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第2話

帰宅後1時間もしないうちに、相手から承認されたという通知が届いた。当日会うまで相手と直接やりとりすることはできないらしく、希望日時と場所を第5希望まで入力し、送信した。 「はや…」 すると直ぐに日時確定のお知らせが届いた。 4日後の20時30分駅前のカフェで待ち合わせということだった。よく見ると、相手の苗字だけが表示されていた。 「矢野」 最悪だ。 "矢野"が今思い描いている相手であると言う確証はないが、なんだか嫌な予感がした。というか、矢野という名字の人に会うこと、これから先一緒に生きていかないといけない可能性が僅かにでもある事がとても複雑だった。 「きもちわる」 先程まで食べていた完全栄養食のパンが胃からせり上がってくる感覚を覚えた。咄嗟に口元を抑え、トイレに駆け込み便器の中に全て吐き出した。 それでも吐き気は治らず、役所で貰った資料をめくり、何とか会わずに済む方法はないかとページを捲るが見つからない。それどころか会わないという選択は、スコアの減点につながると書かれている。 "スコア"なんて、なくなればいいのに。 生きづらい。苦しい。 溢れそうになる涙を堪えて、資料をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ入れた。

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