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第1話

タイトル「シチュエーションは大事」(リエ夜久)  新しい季節になり、ひとつ学年が上がった夜久は無事大学生になっていた。 今はまだサークル勧誘されている期間でみんなどこに入ろうかな……と楽しみながらも迷っているところだが、夜久はそれよりも早く、高校を卒業して大学に入学金を払った時点ですぐにバレー部に入って動き出していた。  大学でここに入る部員はもちろんどこかで見たことのある奴らばかりで、大学からバレーを始めるからここに入りましたと言う人間は誰一人としていない。 皆競争心剥き出しな奴らばかりで意気込みがすごいが、夜久はまずは慣れること。それに怪我をしないためにも集中することに全力を注いでいた。 高校の時とはまた人数も違うから先輩の目に止まるのも容易じゃない。 この中から選抜に入るのなんてもっと難しいに決まってる。だけどそれでも全力は尽くす。だから部活が終わると集中力が途切れてそのまま眠ってしまいそうになるくらいだ。 「夜久っ! 大丈夫か⁉」 「……ぁ、すみませんっ」  倒れそうになり後ろから先輩に抱きかかえられて正気に返る。 「すみません……」 「大丈夫か?」 「はい。ちょっと集中が切れちゃって……」 「ならいいけど、ちゃんと眠れよ⁉」 「はい。ありがとうございますっ」  お辞儀をして部室に帰るとシャワーを浴びるためにロッカーを開けてタオルを取り出す。 するとちょうどLINEが鳴ったので、タオルを取ったついでに携帯を見るとそれはリエーフからだった。 『夜久さん、お疲れ様です! 今から会えませんか?』 「なんだこいつ」  何でこうもちょうど良くLINEが来るかな。 『いいけど、お前部活は?』 『今日は試験休みですっ』 『なら勉強しろよっ』 『いや、それ。勉強教えてくださいよっ』 『ぁ、そういうこと?』 『はい。そういうことですっ』 『ならいいよ。どこで会う?』 『夜久さんのアパートで!』 『……お前、下心あるんじゃないだろうなっ』 『いえ、あくまでも試験勉強ですからっ!』  そう強く言われて仕方なくOKする。 〇  夜久は大学に入ってから親元を離れて大学の近くに部屋を借りていた。 別に家から通ってもいいのだが、何事も社会勉強。「自分でバイトして払うから」と親を説得して部屋を借りていたのだが、実はこういう場合を想定していたのかもしれない。要は気兼ねなくリエーフとイチャイチャしたいと思っていたのだ。 「で、今かよ……」  OKのLINEを送ってから口元が二やついているのに気づく。夜久は急いでシャワーを浴びると夕食の買い出しをして自宅に戻った。 「いない……」  てっきりドアの前で待っていると思ったら誰もいないのだ。するとまたLINEが鳴った。見てみるとちょうど良くまたリエーフからだった。 『夜久さん家、どこだか分かりませんっ!』 『ぇ……。言ってなかったっけ……?』 『201号室としか聞いてませんっ。どこの201か教えてくださいっ!』 『……ごめん……』  教えてたと思ってたんだけどな……。  以前のLINEを見返してみると、やっぱり住所を教えていたので地図アプリで来るように命じて部屋に入る。 「まったく……。何で部屋番だけ覚えてるんだよっ」  クスッと笑いながら買ってきた食材を小さなシンクに並べてほくそ笑む。 今日は「うどんすき」にした。本当は「すき焼き」にしたかったのだが、食費の都合で肉は少なめにしたので「うどんすき」だ。 適当な鍋はないかと探したが、あいにくちょうどいい大きさのものがなかったのでフライパンで作ることにした。 時間はまだ全然早いから下ごしらえだけてもしておこうと野菜を洗って切ってフライパンの中に放り込む。うどんと肉も放り込んで割り下を入れると蓋をして準備OKだ。 「遅いなぁ……。あいつまた迷ってるとかLINEして来ないだろうな……」  心配になってベランダに出ると駅からの道を覗き込む。すると一際背の高い男を見つけて手を振っていた。 それにいち早く気づいたリエーフが同じく大きく手を振って足早に歩を進める。数歩繰り返すとそれは走り出していて、その笑顔が一段と眩しかった。 「あいつ、制服かよっ」  明らかに学校の帰りでしょ、と言う服装に苦笑しながらも嬉しさが止まらない。 以前は否が応でも毎日会っていたと言うのに、今はこうして意図的に合わないと顔を合わせられない。それが良くもあり悪くもあり……。 「夜久さーんっ!」 