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純愛Ⅱ-初夜編-《咲輝side》4

―数日後― 「あ、咲輝くーん」   朝、美術室から教室に向う途中で誰かに声をかけられた。 「山田先生。おはようございます」 「やっと一つになれたみたいだね。嬉しい。結局ゴムつけたの?」 「…緋禄から聞いたんですか?」 「そうなんだよね。色々相談されて。口でさせてもらえないって悩んでたよ」 「そんなことまで先生に。すみません…」 廊下でこんな話しをするべきじゃないのに、山田先生が止まらない。 「どうして口でさせてあげないの?緋禄くん汚しちゃいそうで嫌?恥ずかしい?」 「恥ずかしいというか…」 俺は口でされたくないわけじゃない。 むしろ、してもらえたら嬉しい。 けれど、させない理由が俺にはあった。 「口でされたら余計に興奮して制御できなくて、緋禄をめちゃくちゃにしてしまいそうなので…」 緋禄を大切にしたい。 自分の欲望のためじゃなくて。 緋禄の体を優先したい。 「わーお!愛だね、愛。もう本当に君たち尊すぎて俺がキュン死にしちゃう。死んだら哀沢くんに怒られちゃうから死なないけど」 ―昼休み― 緋禄と寺伝と3人で学食でランチ中。 俺の携帯に着信が入った。 「父からだ。悪い、先に食べててくれ」 「オッケー」   そう言って俺は席を外した。 『咲輝、元気か?』 「はい。個展おめでとうございます」 『ありがとう。今度祝賀パーティーがあるんだ。咲輝も出席しなさい』 「分かりました」 『ホテルで開催してそのまま泊まれるから、よければ緋禄くんも誘いなさい』 「はい」 父は過去に何回も個展を開催していて、いつの日だったか緋禄を連れていったことがあった。 そこで緋禄を気に入ってから、毎回祝賀パーティーに緋禄を連れてくるように言われる。 恋人ごっこを始めてから緋禄を連れていくのは初めてだな。 しかも最近は緋禄の体調が悪いときと祝賀会が重なっていて、父も緋禄に会えていなかったし。 今回は一緒に行けるといいんだが。 「二人とも、悪かった…大空?」 父からの電話を終えて戻ると、1学年下の大空がいた。 「前山先輩こんにちは!あの、口…」 「おーおーぞーら!!」 寺伝が大空の口を押さえて、制服を引っ張って二人でどこかに去っていった。 なんだ? 「口?」 「なんだろな?俺も分かんない」 寺伝と大空は仲が悪いと聞いていたが、見た感じそうでもなさそうだな。 席に座ると、緋禄が俺を見て問いかける。 「咲輝は、俺のこと大切なの?」 大切に決まってる。 俺はきっと、あの日園庭で寝ている緋禄に惹かれてしまったんだ。 人見知りである普段の俺なら、あの状況で絶対に声なんてかけない。 でも、話したくなった。 どんな声で、どんな表情で俺を見るのか知りたかった。 だから起こしたんだ。 「大切だよ」 もう、あの時から俺は―… 「そっか。俺たちは俺たちのペースで頑張ろうな」 「?」 「由輝さん何だって?」 「あぁ、今度祝賀パーティーがあるから緋禄も連れておいでって」 「え、行く行く!やった。スーツ用意しなきゃ」 この笑顔をずっと隣で見ていたい。 あの時も今も。 出来ればこのゲームの終わりなんて来ないことを、俺は心の中で祈った。

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