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第80話 ストレートな告白

「残ってたんだ……ていうか、ご丁寧に現像までして」 「この写真を見慣れていたので、きみを5年振りに見つけた時、なかなか信じられませんでしたよ。まさかこんなに、頑固で生意気で……」 「……む」 「……可愛くかっこよく成長しているだなんて、思わなかったから」  フグみたいに膨らませている僕のほっぺを、律はムギュッと手で押し潰して笑った。  タコの口にキスをされて、また笑われて。  甘やかしてくれるのは嬉しいけど、慣れなくて照れる。  きっと、今まで嘘を吐いていたことを悔やんでいるから、その分優しさで返していこうって魂胆だ。  そんなことをしなくても、もう既に律を許しているし、そもそも初めから憎んでもいない。  そう言っても律は、僕を甘やかすのを止めそうにない。  だからこのままずっと、律の隣で笑っていられますように。  この恋が最初で最後の───永遠に続く恋になれますように。 「律。また一緒に海に行こうよ」 「あ、俺もずっとそう思ってました。千紘と一緒に行きたいと」 「またかき氷買ってよ」 「いちごのね」  舌を真っ赤にさせて見せつける僕を思い浮かべたのか、律は嬉しそうにキスをしてきた。  唇を綻ばせながら受け止めて、なるべく官能のキスまでいかぬよう、その手前の大人のキスまでに留めるように心がけた。 「……そういえば、これはまだ言ってなかったかも」  はたと動きを止めた律は、何かを考えるように僕を見つめた。  まだ何か隠していた嘘があるのかなと首を傾げると。 「愛しています、千紘」 「……!」  ストレート過ぎる最上級の告白に驚いてしまい、僕は目を丸くした。  そんなこと言わなくたって分かってる。  けど、言葉にするのって大事なことだ。  僕は猫のように、すり、と体を寄せた。 「う、うん。ありがとう。僕も、律のことを───」  続きを言おうとした時、ベッドの下から足音が聞こえて、どこからともなくチーが姿を現した。  軽い足取りで窓枠にジャンプしたチーは、カーテンの後ろに再び姿を隠す。  いつからいたのだろう。  ふと気になって律に尋ねた。 「チーっていつも、ベッドの下にいることが多い?」 「ああ、そうですね。今日もほとんどそこで丸くなっていました」 「ほとんどって、その……」  カーッと顔が熱くなる。  僕がこのベッドで高く喘がされている最中も?  律はこともなげに言った。 「猫の五感の中で最も優れているのは聴覚ですからね」  僕は手のひらで熱すぎる顔を覆った。

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