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第2話

 会社で働いていた時、ユイトには恋人がいた。もちろん相手は男。同じ部署の先輩で、優しい人だと思っていた。とっても大好きで、離れたくなかった。おおっぴらにできない関係でも、ユイトは幸せだったのだ。 しかし、ある日その恋人から突然別れを告げられた。父の死から一カ月ほど後のことだった。父を亡くしてまだ気持ちの整理も付いていないと言う時に、別れを告げてきた彼もどうかと思う。ユイトは精神的に追い打ちをかけられ、自暴自棄になりかけた。 だが、優しい母に諭された。恋人に新しい相手でもできたのかと聞かれたので、「まぁ、そんなとこかな」と曖昧に告げただけに留まった。  それから、同じ部署に彼がいることが気まづくて仕方がなく、その上ユイトがその彼と付き合っていたとどこからか噂が流れてしまったのだ。それでますます居づらくなり会社を退職したのだ。これから稼がなければと思っていた矢先だったが、ユイトは耐えられなかった。  それから、家族のためにも何とか稼がなければと思い、ユイトは当てがあったわけでもないが、都心にやってきた。東京に来れば、稼げると思ったから……。 職探しをしていて、気分転換にバーで飲んでいると、最初に入店することになったホストクラブのオーナーに声をかけられたのだ。 そこで、もしかしたらかなり稼げるかもしれないと考え、藁にも縋る思いでホスト稼業を始めたのだった。稼いだ金は多くを実家に仕送りしている。ホストと言うと、たんまり稼いでいて蓄えられると思われがちだろう。しかし、『一千万円プレーヤー』と呼ばれる者がいる一方で、売れなければさほど稼ぎが良いわけではない。ホストだけの収入では足りず、犯罪まがいのことに走ってしまう同業者も一握りではあるが、中にはいるのだとどこかで聞いたことがあった。  ユイト自身も、華やかな世界の中にいるとは言え、慎ましい生活をしていた。 ホストクラブと言うと、容姿に優れた男も多くいるから、ゲイであるユイトにとっては天国のようにも思えるかもしれない。しかし、ユイトは心に壁を設けていた。地元で恋人に捨てられてから他人は信用しなくなっていたから、イケメンがいようが関係ないと思っていた。体の関係も持てなくなった。  さらに、ユイトは営業時に表情や心に仮面を被り、演技をしているのだ。本来の自分とは全く違う、華やかな雰囲気を纏い、紳士的に女性を扱う『鳳城蓮』を完璧に演じていた。周りのホストからは「俳優蓮」と言われるほどだった。

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