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すると、二人は何故か信じられないと言いたげに目をひん剥いたのも一瞬で、お互いの顔を見合わせたのも束の間、再び姫宮に見せた表情は、真面目腐りきっていた。 「お騒がせしてしまい、大変申し訳ございませんでした。姫宮様自身で歌われることも良いことでございますが、ずっと歌ってましたら、喉を痛めてしまいます。動画アプリなどで聞かせるのも手だと思います」 強めの口調で「推奨します」と言われ、迷惑をかけてしまったのだろうと思い、これ以上何かを言っても仕方ないと「······分かりました」と息を吐くような言い方で返した。 第一印象が悪くないと思ったのは、御月堂の秘書である松下の前であったから、悪い態度を見せなかったのだろう。 オメガである自分が良く思われるはずがないのに。 「ゆっくりなさっている所をお邪魔しました。改めて昼食になりましたら、呼びに来ますので、もうしばらくお待ちください」 「はい」 安野らは先ほどの部屋から出て行く時と同じような動作をすると、部屋を後にした。 「······」 ポケットから携帯端末を取り出し、検索アプリから動画サイトにアクセスし、姫宮が歌おうとしていた曲を再生した。 自然と、しかし、曲に紛れるほどの声量で歌った。 これなら何も言われない。大丈夫。 そもそも自分の喉が潰れようが、誰か心配するわけも、大した話をするわけもないのだから、どうでもいい。 でも、お腹の中ですくすく育っていく子と話はしたい。 リストの中にも、"胎児に話しかけること"とあったからのもあるが、自分に話しかけてくれる者はこの子しかいないから。 「······大きく、元気に、育ってね」

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