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純愛《緋禄side》1

ゲームをしよう。 リセットしてしまえば簡単に忘れられる、 だから重く受け止めることはない、 そんなゲームを―… 「咲輝(サキ)!学食行こうぜ」 「緋禄(ヒトミ)、お前日直じゃなかったか?」 「あれ…次、実験室だっけ?じゃあダッシュで行って、食って、準備だな」 咲輝と俺は親友で、毎日一緒にいる。 この学園に入学してきたときから、咲輝とはずっと一緒だ。 出会いは中等部の入学式。 入学式が始まるというのに、園庭の芝生の上で寝てしまった俺を起こしてくれたのが咲輝だった。 「入学式が始まる」 茶色い髪を靡かせて、綺麗な顔で俺を見つめる。 ―…一目惚れだった 俺は咲輝がずっと好きだ。 「班分けとか、先生が考えてくれりゃいいのにな。日直が決めるとか面倒だぜ」 昼飯を食べ終えて、俺と咲輝は早目に実験室に向かった。 「先生が言うことなんだから仕方ないだろ」 「ま、そうなんだけど」 結局は先生が楽したいだけじゃん。 俺は実験室の黒板に席順を適当に決めてチョークで書いていった。 「仲良いやつ同士にしてやろっと」 咲輝は俺の一人言を無視して、席に座って読書をし始めた。 俺は座席決めに苦戦する。 「寺伝(ジデン)も咲輝と一緒がいいとか言いそうだから一緒にしとくか」 俺も、咲輝と一緒。 一緒がいい。 このまま一緒に、ずっと居られたらどんなに楽しいか。 ―…無理な話だけど 黒板の距離から、読書をする咲輝を見つめる。 こんなにもお前のこと、目に焼き付けておきたいなんて。 焼き付けて、保存して、忘れない。 忘れない思い出を作りたい。 「どうした、緋禄?」 「あ、いや、別に…」 咲輝が読書を辞めてこっちに近づいてくる。 「席順決めるの早いな」 「だいたいいつもの仲良しグループで分けたから」 黒板を見ながら、咲輝が感心してる。 近くにあるこの顔に見とれてしまう。 「咲輝、ゲームしないか?」 「ゲーム?」 忘れない思い出を作りたい。 俺にとっても、お前にとっても。 「恋人ごっこ」 そして俺は、首を傾げた咲輝の唇に自分の唇を重ねた。 一瞬の出来事に咲輝は驚いている。 「…なんてな。冗談」 わかってるよ。 お前を好きなのは俺だけ。 でも大事なのは俺が咲輝を好きってことで、 咲輝が俺を好きかどうかはいいんだ。 「忘れて、今の。そろそろ授業始まるし」 忘れて欲しくなんか、ないのに。 お前が好きだよ、咲輝。 ただ、それだけでいい。

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