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eating each other

ボトムの廃モーテルにケチな強盗が逃げ込んだ。 駆けだし賞金稼ぎのレオン・ゴーストならびにレオン・ダークネスは、マッドドッグ・ドギーと組んでコイツを追い詰める事になった。 何故余計なおまけが付いてきたのか話せば長い。まず、廃モーテルの裏口に張り込む人員が必要だ。かといってゴーストとダークが二手に分かれるのはよろしくない。ゴーストは弟の知恵の足りなさを前々から不安視しており、ピンで見張りを任せてよいものか判じかねていた。 ダーク本人は「ビッグブラザーは心配性やな、仕事はきっちりやるから大丈夫やて」と安請け合いするだろうが、以前裏口で待たせた時はハイになり、「生ゴミ臭い息吐きよって喧嘩売っとるんかおどれ」とメリケンサックでダストボックスをボコボコにしていた。 同じくマリファナで酔っ払い、放火騒ぎを起こしたこともある。 そこで白羽の矢が立ったのが鼻が利くことにかけては右に出るものがないマッドドッグというわけだ。 簡単な打ち合わせを終えいざ賞金首の潜伏先に赴いたゴーストは、鞘にしまった日本刀を膝の間に立て、隣室の壁の穴から強盗の様子を観察していた。 一体どれだけ放置されているのか、コンクリ剥きだしの天井や壁は崩れかけ雨風が素通しだ。 ダークは腕枕を敷いて爆睡してる。 「その口げんこ突っ込んだろか」 どこであろうと速攻寝れる弟を一瞥、あきれと慣れあいを六対四で割った苦笑を浮かべる。 同じ姿形をしていても二人には決定的に異なる点があった。 ゴーストはもう何年も熟睡した経験がない。暗闇の中では異様に眼が冴えてしまい、眠りに落ちることができないのだ。 原因はわかってる、就寝中に間引かれるのを警戒しているのだ。 被害妄想ではない。幸いにして未遂で終わった実体験だ。 あの男が自分と弟に手出ししないように、ゴーストは夜通し見張ってなければいけなかったのだ。 元凶を葬った今でもまだ習性と化した悪癖は抜けず、全身にピリピリした殺気が張り詰めているが、これが恐怖心の裏返しだと認めざるをえない。 「……ふん」 親指で弾いて鯉口を切る。剣呑な眼光が白刃を照り返す。 ゴーストには成り上がりの野心がある。賞金稼ぎの看板を出した以上、底辺で燻り続けるのはプライドが許さない。一方で金も欲しいし女も欲しい、デカく張ってデカく当てたい。望みを叶える為ならば外道に落ちても一向にかまわない。 冷たく澄んだ白刃の輝きを見詰めていると、ろくでもない昔の記憶が甦ってきた。 『さ、帰るで』 ライオンの鬣に似せたけばけばしい金髪の女が刀を鞘に差す。 黒髪を短く刈り込んだ10歳程度の少年が、白刃の鋭利な輝きに魅せられて呟く。 『おかんのサムライソードかっこええな』 『アンタのおとんにもろたもんや。早い話が形見やな』 ゴーストとダークは父親の顔を知らない。母親はライオンソードの稼ぎ名を冠するタフでワイルドな女賞金稼ぎだ。 タンクトップから覗く肩甲骨からうなじにかけて、名前にちなんだライオンのタトゥーが彫られている。 よくいえば豪快、悪くいえばガサツ。好きなものは強い男と強い酒。ちなみに地毛は黒で双子の息子たちに遺伝している。 ゴーストは刀が好きだった。 女だてらに刀を操り、賞金首を切り捨てていく母親も好きだった。母と刀の組み合わせは力の象徴であり、強さに狂おしく焦がれる少年の心を掴んで離さない。 ゴーストは生唾を飲み、母の隙を突いてそろそろと鞘に手を伸ばす。 鯉口を切ろうとした指が即座にはたかれ、母が三白眼で見下ろしてきた。 『オイタはあかん』 『汚しも壊しもせん、ちィとさわるだけ』 『アンタにはまだ早い』 『早ない、ちゃんと使いこなしたる』 『小便たれがいきがるんちゃうで』 『たれてへん、コイツやそれ』 『なんでばらすねんビッグブラザー!』 