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②
『ちょっと待って下さい!…海って事は円サン、水着ですよね?』
いきなり険しい顔で、当たり前な事を聞いてくる昴クンに。オレは首を傾げる。
『それって…円サンが裸になるって事でしょう?』
いやいや、水着だけどね…。
つまらなそうに眉間に皺を寄せた昴クンが、
年相応でなんとも可愛くって。
そこまで言われて漸く質問の意味に気付き、
口を開こうとしたんだけど─────
『わっ…!?』
いきなり押し倒され、シャツを捲られて。
『俺は…円サンの身体を、誰にも見せたくありません…』
そう熱っぽい台詞と、ギラギラした視線に魅せられてしまったオレは。
あれよあれよと、服を根こそぎ剥ぎ取られてしまい…
『これなら、裸になんてなれないですよね…円サン?』
それはもうたっぷりと愛された後、
昴クンは満足そうにオレを見下ろして…そう言い放ったのである。
情事によって残されたのは、身体中に刻まれたいくつものキスマーク達。
Tシャツと水着で、ギリギリ隠せる位置を狙って付けられたソレらを隠すため…
こんな格好で泳ぐ羽目に、なってしまったというワケでした。
…まあ、嬉しかったけどね。
ヤキモチ妬いて、強引にエッチな事してくる昴クンも…さ。
(あ──…いかんいかん、こんなトコで昨日のコトなんか想像しちゃ…)
ちらほらとはいえ、他にも海水浴客がいるって言うのに。
昴クンとの濃ゆ~い夜など思い出してたら。
身体が反応して、大変なコトになっちゃうよ…ウン。
「遅いなぁ~昴クン…」
日陰に体育座りして、昴クンを待つこと10分。
ここからじゃ、海の家の様子はよく判らないけれど。
きっと混み合ってるんだろうと、
ぼんやり海を眺めながら待ちぼうけしていたら…
「円サン…」
「!あっ、昴クンおかえ─────」
砂浜に視線を落とし、砂いじりし始めたところで。
頭上から待ち人の声が聞こえて。
弾かれたようにすぐさま見上げると…
「昴、クン…?」
戻ってきた恋人の様子に、暫し言葉を失う。
「なんか、迷子みたいなんですけど───…」
困り果てたように告げる昴クンの、
腕に抱えられたモノ…
「んふふ~だぁいすき~!」
昴クンに遠慮なく頬擦りし、
ラブラブ光線を惜しげもなく放っているのは…
小さな女の子で。
「…えらく懐かれたね…。」
「ひとりでウロウロしてたんで様子見てたら、いきなり抱きついてきて…」
溜め息を吐きながら、ゆっくりと砂浜に少女を下ろすと。昴クンはその子に目線を合わせるようにしてしゃがみ込み、ニコリと微笑んでみせた。
「ね~おにいちゃん、おなまえは?」
「俺?スバルだよ。」
穏やかに答えると、
女の子はヘンな名前~と無邪気に笑い飛ばす。
「じゃあキミの名前は?」
「ルミはねっ、ルミちゃんだよ~!」
オレが年齢を問えば5才だと、手をパーにして答えたルミちゃん。
迷子のわりには泣き喚いたりする様子もなく、
少女はとても楽しそうに笑っていた。
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