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気になる-2-C-
なんだかんだで週末。
剃った後に肌が痒くなったり、違和感があったりするかもしれない、と言われたので週末まで待ってもらった。
その間に佑が処理用のシェーバーやらなにやらを買っていたようだが、詳しくは聞いていない。自分のことだから自分で調べて揃えようと思っていたのだが、佑がやりたい、と言うので任せてしまう。
一応、処理の仕方や知識などは調べはしたものの、実際にやるとなると、それだけでは足りない部分もあるだろう。
なんだかんだで甘えっぱなしになっている気もするのだが、機嫌の良さそうな佑を見ていると、まぁいいか、と思ってしまうのは、意志が弱いのか、ただの惚気か。
そんなことを考えている間に時間は過ぎて──現在風呂場。
初めての時は時間がかかるかも、と言われたので、冷えないよう上にTシャツを着て、タオルを肩にかけた格好。佑も同じような格好だが、自分と違って下着を身に着けている。
「……え、と。じゃぁお願いします」
言われるがままにベンチカウンターへと腰を下ろす。足を開き、作業の邪魔にならないようにとTシャツの裾を持ち上げると、佑が少し驚いたように見つめた後、小さく笑った。
「……なんか、やらしい」
「やめるぞ」
ごめんなさい、と笑み交じりに詫びられて視線を逸らす。普段見られているから、それほど気にならないかと思っていたが、それとはまた別の感覚。
恥ずかしいともまた違う。何とも言えない感覚に洋佑は眼を瞬かせた。
「危ないから、動きたい時は動くって言ってね」
頷く。さわ、と指先が触れるのに横目でちらっと動きを確認してしまう。
佑の表情は先程とは打って変わって真剣なもので。最初に全体的に毛の長さを短くしてから、シェーバーで……と説明していた通り、小さなハサミでゆっくりと陰毛を整えていく。
ハサミの音に合わせて、落ちる毛の感触がくすぐったい。
「洋佑さん、一度払うね」
自分で経験済だからだろうか。擽ったい、と言う前に佑がぱたぱたとタオルで切った毛を払ってくれる。
この時点でもだいぶすっきりしたように思うが、まだまだ先は長いようで、佑は顔をあげないまま、次の指示を出してくる。
「足、あげて」
指示される通り。足を上げて更に開くと、足の付け根から更にその下へとハサミが滑る。指で陰毛を引っ張りながらハサミで切ると、はらはらと落ちていく毛の塊。
恥かしさや姿勢の苦しさよりも好奇心が勝り、いつのまにか逸らしていた視線を佑に向けて、その指が動くさまをじっと見てしまっていた。
ハサミが動くたびに毛が落ちる。他人と比べて毛深いかどうか、なんて気にしたことがないから、多いのか少ないのか……なんて分からないけれど。
足元に落ちていく毛の量に、こんな狭い場所に予想以上に密集しているんだな、なんて妙な感想が浮かぶ。
「洋佑さん」
一度佑の手が離れていく。あげていた足を下ろすと、またタオルで払ってくれた。一度、足元の毛を流してしまうから、と場所を移動するように言われて従う。ざー、とシャワーで床を流すのを眺めていると、佑がシャワーを止める。
「壁に向かって立って欲しい」
「え?」
何をするのか、と思わず見つめると、佑が困ったように笑う。
「後ろ……座ったままだと難しいから」
それもそうだ。
納得して壁に手をついて立つ。後ろに腰を突き出すように姿勢を変えながら、片手でTシャツの裾をまくり上げる。
「……まだ見づらい?」
果たしてどういう姿勢がいいのか。
最初に感じた羞恥心や好奇心、その他諸々の複雑な感情も今はない。単純に「佑が見やすい姿勢」を気にして姿勢を変える。
佑がこれでと望んだ姿勢で動きを止める。冷静に考えるとかなり恥ずかしい恰好だが、今の洋佑にそういった意識はない。ぐ、と尻肉を開かされ、冷たいハサミの感触にほんの少し肩が跳ねる。
今まで以上に慎重な動き。見ることはかなわないが、ハサミの動くペース、毛の落ちる感触がゆっくりなことでそれが分かる。
肛門の周囲だけでなく、陰嚢の裏側まで丁寧に指で触れられて、何とも言えない感覚。とはいえ、性的な目的でないことが明確だからか、生理的な反応を起こすこともなく。ただ、身動ぎすら気を使ってしまう緊張感に我知らず息を吐く。
ハサミの音が止まるまでどれくらい時間が経ったか。ぱちん、と音を立ててハサミが置かれる音。
「…………出来た」
ほっとしたような呟きに、洋佑も力を抜いた。が、すぐにまた触れられて、思わず後ろを見る。
「佑?」
驚いた動きに佑も驚いたらしい。びっくりした顔のまま洋佑を見上げている。
「今からシェーバーで綺麗にするから……もうちょっと待って」
そうだった。
思い出して姿勢を戻す。ぱたぱたと肌に当たるタオルの感触に息を吐き出しながら、ゆっくりと眼を閉じる。タオルが離れた後、シェーバーの駆動音が響く。
「動かないでね」
念押ししながら、再び尻肉を抑えられる。ざり、と肌に触れる感触に一瞬内腿が震えたが、痛みはない。ただ、シェーバーの駆動音とざりざりと剃られて行く感覚。
普段人目に晒さない場所。どころか、自分でも見ることない場所。そんなところに触れられて、毛を剃られている──