「馬鹿っ。声大きいって!」 「すんませんっ!」 「いいから早く上がって来いっ!」 「はいっ!」 〇 「いいのかよ、制服で」  思いはしたが、見慣れた制服に微笑んでいた。そしてすぐに玄関チャイムが鳴ってドアがガンガンノックされる。 「うるさいなぁ。今開けるから待て」 「夜久さんっ! 本日はお招きいただき」 「いいから上がれ」 「はいっ!」  子犬のように嬉しさ満点で玄関先に立つ彼にさっさと上がるように制すると部屋に脚を進める。続いて入ってきたリエーフを感じたと思ったら後ろからギュッと抱きしめられて首筋に顔を埋められる。 「ちょっ」 「夜久さんっ。会いたかったっす!」 「……」 「夜久さんは⁉ 夜久さんは俺に会いたくなかったですか⁉」 「会いたかったよ。でもお互い忙しいだろ?」 「そうだけどっ!」 「ちょっと落ち着け」 「……はい」  せっかちなリエーフを引きはがして、その背中を押すと部屋に導く。床に座らせて向き合うとニコニコしながら「石鹸のいい匂いがしました」と言われて顔が赤くなった。 「ばっ……か。これは部活の後シャワー浴びたから……」 「ぇ、いいなぁ。部活後にシャワー出来るなんて」 「ああ。ウチはある、からな」 「ないところもあるんですか?」 「そりゃあるだろ?」 「そっか……」 「お前はもう決めたのか?」 「何がです?」 「大学どこ行くか」 「あーー。まだですね」 「まだって……」 「俺、上に行くかどうかも分からないんで」 「ぇ、そうなのか?」 「実は姉ちゃんの関係でそっちに誘われてて……。俺、勉強別に好きじゃないし……」 「姉ちゃんって……。モデルやってたっけ?」 「ええ。撮影について行ったら『やらないか?』って言われてて……」 「へぇ。いいじゃないか。お前タッパもあるし顔もいいから」 「そこはもう認められてますから!」 「変なところで自信出すなよ」 「すんませんっ。でも問題はそこじゃないんで」 「じゃあどこなんだよ」 「海外ですよ」 「海外?」 「姉ちゃん余裕で海外の仕事とかしてて、俺にもそういう仕事回ってくると思うんだけど……」 「ああ。お前日本語しか喋れないからか?」 「いや、それよりも海外なんて行くと今より夜久さんと会えなくなるじゃないですか」 「ぇ、そんなこと気にしてるのか?」 「そんなことって……。今でさえ前みたいに会えてないのに、海外なんて行ったらもっと会えなくなるじゃないですかっ」 「うーん……」  そういってくれるのは有難かったが、そんなことを言っていたら彼が飛躍出来なくなってしまう。 そこは自分がしっかりしないと、と顔を引き締めた。 「モデル。いいチャンスだと思ったらやれよ」 「……」 「俺はお前がどこに行ったって繋がってると思ってるから」 「夜久さん……。でも俺、やっぱりこうして夜久さんと会えないのは嫌です」 「大人になれ」 「俺、まだ大人じゃないです。そんなんで大人になりたくないですっ」 「だっていいチャンスじゃないか。上に行かないんなら、そのくらい考えないとっ」 「……それはあくまでも将来の話で……。今はまだ……嫌って言わせてくださいっ……!」 「ぅ、うーん…………」  そればかりは本人が決めることだから、これ以上強くは言えない。 モゴモゴしていると「俺のことで、ホッントすんませんっ!」と頭を下げられて参ってしまった。 時期はまだまだどうにでもなるので、「よく考えろ」と話を終わらせる。 〇  それから先は夜久の用意した食事を取って、リエーフの持って来たアイスを口にして終了となった。 「ごちそうさまでした」 「おいしかったですっ。ごちそうさまでした」 「うんっ」  向かい合っての食事は、相手が彼だと一段と美味しくて笑顔が溢れた。それは相手も同じだったらしく、いつになく目が線になっていてそれがまた微笑ましかった。 「なんかこうやって向かい合うのも久しぶりだな」 「でしょ⁉ 俺なんてちょっとほら、干からびちゃってるし」 「いや、十分俺より大きいから大丈夫だ」 「そんなこと言わないで、少しは俺のジョークに付き合ってくださいよ」 「二年になったんだろ? 新しい一年はどうだ? お前くらいおっきいヤツいるのか?」 「もちろん二年にはなりました。新しい一年は俺みたいに初めてってヤツはいなくって皆上手いです。でも俺みたいにおっきいヤツは今のところいませんっ」 「そっか」 「そんなことより夜久さん、風呂借りていいですか? 俺、ちょっと体洗いたいです。着替えは持って来てるんで」 「ぁ、ああ。