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躾の時間:エバンス①

「返したくねーよー」 「ずっといてよレインー」  双子にしがみつかれたレインをランスが出迎えた。 「ずいぶん仲良くなれたのですね」 「……」  あまり詳細を知られたくない。双子に優しくされるのが癖になり何度か甘えた結果、妙に親密な雰囲気になってしまったのだ。閉鎖的な環境はレインをも狂わせるらしい。 「しかし持ち回りにするのが決まりですから、彼のことは離していただかないと」 「やだ~」 「次誰だよ」 「エバンスです」 「は~? あの種馬野郎とか絶対嫌なんだけど」 「オレたちのレインが壊されちゃう」 「レインだって嫌だよな~?」  撫で回され抱きつかれながら無言で立つ。次が誰だろうとなんだろうと嫌なのは変わらない。レインが欲しいのは一人の平穏だ。 「誰が馬だって?」  のしりと現れた巨躯に双子が嫌そうな顔をした。 「来んな絶倫野郎」 「レインは渡さねえ」 「いい度胸じゃねえか、久しぶりに喧嘩してやってもいいんだぜ」 「それは勘弁願いたいですね。さあ、引渡しを」  双子も争いまではしたくないようだ。渋々体を離すと、ポラリスがおもむろにレインの顎を掬った。 「っ……」  唐突なキスに体が跳ねる。触れるだけのキスを今度はシリウスがして、二人は名残惜しそうに頭を撫でた。 「また来いよレイン」 「辛かったらいつでも逃げてきていいからさ」  本気で寂しがっている双子にレインは少し嫌悪感を無くした。やはり今後は賢者を手玉にとる方向で動いてもいいかもしれない。 「感動的な別れは済んだか?」 「……」  見下げるエバンスは野性的な上裸で惜しげもなく筋肉を晒している。このなりで賢者とは、彼が担う国はきっと蛮族の住む場所に違いない。 「それじゃいただいていくぜ」 「よろしくお願いいたします」 「またなレイン~」 「壊されんなよ~」  レインは軽々と小脇に担がれ、エバンスの国へと転移した。      一言で言えば、野生の王国だ。  民は皆露出の高い服装で武器を持ち、狩猟が要であろうことがそこらに転がる獣から読み取れる。 「これがおれんとこのカイラって国だ。中々イカした景色だろ」 「……野蛮だな」 「ここらじゃ作物は育たねえし海も遠い。国土にはでけえ魔獣がそこかしこに溢れておちおち交易もできねえんだ」  レインを崖の上に座らせ、エバンスが赤茶けた国を眺めた。 「血に飢えた奴らには最高の国だぜ? 魔獣を討伐するだけ金が手に入るからな」  現地の民に混じって外から来ただろう戦士の姿が見える。 「うちには魔獣くらいしか物がねえが、それを欲しがる他国の奴らが良い金を出す。魔獣狩りに慣れた奴らにも需要があるから豊かではあるぜ」  聞く限りレインがこの国で学ぶことはなさそうだ。原始的な流通と実力主義の社会において、レインのような非力な存在はなんの価値もない。 「さてと、紹介はこんなもんでいいな」  再び荷物のように持ち上げられ、レインは抵抗する気力もなく担がれた。自分の価値について考えたことで不穏な未来を察してしまったからだ。  エバンスは下拵えでもするようにレインの服を剥ぎ取り、手足を奪い、箱に詰めて仕舞った。寝台に投げ出され不自由な体で転がると、エバンスが悪い笑みを浮かべた。 「娼館に置かないだけ有難く思えよ?」 「最低な奴……」  こうした社会で力のない者が役に立つ方法は限られている。力ある者の慰安だ。 「さっきの様子じゃ媚びる技は身につけてきたんだろ」 「んなわけあるか。あいつらが勝手に盛り上がってただけだ」 「ほう、じゃあ元々素質があるんだな。