80 / 88
第80話 ストレートな告白
「残ってたんだ……ていうか、ご丁寧に現像までして」
「この写真を見慣れていたので、きみを5年振りに見つけた時、なかなか信じられませんでしたよ。まさかこんなに、頑固で生意気で……」
「……む」
「……可愛くかっこよく成長しているだなんて、思わなかったから」
フグみたいに膨らませている僕のほっぺを、律はムギュッと手で押し潰して笑った。
タコの口にキスをされて、また笑われて。
甘やかしてくれるのは嬉しいけど、慣れなくて照れる。
きっと、今まで嘘を吐いていたことを悔やんでいるから、その分優しさで返していこうって魂胆だ。
そんなことをしなくても、もう既に律を許しているし、そもそも初めから憎んでもいない。
そう言っても律は、僕を甘やかすのを止めそうにない。
だからこのままずっと、律の隣で笑っていられますように。
この恋が最初で最後の───永遠に続く恋になれますように。
「律。また一緒に海に行こうよ」
「あ、俺もずっとそう思ってました。千紘と一緒に行きたいと」
「またかき氷買ってよ」
「いちごのね」
舌を真っ赤にさせて見せつける僕を思い浮かべたのか、律は嬉しそうにキスをしてきた。
唇を綻ばせながら受け止めて、なるべく官能のキスまでいかぬよう、その手前の大人のキスまでに留めるように心がけた。
「……そういえば、これはまだ言ってなかったかも」
はたと動きを止めた律は、何かを考えるように僕を見つめた。
まだ何か隠していた嘘があるのかなと首を傾げると。
「愛しています、千紘」
「……!」
ストレート過ぎる最上級の告白に驚いてしまい、僕は目を丸くした。
そんなこと言わなくたって分かってる。
けど、言葉にするのって大事なことだ。
僕は猫のように、すり、と体を寄せた。
「う、うん。ありがとう。僕も、律のことを───」
続きを言おうとした時、ベッドの下から足音が聞こえて、どこからともなくチーが姿を現した。
軽い足取りで窓枠にジャンプしたチーは、カーテンの後ろに再び姿を隠す。
いつからいたのだろう。
ふと気になって律に尋ねた。
「チーっていつも、ベッドの下にいることが多い?」
「ああ、そうですね。今日もほとんどそこで丸くなっていました」
「ほとんどって、その……」
カーッと顔が熱くなる。
僕がこのベッドで高く喘がされている最中も?
律はこともなげに言った。
「猫の五感の中で最も優れているのは聴覚ですからね」
僕は手のひらで熱すぎる顔を覆った。
ともだちにシェアしよう!