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第2話
母と父と弟を1度に失った
『おいっ!燃えてるぞ~!』
『誰か、消防隊呼んでこいよ!』
家に帰ってくると、家が燃えていた
ボロアパートの割れた窓から火が噴き出している
僕は、ただ何もできずに呆然としていた
『あ!おい!あそこ!小さい子供がいるぞっ』
大声で叫んでいる男と女性の耳をつん裂くような悲鳴
『たっ、助けて~熱いよ~』
弱々しい声が微かに聞こえてくる
その聞きなれた声にハッと顔を上げる
かつて住んでいた自分の家の辺りに視線を移す
弟のアルだ
――アルッ!
『誰か~!子供がっ!消防隊は、まだなの?』
『もう、無理だ。建物の方が限界で近づけやしねぇ』
『おにいちゃ――』
『アルッ!』
小さな影に向かって駆け出すと腕を取られる
『やめろ、坊主。無茶だ』
『でもっ!アルがっ!』
『てめぇが行ったって被害者が増えるだけだ!』
ガラガラガラガラッ
崩れるっ!
『おにいちゃっ』
『アル!』
バキバキバキバキッズドォーンッ
『アルーーッ!』
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