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第1話

可愛い動物に囲まれながらいつも通りの日常を過ごしていければいいや…とのんびり思っていた。 アレに出会うまでは。 その日も天沢冬夜(あまさわとうや)はいつも通りペットショップでの仕事を終えて家に帰ろうとしていた。 携帯で時間を確認していたが…ふと、駅前の広告に目が行ってしまいそれを見ると衝撃が走った。 そこに載っていた写真は男同士がキスをしている写真だった。 一瞬見間違いかと思ったが何度見てもそれは男性で同じ顔をしていて、凄く目が惹かれてしまった。 特に荒々しくキスをしているつり目の男性の方から目が離せなくなってしまい、冬夜は持っていた携帯で広告を撮るとその場から逃げる様に家へ向かった。 「ただいま」 玄関の扉を開けると靴をポイッと履き捨てて揃えることも無くリビングに向かった。 買ってきたコンビニの弁当を食べ終わるとすぐにパソコンを開いて写真を撮った広告からモデルを調べた。 すると出てきたのは双子の人気モデルで、そのまま冬夜は色々調べ続けた。 「えっと、霧生慶汰(きりゅうけいた)霧生鷹汰(きりゅうようた)はイケメン双子モデルとして人気なのか…しかも俺と1歳しか変わらねぇ!」 26歳の2人はかなり大人びていて、25歳なのに童顔で未成年に間違えられる冬夜にしてみれば羨ましさがあった。 絡み撮影は彼らのスタイルとなっており最近のBLブームに乗っかり、同じ顔同士が絡んでいるのが良いとされてかなり女性ファンが多かった。 「なるほどな…確かにイケメンだもんな…」 そう呟き、チラリと画面に写った慶汰を見て冬夜は頬を緩ませた。 別に冬夜はホモではないが、慶汰を見た時の衝撃は凄まじいモノで一目惚れというのに近かった。 「あ!そうだ!SNSとか確認しねぇと!」 携帯でSNSのアプリを開くとすぐに『霧生慶汰』で調べて出てきた公式のアカウントをフォローした。全く更新はされていなく寧ろ弟の鷹汰の方が更新をしていてそちらの方が慶汰のオフショットとかもあったので鷹汰もフォローした。 そこから出ている雑誌の情報や写真集の予約など、色んな情報が出てきて冬夜は片っ端から確認をしては買って、予約をしてと…毎日が慶汰だらけになっていった。 そこからは冬夜の毎日が色づいていった。 男がイケメンモデルのファンは流石にバレたら恥ずかしいのと嫌悪な目で見られるのではないかと臆病になってしまい店のスタッフさんや友人には言えず、周りには言えない趣味になっていた。 だが抑え切れない想いはSNSなどに全部ぶちまけていた。 それでも凄く楽しかった。 ----- 「いらっしゃいませー」 今日もペットショップで犬や猫の世話をしながら、お客さん達と世間話や質問を受けて、たまに理不尽な怒りをぶつけられていたが冬夜は気にしていなかった。 (だって!今日は慶汰さんが出る雑誌の発売日!鷹汰さんがSNSで告知していたし、終わったらすぐに買いに行かなきゃ…!!) 「あー、天沢くーん。ちょっといい?」 名前を呼ばれた方を向くと女性の先輩社員さんがちょいちょいと裏から手招きをしていて、冬夜は首を傾げた後に裏へ行き「どうしました?」と問いかけた。 すると犬や猫が入っているガラスケースを指されて、そちらを向くとマスクに帽子にサングラスと凄い怪しげな雰囲気を出している男性がペットの入ってるガラスケースをジッと見ていて、冬夜は「ひぇっ…」と悲鳴が上がってしまった。 「さっきからずーっとあんな状態なのよ…怖くて怖くて…」 「ね、熱心に見ているんですね…」 「ちょっと、天沢くん!声かけてきてくれないかしら」 まさかの事に冬夜は驚きを隠せなかったが、他の社員さんは女性だらけでもし何かあったら…と考えると冬夜は「わかりました…」と返事をしてから表に戻り、例の怪しい人物を見た。 まだジーッとガラスケースの中で動き回る猫達を見ており、冬夜はため息をついてからゆっくり近づいて声をかけた。 「あ、のー…お客様?何かお探しですか?」 「うぇ!?」 声を掛けられると思っていなかったのか、相手はびっくりして体を跳ね上がらせていた。周りを見回してから冬夜の方を見ると自分を指差しながら「俺ですか?」と問いかけてきた。 「えっと…熱心に見ていたので猫ちゃん飼いたいのかなーと思いまして…良ければご希望の子とかお聞きしますよ」 「あー、えっと…すみません、ただ見ていただけで…」 飼う気はないと分かると冬夜はすぐに謝罪をしてその場を去ろうとしたが、相手も何かに気づくとサングラスを外して、マスクを取って素顔を見せた。 その時、冬夜は「え…」と呟いてしまった。 「いやー、すみません…この格好じゃ猫ちゃん怖がらせますよね」 そう言って素顔を見せてきた彼は冬夜の知っている人物で冬夜の好きな人、人気モデルの霧生慶汰だった。 つり目でニッと笑うとチャームポイントの八重歯が見えて、冬夜は心の中で(嘘だろーーーーー!!!???)と叫んでいたのであった。

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