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数日後、姫宮が住むマンションの下に御月堂の命で迎えに来た車に乗り、製薬会社に向かう。 車中、携帯端末を弄る用事もなく、暇潰しに窓の外を見やっていると、ある男女が目に映る。 女性の方は男に顔を向けていたこともあり、姫宮からはどんな女性なのかは分からない。 が、そんなことは全くもって関係ない。 問題は男の方だ。 あの時と髪型が違っていたが、女性に笑いかける顔には見覚えがあった。 『愛賀(あいが)』 優しく呼ばれた声が聞こえてくる。 車だから一瞬しか見れなかったのに、見慣れた顔のせいで、目を閉じても脳裏に焼き付いた顔が浮かぶ。 じゃあ、あの男が手を繋いでいた子どもは⋯⋯。 「姫宮様、どうされました!」 路肩に止めていたらしく、配属の運転手が座っていた側のドアを開けてきた。 その時、一気に現実に引き戻された姫宮はハッとなり、居住まいを正した。 「いえ、少々具合が悪くなりまして。ご迷惑をおかけしました」 「とんでもございません。車酔いをされたのですね。でしたら、少し車を止めておきますよ」 「大したことではございませんので。私のせいで御月堂様の貴重な時間を割くわけにはいきません」 「ですが⋯⋯」 人並みに心配している様子の運転手に微笑を浮かべた。 それで一応納得したらしい運転手は、「何かありましたら、遠慮なく仰って下さい」と引き下がり、運転を再開した。 気づかない程度のひと息を吐き、遠い目をしていた。

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