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嫉妬-3-C-
「あっ、あ、ア……」
湯気に混じり嬌声が響く。シャワーの音とは違う、粘着質な水音が重なれば聴覚からも煽られてしまう。
バスチェアに座らされた恰好の洋佑は足を大きく開かされていた。設置された鏡に映る己の痴態に全身が赤く染まるが、佑の指は容赦なく洋佑を責め立てる。
バスルームへと入った後。椅子に座らされた洋佑の身体は佑によって「洗われた」。
ボディソープ塗れの掌が隅々まで肌を這い回り、足の指の間まで綺麗に泡が塗り付けられていった。それだけ見れば、普通に身体を洗っているようにも思えたかも知れない。が、佑の指先の動きは体を洗う動きとは明らかに違う動きで洋佑の身体を責め立てる。
ぬるついた指先で胸の突起を摘まんだり、抓ったり。かと思えば、首筋へとべたりと舌を押し付け、殊更意識させるようにゆっくりした動きで舐ってみたり。
直接に触れぬままに勃起させられた性器が身を捩る度に揺れる様を見せつけるよう、両足を開かせた状態で固定された時は羞恥で泣き出したくなった。
「……ぁ、も…十分、綺麗に……なった、から」
首筋を甘噛みされて胸が大きく上下する。ちゅ、と音を立てながら肌を舐られるだけで達したかのように腰が揺れた。
「……」
一度唇を離して、首筋を嗅ぐような仕草。そのまま耳朶を食まれて、また声をあげてしまう。
「……まだだめ」
呟きながら項を吸い上げる。
ずっと舌を這わせては吸いあげられた肌には無数の吸い痕と歯型。うっ血する程に深くはないものの、明日は確実に赤くなったままだろう。
「~~~~ッ、は…、……」
洋佑の性器には佑の指が絡みついている。根元をしっかりと抑えたまま、達しないようにと戒めたままだ。
「た、すく……いき、たい……」
体の中に溜まった熱を吐き出したい。精一杯の懇願に顔を上げると、広げた足を更に開かせるよう、膝裏に手を入れて後ろへと軽く引いた。
「…ぁ、……」
鏡の中。蕩けた表情で呆然と見つめる自分の顔。大きく開いた足の中心、勃起した性器とそれに絡みついている佑の指。
肩越しに微笑む佑に後ろから息を吹きかけられて、大袈裟に身体が跳ねる。
「ひッ…………」
同時にひくりと先端が震える。じわりと滲んだ白濁交じりの蜜が伝い落ちる様を見せられて、洋佑の全身が一気に赤く染まった。
「……洋佑さん」
感極まった様子でうっとりと名を呟かれる。羞恥と快感との限界に洋佑は唇を震わせた。
「お、ねが…も、…いかせて……」
声が震える。無言のまま、緩められた指。つ、と裏筋をなぞり上げられ、一際高く声を上げた。
「ひ──、ぅ…あ……アぁあ…───!」
飛び散った白濁が己の顎あたりまで飛んだ。きゅぅ、と下腹と後孔が震える。
汗と湯気で濡れた肌を伝い落ちる唾液と混ざり、身体の中央を伝い落ちていくものを追いかける動きで佑が指を滑らせた。
胸の中央。肉の薄い個所を撫でて臍まで滑り降りた指が、更に下へ。欲を吐き出した余韻に震える性器を持ち上げられると、大袈裟な程に身体をくねらせてしまう。
「……全部出して……」
「んぅ、…は、ァ……、あ、いった……ば、か……だめ……」
弱い懇願。だらしなく足を開いたまま、佑の胸に凭れかかった格好でうわ言のように呟く。
ぐ、と性器に絡めた指に力が籠る。残滓をすべて吐き出させるように何度も往復するうちに、新たな熱を集め始めてしまう。
「とろとろになった洋佑さん……本当に可愛い」
好き、大好き、と繰り返しながら抱きしめられる。自分も何か返したいと思うのだが、余力が全くなかった。
ちゅ、と繰り返し肌に口づけるリップ音と荒い呼吸だけが暫く続いた後、洋佑の息が少し整ったのを見計らってから、佑がシャワーで身体を流し始める。
「………たすく……」
名を呼ぶと、視線で返事が返ってくる。
「……俺……佑が欲しい」