男に媚びるメスの素質が」  下卑た男だ。レインが睨みつけるとますます笑みが凶悪になっていく。 「今すぐにでも犯してやりてえところだが……あいにく繁忙期でな。これから魔獣を何体か討伐にいかなきゃならねえ」 「そのままひと月帰ってこなくていいぞ」 「そうだなあ、三日は空けることになる。でもそれじゃ寂しいだろ?」  嫌な予感しかしない。エバンスは手をかざして部屋に大きな箱を召喚した。厳重な鍵がついている。 「これはうちの地下オアシスに出る魔獣でな。知ってるか?」  箱の中から一匹を取り出してエバンスが掲げる。細い触手が束になったような姿を見て、レインの中の叡智が種を特定した。  吸精虫だ。深い洞窟などに棲む手のひらより小さい魔物で、冒険者に絡まっては微弱な精気を吸う低級の生き物だ。しかしエバンスが見せたそれは指先から肘まではある巨大なものだった。  表情を引き攣らせたレインをエバンスが満足そうに眺めた。箱の中に投げ戻し、今度はレインを持ち上げる。 「待て、なにを」 「こいつらも飢えてるだろうからな。不死身のお前ならいくらでも餌になるだろ」 「ふ、ふざけるなっ、育てて何になる」 「もちろん売り物だ。こいつがどこまで育つか知りたい研究者がいるんだよ」  箱の真上に連れてこられて青ざめる。中には五匹ほどがおぞましく蠢いていた。 「やめろ、嫌だっ」 「これも学問に通ずるってことだ」 「嫌だ、お、お前の相手ならするから……っ」  エバンスの一物は凶悪だがこれよりは何倍もマシだ。胴体だけですがりつくと、エバンスは笑みを深めた。 「帰ってきたらゆっくり相手してもらうぜ」 「ッ……」  レインは無慈悲に箱の中へ落とされた。虫の不快な感触が背中に伝わる。すぐに蓋が閉められ、レインの視界は闇に包まれた。 「おい、おい! 出せ……っ」  ずるりと肌を撫でられる。真っ暗闇の中、不快な音と質感がレインを襲った。 「ひ、いやだ、やめろぉッ」  何も見えないのに向こうは確実にレインを捉えにくる。不快感と恐怖の塊だ。手足のない体で何とか振り払おうともがくが、やがて虫はレインの性器にたどり着いて吸精を始めた。 「ひ、ぅッ」  反応してしまう自分が恨めしい。気持ち悪くてたまらないのに吸引される場所が性感帯に作り替えられている。 「いやだ、いや、っ、あ」  触手が這いずり回り、穴という穴に侵入を試みた。 「い、うんんっ、んーッ!」  無数の触手に全身が飲み込まれていく。口を塞がれ、一本が尿道に向かって突き刺さった。 「ッ! ゔんんッ! ……ッ!」  深く体内に入り込む触手と、陰茎と乳首を扱きあげる触手と、口にねじ込んで窒息させる触手と。手足がないばかりに引き剥がすこともできず、全身をくまなく包まれ、天地の認識もできなくなる。 「────ッ、……♡」  細い触手が尿道からと後孔から入り込み、的確に良いところを揉んだ。痙攣する体で判断しているのか、ひたすらに刺激を与えてくる。 「ん゛♡ ぉう♡ ん゛……ぐッ♡」  嫌悪と裏腹に身体が悦んで絶頂に達した。虫にはそんなことは分からないので、延々と同じ動作を続ける。レインは窒息と快感で何も分からなくなった。 「ゔゔ♡ ぉ──ッ♡ んぐぅぅッ♡」  耳の中で触手がびちびちと跳ねている。 「ぉ♡ ~~~ッ♡ ッ……♡♡」  ぴたぴたと喉奥を叩かれ、乳首がほじくりかえされている。 「…………ッ♡♡♡ ………………♡♡♡」  吸精虫はただ本能に従い精気を吸い続けた。レインはもはや自我さえ保てずに触手の暴力に呑まれていった。

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