今更ながら、こみ上げてきた羞恥心にTシャツを持つ指が震える。知ってか知らずか、佑は丁寧な動きで作業を続けた。
「洋佑さん」
「え?ぁ、何?」
大袈裟な程に身体が跳ねたのを、どう思ったのか、佑が立ち上がって顔を覗き込んでくる。
「大丈夫?疲れた?」
心配そうな声に眼を伏せた。大丈夫、と小さな声で返す。
「続けても大丈夫?」
大丈夫、ともう一度頷く。壁から離れると最初と同じようにベンチカウンターに腰を下ろした。ざり、とまた毛の剃られて行く感覚。
先程まで意識していなかったのに、一度意識してしまうと何ともしがたい。丁寧すぎる動きでシェーバーを当てられ、剃り残しがないかを確認するために肌に触れる指の動き。
びく、と肩が跳ねてしまうのに、佑が心配そうに見上げてくる。
「痛いとかあったらちゃんと言ってね?」
「……っ、大丈夫、……な、んか。変な感触だな、って」
タオルで肌を払っている佑が分かる、と笑った。肛門周りや陰嚢周辺──特に神経を使う部分が終わったから、少し気が緩んだのもあるのだろう。
「最初は違和感あるよね……僕も何か落ち着かなかった」
そういえば佑は自分でしたんだよな。
刺激しないように陰茎を押さえながらシェーバーを動かしている姿を見下ろす。気持ちに余裕が出て来たせいか、肌に触れる指の動きを変に意識してしまい、妙な感覚を覚えて眼を瞬かせる。
やがて──シェーバーが止まる。
最後の仕上げとばかりに今まで以上に丁寧な動きでタオルで肌を払いながら、佑が首を傾げる。
「お疲れ様。大丈夫そう?」
言われて我に返った。最初にここに座った時とは全く別物になった肌。思わず指で触って確かめる。今までずっとあったものがないのは奇妙な感覚。
「痛いとかはなかったけど……こう、変な感じ」
佑を見ると、手にチューブを持ち、中のクリームを手に出している。
「佑?」
何をするのかとみていると、ぺたりと肌に塗り付けてくる。
「剃った後、手入れしないと……肌が荒れたりするから」
そういえば、そんなことが書いてあったような記憶もある。が、クリームを塗るだけなら自分でも──
「……駄目。洋佑さん、適当にしそう」
それを言われると反論できない。だが、ぬるついた指が肌を滑る感触。当たり前と言えば当たり前だが、陰毛がなくなったおかげで指が肌に直接触れる感触。毛の生えていた個所を丁寧に指で触れられると、別の感覚が呼び起こされてしまう。
一度終わった、時を緩めたせいもあるのかも知れない。今まで気にならなかった指の動きが妙に気になり、ひくりと震える下腹。気づいたのか、気づいていないのか、佑は指を動かし続ける。
「洋佑さん、足上げて」
言われるがまま。足を上げて大きく広げると、熱を覚え始めた性器が晒される。そのことが恥ずかしくて顔を横へと背けてしまうが、佑は気にする様子もなく、クリームを塗り続ける。
「──ん、っ……」
ひやりとした指の動きが気持ちいい。嚢の裏側へと指が入り込んでくると、大きく腰が跳ねた。
「あ、ばか……そ、んなとこ」
「駄目」
ぬるぬると指が動く。反射的に足を閉じようとするが、駄目、と佑に太腿を押さえられて動きが止まる。
「駄目、って言われても──」
意識しないように、と思えば思う程、逆に意識してしまう。震える性器の動きと、下腹のひくつき。
見えていないはずはないのに、佑は動きを止めない。ぬるついた指が奥へと潜り込み、確かめるように皺をなぞる動きに溜まらず腰を引いてしまう。
がた、と大きく音が鳴った。佑の動きが止まり、太腿を押さえていた手から力が抜けていくのに、洋佑はゆっくりと眼を瞬かせた。
「ごめ……」
口元を覆ってしまう。眉を下げ情けない顔で佑を見ると、佑も複雑な表情を浮かべていた。
「ううん……僕こそ。ごめんね」
肌を滑る指の動き。保湿用のクリームを塗る動きでなく、明らかに性器へと絡む動きに驚いて佑を見る。
「た、すく?」
すり、と肌を撫でる指の動きは明らかに快楽を引き出そうとするもので。驚きで動きを止めたままの洋佑を見上げながら、ぬちぬちと手の中の熱を育てようと扱き始める。
「……舐めやすそうだなって思っちゃった」
言いながら手の中、まだ半勃ちの先端へと唇を被せた。ぬるついた舌が這わされるのに、洋佑の顎が跳ねあがる。
「ぁ、ばか……、だめだってば……」
「ん……ごめんね。口でさせて」
しゃべりながら、ちゅ、と音を立てて舌を這わせ唇でなぞり上げられた。肌に触れるのではなく、足を開かせる動き。器用に片手で支えながら、洋佑のモノを咥え込んでいく。
「……ぁ、…ふ……」
洋佑の手が反射的に佑の頭を押さえるように。一瞬髪を掴んだ指をすぐに緩められ、頬へと撫で下りる。
「ごめ、痛かった……?」
気遣う指の動きに佑は嬉しそうに笑うと、一度口を離し、頬を手に押し付けるように。
「大丈夫──もっと掴んでもいいから」
言い終わると、再び唇を寄せてくる。頬を撫でていた手を離すと、更に足を大きく開いた後、迷う間を置いてから、自分で自分の足を抱えるように姿勢を変えた。
口で奉仕を続ける佑の眼が僅かに見開かれる。視線を合わせていることが出来ず、顔を背けて眼を閉じた。
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