汚れた下腹をそっと撫でる。何度か試してはいたものの、指だけでも中々受け入れることが出来ないままで、手を使ったり素股での行為にとどまっている。
ざー、と温かい湯が肌を流れていく。黙ったまま、身体を洗い流した後、シャワーを止めた。
「僕も…洋佑さんが欲しい」
後ろから抱きしめられて表情が緩む。
「10日あるし……ゆっくり、したら大丈夫だと……思うから」
言いながら声が小さくなってしまう。こればかりは自分の意志だけでどうとなるものでもなく。自分もだが、佑にも負担がかかるのではないかと言い淀んでしまう。
「うん。でも……無理はしないで、ね」
何度目かの念押し。分かってる、と頷き返すと、支えてもらって立ち上がる。身体を拭くのもそこそこに、ベッドへと向かうと端に腰を下ろした。
佑が用意してくれた枕を下敷きに、うつ伏せに寝転んで腰を高く上げる。枕へと顔を埋めて、もぞもぞと身動ぎながら姿勢を整えてから、顔を向けた。
「……いいぞ」
やや足を開いた格好で固定する。何もしなくても尻肉の合間にある後孔が外気に触れて、一瞬、小さく締まっては緩んだ。
何度かこうして試しているとはいえ、尻の間から嚢や性器が見えるこの姿勢は恥ずかしい。後ろで何をしているのかも見えないため、無意識のうちに聴覚に意識を集めてしまう。
ぎし、とベッドが軋んだ。潤滑剤の入った容器の蓋を開ける音、ねとりとした感触が肌を濡らす事に顔を埋めた枕を強く抱きしめる。
「……ん、……」
何度も指が尻肉の間を往復する。指先が窄まった個所に触れる度、腰が揺れて襞がきゅ、と締まる。
後孔回りの刺激に対しての快感を拾えるようになってきていることは、恥ずかしくはあるが、少しずつこの行為に慣れてきているようにも思えて複雑な表情が浮かぶ。
ぬちぬちと円を描くように襞を撫でていた指先が、つぷりと中へ埋められた。ほんのわずかの挿入なのに、ベッドが軋む程に身体が跳ねる。
「────ッ、……ふ、ぁ」
内腿が震える。痛みはない。が、慣れぬ挿入に力が入ってしまい、指先の動きを拒んでしまう。
「洋佑さん、深呼吸して」
無意識のうちに息を止めていたことに気づくと、ふぅ、と息を吐き出した。佑の言葉に従って、大きく息を吸い、吐き出す。
ず、ず、と少しずつ中へと入り込んでくる指の動き。半ばまで埋め込まれた指先が肉壁を掻く動きに、反射的に逃げ出そうとしてしまう。
「んんっ……、は、……ハ、……」
指の動きがとまると腰が揺れるのも止まる。それ以上奥へは進めないまま、指先で肉壁を掻いては円を描く動きを繰り返す。
「……苦しい?」
「……わ、か……ない。……中、入ってる……のだけ、わかる」
ずる、と指が引き抜かれていく感覚。抜かないで、と懇願する前に埋め直されて、一際高く声が上がった。
「アッ……あ、……ァ……」
ぐちゅぐちゅと音を立てながら掻き混ぜられる。今までは指先だけの挿入で諦めていたから、浅い動きとは言え、中を探られる感覚は初めてのこと。
未知の感覚に枕を抱き締めたり緩めたり、胸をシーツに擦り付けたり。
「……指、増やすね」
一度引き抜かれた後、今度は二本そろえて挿入される。
「~~~~~ッ……ぅ、……ぁ」
指に押し出された潤滑剤が肌を伝う。ぽたぽたとシーツに雫を落としながら、増やした指がばらばらに動いたり、先程のように抜き差しを繰り返したりと動きを変化させていく。
考える余裕がなくなる。ただ声を上げて体をくねらせていると、ゆっくりと指が引き抜かれた。
「洋佑さん……」
佑の声が変わる。ぴたりと押し当てられた熱に声もなく口が開く。改めて枕に顔を押し付けると、佑の両手が尻肉を開かせるよう添えられる。
「辛かったら…言って、ね」
佑の声が上擦っている。緊張しているのは自分だけじゃないのだと改めて実感すると、洋佑の顔に笑みが浮かんだ。
「……、た、すくのならいい……」
大丈夫と顔を向けると同時、ぐ、と中へ押し込まれる熱に体が跳ねた。
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