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第4話

「いやぁー、悪ぃな!いきなり誘ったりして」 「い、いえ、大丈夫ですよ!」 個室居酒屋に来た冬夜と慶汰は一緒にメニューを見ながらこれ食べたい、あれ食べたいと話をしていた。 しかし冬夜の頭の中はそれどころではなかった。 (あの人気イケメンモデルの霧生慶汰が目の前にいるんだが!?めちゃくちゃイケメンだし、良い匂いするし、腕とか首とかがっしりしているし、何よりイケメンだし!!??) こんな風に頭の中ではパニック状態になっていた。 「よし、じゃあ店員さん呼ぶな」 「あ、はい」 慶汰が店員さんを呼ぶと若く可愛らしい元気な女性が来て、それぞれアルコールと料理を頼んだが…女性は冬夜を見てから「すみません」と謝罪してきて2人は首を傾げた。 「年齢確認をしても大丈夫ですか?」 「………はい」 中学生と間違えられるくらい童顔の冬夜は年齢確認をお願いされるのはいつもの事だった。 チラリと慶汰を見ると笑いを耐えていて、ムスッとしながら免許証を出すと女性はまた謝罪をしてきて、去っていってしまった。 「…笑うことないですよね?」 「ごめんごめん、それだけ冬夜可愛いって事なんだろうな」 「っ…」 まさかの言葉に顔を真っ赤にして相手を睨んだが、相手は全く気にしていなくニコニコ笑っているだけだった。 お酒が来て、それぞれグラスを持つと「かんぱーい」と声を揃えてグラスをぶつけてごくごくと一口飲んだ。 「はぁ…美味しいな!」 「そうですね」 そのまま飲んでいると料理も運ばれてきて、食べつつ冬夜と慶汰は色んな話をした。 そこで仕事の話になり、冬夜はピタリと箸を止めてしまった。慶汰がモデルというのは知っているがあまり話したくないのでは?と思ったからだ。 だが酒も入っているのか慶汰はゆっくり話し出した。 「俺、大きな声で言えないけど…実はモデルやっていてよ」 「そ、それはすごいですね!」 知らなかった風を装って驚く振りをするが内心バレていないか冬夜は不安だった。 慶汰は全く気づいていなく話を続けた。 「双子の弟…鷹汰って言うんだけど…そいつと、ちょっと女性向け?の絡み撮影をしてて…」 そう言いながら携帯の画面を見せてきて覗き込むとそこにはこの間買った雑誌の写真とは少し違う写真で、冬夜は悲鳴を上げそうになったが何とか抑えてニッコリ笑った。 「かっこいいですね、慶汰さん」 「そうか?俺、優しい顔付きじゃねぇから鷹汰の方がめっちゃモテるんだよな…」 「俺は慶汰さんの方が好きです」 冬夜がそう言うと慶汰がいきなりバッと顔を逸らしてしまい、冬夜は目を見開いて驚いた。 「ちょっ、慶汰さん!?」 「いや、ちょ、今、こっち見んな」 「え!?何か不快にさせましたか!?」 「いやなってねぇよ!寧ろ嬉し……っ!」 大声で否定したのと同時に慶汰がこっちを見てきて目が合うと、慶汰の頬が赤く染っていることに気づき冬夜も顔を真っ赤にした。 「と、とりあえずよ!それより…鷹汰の話なんだが…」 「あ、はい!」 「鷹汰の奴…何か俺に対して…執着?みたいなのをしていてよ…俺は仕事は仕事なんだけど、鷹汰はこういう絡み撮影する時、本気っぽい感じがしてよ…」 まさかの大好きな推しの仕事話を聞けて嬉しさもあったが、少しモヤッとしてしまい冬夜は胸元をギュッと掴んで首を傾げた。 それに気づいた慶汰が「どうした?」と問いかけてきたが、冬夜は首を横に振った。 「なんでもありませんよ、しかし羨ましいです」 「羨ましい?」 慶汰はきょとんと目を見開かせて冬夜の言葉に首を傾げた。 「俺、兄弟も恋人もいませんから…そんなに愛されているのは羨ましいですよ、それに仲良しだから素敵な写真が出来るんじゃないですか?」 携帯画面を指しながら伝えるとじっと慶汰の目が画面を見ていて、少し考えてからフッと笑みを零してニッとトレードマークの八重歯を見せながら「そうかもしれね」と言ってきた。その笑顔に冬夜は写真を撮りたくなったが何とか我慢をすると冬夜もニッコリ笑った。 「しかし26歳で兄にベッタリもなー…」 「まぁまぁ、いつか離れるかもしれませんから。そう考えたら今のうちですよ?」 「…あ、なんか一気に離れること考えたら辛くなった」 目を抑える振りをする慶汰にクスクス笑い、楽しさもあって2人のお酒は進んでいった。 「おい、冬夜?」 慶汰が心配そうに声をかけたが冬夜は「ふぇぇ?」と甘えん坊の様な声を上げて蕩けた目で慶汰を見つめていた。 冬夜はまぁまぁ酒が弱く、友人と行くと何故かストップされる事があった。しかし冬夜は何故止められるのか分からなかった。 酒を飲んだ後の記憶がないからだ。 「へへ、慶汰さーん!」 向かい同士だったのを慶汰の隣に座ると相手の腕に抱き着き、すりすりと頬擦りをしだして慶汰は顔を真っ赤にして驚いた。 「ちょ、冬夜!?」 普段の冬夜なら推しには絶対に出来ない行為だったが酒を飲んでいてかなり酔っている冬夜は何が何だか分かっていなかった。 「鷹汰くんはずるいです、いつもいつも慶汰さんにいーっぱいキスされて俺だって慶汰さんからのちゅーが欲しいのに」 「え、ちょっと待て、冬…んむ!?」 慶汰が名前を呼ぶ前に冬夜は深く相手の唇に自分の唇を重ねた。 しかもそれだけではなく、舌を相手の口内に入れて舌同士を絡ませだして慶汰は無理矢理剥がそうとしたがびくともしなかった。 「んっ、ん…んぅ…」 「っ…ぷはっ!」 口が離れたのと同時に冬夜はばたりと倒れて慶汰の太腿に頭を乗せてすやすやと寝息をたてだし、そんな幸せそうな笑みで眠る冬夜を見て慶汰は「マジかよ…」と呟いたのであった。

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