いいけど……」 「じゃ、ちょっとシャワー借りますっ」  言うが早いか、リエーフは自分の荷物から着替えだけを取り出すと風呂場に消えて行った。 「……」  何あいつ…………。  最初は訳が分からなかったが、つまりそういうことで。急ぎ足のリエーフが望んでいたことは食事なんかじゃなくて、そういうことで……。 そう思うとポッと体が熱くなった。 「あいつっ…………」  ギュッと腿の上にあった拳を握りしめる。  望まれている……。  それはそれで恋人なら当たり前のことだからいいんだけど……。それでも恥ずかしい気持ちが前面に出てしまうのは仕方のないことだった。  経験値が少ない。  そう言われればそうに違いない。逆にそうそうあって堪るかっ、とも思う。 「ぁ、どうしよう……。こういう場合、俺はどうしたら正解なのかな…………」  こうやって、ただ相手が風呂から出て来るのを待つのが正解なのか。それとも全裸になってベッドで相手を待つのが正解なのか。  究極の選択だ…………。 「ゔーん…………」  難しい顔をして考えていると、速攻でシャワーを浴びたリエーフがビショビショのまま腰にタオルを巻いた姿で洗面所のドアを開けた。 「夜久さんっ!」 「なっ、何だよ、お前! ビショビショで出て来んじゃねぇよっ!」 「ぁ、すんませんっ! 俺いない間に夜久さんいなくなってたらどうしようとか思ったら、いてもたってもいられなくなって…………!」 「そもそもここ、俺の部屋なんですけど⁉」 「あっ、そうでしたね…………」  すんません……と言ったリエーフは、もう一度ドアを閉めると、数分後。今度はちゃんと体を拭いてそこから出てきた。ただし腰にタオルを巻いたままの姿だったけれども。 「ぇっ……」 「どうせ脱ぐんで、このまま失礼しますっ」 「……」 「夜久さん。俺、今日そのつもりで来ました。これは間違いじゃ……ないですよね?」 「……」  言われてゴクリと生唾を飲み込む。 「いいっすか?」 「いいっすかって、お前……」  明らかに勃っているソコが目の前にある。 それでも必死の形相で、そんなことを言ってくるリエーフをどう取ったらいいのか……。まったく返事に困る問いかけに苦笑しながらも、その腰にしがみつく。 「ぁっ…………」  そんなことされたら……! と言う声に、もっと顔を寄せてスリスリすると、何も言わずに抱きしめられてベッドまで運ばれた。 「ぁっ……」 「余裕ないっす!」 「おっ、落ち着け」 「いや、こんな時落ち着いてるヤツ、ちょっとおかしいんでっ!」  言いながら毟られて衣類を剥がされる。 「ちょっ、お前っ……!」 「謝るのは、後でしますんで!」 「あっ!」  剥き出しになってしまった下半身を隠すことも出来ず、余裕のない相手を前に慌てて「待てっ」と言う。 「待てないっす」 「おっ……オイルを……」  どうにかそこだけは守らないと自分の身が危ない。手を伸ばしてみるが届くはずもない。 「どこですか?」と聞かれて仕方ないので「キッチン」と答えると目を丸くされてしまった。 「キッチン……ですか?」 「ああ。キッチンのサラダオイル、使うしかないだろ?」 「ぇっ? ぁ、はい」  言われたリエーフがそれを取りに行って帰って来る。 その間夜久は、のしかかっていた重さがなくなったな……と思うくらいの時間しかなかった。リエーフは、あっという間にキッチンのオイル片手に鬼の形相で元の位置に返っていたのだ。 「ぇ……」 「オイル、持ってきましたっ」 「ぁ、うん……」  だから続きいいですか? と目で訴えられて反射的に頷いてしまったが運の尽き。乱暴に蓋を開けたリエーフがその指にオイルを垂らすと無造作に夜久のソコを探り出す。 「やっ……ぁっ……ぁぁっ、ぁ」 「こうして緩めないと、夜久さんを傷つけてしまうから……」  ズズズッ……と容赦なく武骨な指が中に入ってくる。それを何とか力を抜いて迎えようとするのだが、やっぱりそんなにすぐには対応出来なくて必死になって相手の腕を掴む。 「もっと……ゆっくりっ…………!」 「すんませんっ。でも俺、久々の夜久さんだから……」 「んっ! んっ! んっ! …………あっ……んっ!」  オイルの力を借りてリエーフの指が中で蠢く。それを楽しむとか言う余裕は全然なくて、ただただ翻弄されるばかりだった。 「あっ……ぁっ、ぁっ……」 「夜久さんの中……熱いです」 「ぅっ……ぅんっ……! んっ! んっ!」 「舌を出して……。俺を求めてくださいっ」  言われるままに苦しい中、舌を出すと絡め取られるような勢いでキスをされる。 