と声が聞こえ、リビングに来たのは律と同じ様な優しい雰囲気を出している男性だった。
凪咲とバッチリ目が合うとすぐに「彼女かい!?」と言われて凪咲と律は同時に「違います」と答えてから説明をした。
「あー、すまないね。早とちりをしてしまい…僕は律の父親です。よろしくね、凪咲さん」
「は、はい、よろしくお願いします!」
「じゃあ夕飯も出来たから食べましょうか」
4人で夕飯を囲いながら色々なお話をして、その後はそれぞれの部屋に戻って行った。
客室のベッドに寝転びボーッとする凪咲。海でたくさん遊んだからすぐに眠れると思ったが眠気が来なかった。
どうしようか、悩んでいるとコンコンとノック音がして答えると律が扉を開けて中の様子を見てきた。
「凪咲、寝れる?」
「何か微妙…律の部屋遊びに行っていい?」
「構わないよ、おいで」
手を差し伸べてきて凪咲は手を掴むと律の後ろを歩いて、律の部屋に入った。落ち着いた部屋で机の上も本棚も整理整頓されていて凪咲はキョロキョロと部屋の中を見た。
「律の部屋、思った通りだった」
「そうかい?」
「うん、落ち着いた感じかなーって、ベッドの下見ていい?」
「普通部屋の主に聞かないよね、まぁ、いいよ」
ベッドの下に手を突っ込んで凪咲は探っていると何か物に触れて引っ張り出した。それは中学の卒業アルバムと夏祭りの時に律に声をかけてきた男性とのツーショット写真だった。
「え、これ…」
「!!」
すぐに律がツーショット写真を奪うと気まずそうな表情をしていて、凪咲は律の手を掴むと自分の方に向かせた。
「僕は気持ち悪いなんて思わないよ、だから律が大丈夫なら彼と何があったのか…教えてくれないかな?」
そう問いかけると律は顔を下に向けて俯き出したが暫くしてから顔を上げると「分かった」と言って、2人はベッドに腰掛けて話し出した。
「僕が同性愛者だと思ったのは小学生の時。可愛い女の子よりかっこよくてクラスの人気者みたいな男の子が気になっていたんだ。その時に自覚したけど踏み切ったのは中学生の時だよ」
中学の卒業アルバムを開き、律のクラスのページを見た。そこには今より少し幼い律と夏祭りの時に声を掛けてきた男子、露崎暁斗 の写真があった
「彼はクラス委員長で男女問わず人気者で彼の周りには誰かしら居た。そういうところが僕は好きで憧れてもいた…そして我慢出来ずに告白をしたんだ」
「それで…?」
「…彼はちゃんと受け入れてくれたよ、それからは幸せだった。一緒に帰ったり休日に遊んだり…体に触れ合ったりお互いにお揃いを付けたりね」
そう言いながら右耳のピアスに触れたのを見て凪咲はピアスがお揃いだと確信した。
「けど…そんなある日、教室に行くと僕が同性愛者だとバラされていてね。それはもう嫌悪感たっぷりの視線クラスメイト全員から来たよ。暁斗くんも付き合っていた事をバラされたが何故か彼は僕に付き合わされてるって感じで処理されて、それからは僕と暁斗くんが近付こうとすると誰かが間に入ってくるんだ…だから話せなくてそのまま別れたよ。これが僕の過去だよ」
律が凪咲の方を見ると凪咲の目からはポロポロと涙が流れていて、律はすぐにタオルを渡してきたが凪咲は受け取らずに口を開いた。
「何それ、バラしたのも最低だけど!同性愛者ってだけでゴミみたいな扱いして最低すぎるよ!!律はただ恋愛してただけなのに!!」
「凪咲…大丈夫だよ、今は隠しているから辛くないし…凪咲に迷惑掛けないようにするから」
ニッコリ笑う律だったが、その笑顔が何処か痛々しく感じてしまい、凪咲は思いっきり律に抱きついてそのままベッドに押し倒した。
「うわ、な、凪咲?」
「約束して…隠すのはいいけど、僕には隠し事しないで!僕はどんな律でも受け止めるから!」
そう伝えると律は凪咲の背中に腕を回して抱き締め返してから「分かった」と返事をした。
そのまま2人は眠気が来てしまい、抱きしめ合ったまま寝てしまったのであった。
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