巻き添え事故で寝小便を暴露されたダークが世にも情けない顔で抗議し、母親が腹を抱えて笑い転げる。 『おれも欲しい』 目を熱っぽく輝かせてねだる息子に、いたずらっぽく片目を瞑る母親。 『一人前になったら譲ったる』 『ずるいわビッグブラザーばっかり、ワイかて欲しいわ!なんでイケズすんねん贔屓やん、恨みっこなしジャンケンで決めたらんかい!』 『いたっ、いだだだよせ、よさんかアホたれ』 泣きべそかいてぽかすか兄を殴り付けるダークに、ゴーストはうんざりする。笑いながら息子たちのじゃれあいを見ていた母に、さも名案を閃いたとばかりダークが訴えた。 『ビッグブラザー独り占めする気満々やん、いっそ叩き折って半分こにしてや!』 『ホンマアホの子やな、んなことしたら値打ち半減やろ』 ゴーストは下唇を突き出しふてくされ、ダークはおめでたい笑顔で、わしゃわしゃと髪をかき回す母の手のぬくもりを享受する。 『どっちの物になるかはアンタら次第。あんじょうきばり』 「ビッグブラザー」 暗闇から投げられた声に柄を握って顔を起こせば、ダークが片膝を乗り出していた。 「辛気くさいツラして何考えとったん」 「交代には早いで、寝直せ」 手の甲で追い立てる兄ににじり寄り、ダークが甘えるような声を出す。 「狩りの前はムラムラしてかなわん」 「時と場所考えろノータリン、隣に聞こえる」 「声たてなええやん」 ダークがやんちゃっぽく笑い、ゴーストの首筋を唇で辿っていく。 赤裸々な衣擦れの音が劣情をかきたて、火照った手が肌を這い回る。 「ぶち込みたい」 「こらえろや」 「イケズすな」 「あのな」 「ビッグブラザーかて固ゥなっとるやん、ドクドク脈打って辛抱たまらんちゃうか」 廃墟のモーテルの一室、ダークがせっかちに求めてくる。 拒んでも無駄だと諦念に至り、ゴーストは大人しく目を瞑る……と見せかけ、ダークの頭の後ろに手を回す。 「ッは、ぁっ」 「じっとせェ、脱がせへん」 「お前こそ、ジッパーにチンコ噛ませんなや」 どちらからともなく手が伸びて顔が重なり、全身の肌と股間をまさぐりだす。 マーキングのような前戯、共食いのようなセックス。 これもスキンシップの延長なのだろうか、ゴーストにはよくわからない。ダークにはもっとわからない。 「んッ、ふ、ッぐ」 スプリングを軋ませて絡み合い、互いのペニスを荒っぽく擦り立てる。半脱ぎのダークとゴーストが同じリズムで揺れ動き、快感を高め合っていく。 鈴口から滲んだカウパーを塗り広げ、太く育ったペニスをしごきまくる。 「指輪ひゃっこい」 「お互い様やん」 ゴツいリングを嵌めた指が互いの亀頭を揉みくちゃにする間も舌を絡ませ続け、口腔の粘膜をドロドロに溶かしていく。 「やらしーな」 「お前かて、ッ!?」 赤く尖った乳首を抓られ脂汗がにじむ。 過敏な反応に味をしめたダークが舌なめずり、乳首をコリコリ捏ね回す。しこりを楽しむように揉み搾り、下品な音をたて吸い立てれば、徐々にダークが余裕を失っていく。 「っは……やめ、ンっぐ、こそばゆ」 「ここ弱いん知っとんで」 「~~~ッあ」 乳首を甘噛みされ、切ない疼きがこみ上げる。 鍛え上げた腹筋を波打たせて呻くゴーストを組み敷き、ダークがセクシーに囁く。 「ビッグブラザーの乳首素直でかわいらしーな、ベロでほじくったるとピクピクすんねん」 「調子のるなよ……っは、ぁ」 片手で口を押さえて強がるゴースト、引き攣りがちな笑みに憔悴の色が混じりだす。 兄の痴態に生唾を飲み、膝裏に手を通して抱え上げる。 「たまらんその顔。声、一生懸命殺しとるんやな」 「は……当たり前やろ……」 ねちっこく責められた乳首は限界まで感度が高まり、勃起しきったペニスとともに次の刺激を待ち侘びていた。 トロリとすくったカウパーをアナル周辺によくまぶし、いざ指をねじこもうとしたダークにゴーストが苦言を呈す。 