「ぅ……んっ……んっ、んっ……」  体内で蠢く指と口の中の舌に囚われながら体中を弄られる。それがまたゾクゾクするほど気持ち良くて、たぶん鳥肌が立ってる。 「ふっ……ぅっ……ぅっ……」  やっとキスから解放されたかと思ったら今度はリエーフの唇が素肌を這う。下半身しか脱いでないから必然的に彼の唇はソコ狙いで、後ろに二本の指を出し入れされながら前も口に含まれて執拗に刺激された。 「んっ! んっ! んっ! やっ……ぁっ! ぁっ! ぁんっ!」  まだ十分に勃っていなかったモノが舐められてしゃぶられて彼の口の中でしっかりと硬くなって汁を流す。ソコに歯を立てられてビクッと体を強張らせると、今まで流していた汁を思いっきり吸われて「ひっ……!」と悲鳴をあげた。 「やめっ……やめてっ…………!」  そんなことを口走ると、打って変わってモノの割れ目をレロレロと舌で舐められてまた甘い声を出すはめになる。 それを数回繰り返す頃には、後ろはすっかり解れされていて、尚且つ夜久も疲れていて変な力が抜けていた。 「入れますよ」  返事を待たずにリエーフが行動する。夜久は脚を肩に担がれると躊躇なく一気に奥まで貫かれていた。 「ぅぅぅっ……! ぅっ……! ぅっ……! ぅっ」 「夜久さん、もっと力を抜いて」 「ぅぅぅっ……! ぅっ! ぅっ!」  ぬ……けるかっ……!  言われたからと言ってそう簡単に出来はしない。夜久は反射的に彼の腕にしがみついたのだが、リエーフの姿勢はガンガン攻めの一手だった。 「ぅっ! ぅっ! ぅぅっ!」 「いいっ! ……ああ、夜久さんに入れられるなんて…………久しぶり過ぎて泣けるぅっ! ぅっ! ぅっ!」 「ぁっ! ぁっ! ぁっ! …………んっ! んっ! んんっ! んっ……!」  それから先はひたすら腰を打ち付けられて体の奥の奥まで突かれた。 肩を押さえつけられて突かれると逃げ場がなくて涙を流す。夜久は自分で自分のモノを慰めるのも忘れるくらい攻め立てられて喘ぎ声しか出せなかった。 「夜久さんっ……もう俺っ……」 「ぅっ! ぅぅっ……ぅっ」  それを言いたいのは俺のほうだよっ……!  苦し気な顔をするリエーフに夜久はガシッとその腕に爪を立てた。 「痛っ……!」 「は……やく、してくれっ……。こっちもイきそうだっ」 「ぁ、はいっ!」  も……どうにでもなれっ……!  そんなことを口走ったのは初めてで、でもどうしてもここは快楽を優先したかった。 「ぁっ! ぁっ! ぁっ! んっ! んっ…………!」 「ああっ……! あっ! んっ……! んんっ! んっ!」  声が枯れるかと思うほど喉が参っていた。一度目を終えてベッドに横たわると、それと比例するくらい体のほうも疲れていてぐったりする。 それでも数分経つとリエーフは元気になっていた。 「夜久さん。俺、もう大丈夫ですから」 「えっ……⁉ 何が大丈夫なんだよっ」 「だからもう二回戦行けますっ。だから、ねっ?」 「えっ、何それ。俺はまだ大丈夫じゃないし、二回目なんて望んでませんけどっ⁉」 「いいから、いいから」  しっかり断る前に、ちゃっかり突っ込まれてた。 「もっ……もぅっ!」  誰がいいって言ったんだよっ……! 「ゃっ……ぁっ……ぁぁっ…………! んっ! んっ! んっ!」  横たわったまま脚を広げて突っ込まれるスタイル。 「こういうの、どうです?」 「ぁ……んっ! んっ! んっ!」  ぇっ……何これっ……何っ⁉  「ぇ、待って。角度がっ……! ぁっ! ぁっ! ぁっ! んっ!」  違う角度で攻められて、夜久は体を捻って彼を顧みた。 「ふふ、いいでしょ?」 「いいって何⁉ こ……んなのっ……!」  なんかっ……凄過ぎっ……‼  でもこの言葉は口にしてはいけないとすぐに気づいて口を噤む。 何故って、言えば相手は絶対に調子に乗るから。それは即座に分かった。だから体をピクピクさせながらも、それから先は口に手を当てて最後まで我慢に我慢を重ねた。 〇 「お前コロス」 「でも良かったでしょ?」 「…………」  良くても良かったとは、けして言えない。 満足げなリエーフに抱かれながら、夜久は黙ってその胸に顔を埋めて目を綴じた。  俺は、いつまでこいつと付き合って行けるだろうか…………。  不安はいつも付きまとう。色んな意味でずっと寝たふりをしたかった夜久だった。 終わり タイトル「シチュエーションは大事」 20230531

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