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静は宗介と2人きりのこの世界が愛おしくて仕方なかった。
帰りのホームルームが終わると、静は誰よりも早く教室を出る。この空間から一刻でも早く脱げ出したいという思いが静の足を早めた。
学校から20分ほど歩くと自宅が見えてくる。
築30年以上経つ古びた2階建て1DKのアパート。
静は高校生になってから親が借りたこのアパートで一人暮らしをすることになった。というよりも追い出されたという方が正しい。
父親と母親が離婚することになり、どちらからも愛情を持って育てられなかった静は書面上では母が引き取るということになったが、結局は母と新しい男との暮らしの邪魔になるため、このアパートへ暮らすことを強要された。
しかし、家族と居心地の悪い生活を送っていた静にとってはむしろ好都合な話しで、それなりに快適な生活を送っていた。
家に帰っても誰もいない暗い部屋の電気をつける。洗面所に向かい手を洗いながら、目の前の鏡で自分の顔を見つめた。
メガネをかけたニキビだらけで丸っこい脂肪のついた顔。醜い顔。
そう思いながら、宗介に撫でられた場所を自分の指でなぞるとほんのりと自分の顔が赤くなった気がした。早くまた一緒に話したい。そんな思いが湧いてくる。
静は狭いキッチンに向かうと、冷蔵庫を開けてうどんを取り出す。鍋の湯を沸かすと3玉を一気に茹でた。数分が経ち、特に具などを加えることなくめんつゆなどで適当に味付けして、どんぶりに流し入れてリビングへと運ぶ。
食べれれば味なんて薄かろうが濃かろうがなんでもよかった。
あっという間に3玉のうどんを平らげ、クラスメイトの豚という言葉もあながち間違っていないとも思い始める。
静は引き出しにあった通帳を取り出し、今月の残りの残高を確認してため息が出た。
「あの猿ども金返せ、バカ、アホ」
静の母親は企業の役員を務めているため、親が金持ちというのは間違いない。しかし、だからといって静の口座に多くの金が振り込まれているかというとそうではなく、必要最低限の生活費しか振り込まれていない。
その上、クラスの連中に金をむしり取られるため生活もギリギリで風呂も毎日入ったら水道が止められそうになる程だった。そのため、風呂は毎日ではなく2日に1回という日もあった。
だが、宗介に会える日の前日は必ず風呂に入るようにしている。
静は風呂から上がると、髪も乾かさないまま床に寝転がり天井を見つめた。
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