「指輪とれや」 「ぶっとい方が好きやろ」 「ンっ、~~~ッぁっ!!」 根元のリングがアナルを通り抜ける異物感にゴーストが目を剥く。 そのリアクションに嗜虐欲をそそられたか、ダークはうっそりと笑み、わざと右に左に指をひねって苦痛をもたらす。 「ぁっ、ダークっ、外せゆーとんのにきかん坊がッ……」 無機物に犯される屈辱とアナルを陵辱される違和感にゴーストがのたうち、鈴口からぱたぱた雫が落ちた。 「いくで」 ゴーストが弱り果てたのを見計らい、赤黒い怒張がみちみちとめりこむ。 「ぁがっ、あッぁっ、ぐ、かはっ」 「チカラ抜けや」 激痛に声が詰まる兄を抱き締め背中をなでまわすダーク。 凶器といえるサイズのペニスが括約筋の抵抗に打ち勝ち、直腸の窄まりを容赦なく押し広げる。 ゴーストは息の仕方を忘れ、喘ぎ、汗をびっしょりかく。 「はっ、ダーク……っ」 硬質な声が切なく潤み、甘えるように弟を呼ぶ。 次の瞬間、ダークの理性が飛んだ。 「あかん、ッは、ぁっあ、さかんなやっ!」 「そっちが挑発したんやろ、手遅れや。前ビンビンにおっ勃ってて変態やん、腰かて勝手に動いとる」 耳朶を噛んで囁くやゴーストがわななき、腕枕に突っ伏して険しく唸る。 感じている顔だけは見せまいと意地を張るのが可愛くて、カウパーにしとどに濡れ光るリングを嵌めた指で、屹立したペニスをいじめぬく。 「やめさらせっ、ぁぐッ、んっ」 「ホンマ食いでがあるで」 常に不敵な表情が崩れる瞬間がたまらない。 突いて突いて突きまくって追い上げて、手放せないプライドと快感のはざまでグチャグチャになっていく。 唇を噛んでみっともない喘ぎを封じる兄を揺さぶり、尻をパンパン打ち合わせ、前立腺のしこりを叩く。 「も、よせ、ッあ、っは」 「ちょうどええ感じにこなれてきたとこやん、抜いたらもっとしんどいで」 精力絶倫のダークは緩急や強弱を調整し、イく寸前まで追い上げては休む繰り返しでゴーストをもてあそぶ。 ゴーストは涎と汗にまみれただらしない顔。 肉食の暴威を備えた精悍な風貌は弟と繋がって、穴で感じる雌へと堕ちていく。 「ぁっ、ぁっンっ、ダークっ、こんあほたれ」 鍛え上げた胸筋や引き締まった腹筋が抽挿のリズムに合わせてうねり、体奥から爆ぜ散る衝撃に仰け反る。 「乳首イキせえ」 「~~~~~~~~~~~~っ!」 もとは男前な顔が浅ましく歪み、乳首をひっかかれて腰ごと上ずる。 怒りと焦りともどかしさ、その全部をこめて弟の首筋にかぶり付く。 「!!ぐ、」 ゴーストがダークを噛み、ダークがゴーストに噛まれた瞬間、同時に達した。 荒い息の下からダークが茶化す。 「乳首イキチャレンジ失敗やな」 「猫の爪研ぎみたいなヌルい責めでイけるか」 しばらく互いにもたれかかって呼吸を整え、暗闇の中でうるさい鼓動を聞いて過ごす。 暗闇と亡霊の輪郭が溶けあって、|暗闇の中の《ゴーストイン》|亡霊《ダークネス》が覚醒する。 「満腹?」 「ばっちり」 「ほな行くで」 あっけらかんと頷く弟に顎をしゃくる。 せいせいした顔付きでジッパーを引き上げるダーク、ブーツの紐を結び直して刀を引っ掴むゴースト、二人して部屋を出ていく。 裏口のドギーに片手を挙げて合図を送り、隣室のドアを蹴破ってなだれこむ。 「往生せェや」 何事かと跳ね起きた強盗が枕元の銃を構える。 「賞金稼ぎか!!」 放たれた弾丸を即座に見切り、流れるように腰を沈めて間合いを詰め、鞘から抜き放った刀を一閃。 白銀の弧を描いた刃が片腕を切り飛ばし、立て続けに飛び込んだダークがメリケンサックの一撃を叩き込む。 あっけなく気を失った賞金首からゴーストに向き直り、ダークがちゃっかり言った。 「二回戦行くか?」

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