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おまけ2 愛しの先輩

 俺の先輩。鈴木一太先輩。  面倒見が良くて、面白くて、優しい。お兄ちゃんタイプなのかな、と思っていたら、やっぱり弟が居た。俺にも兄は居るけれど――ちょっと、『兄』って感じとは違う。  アイドルをやっている兄、栗原亜嵐は、同じ日に生まれた双子だ。そのせいなのか、本人の資質の問題か。亜嵐は甘えるのが上手く、要領も良い。可愛がられる。何をやっても俺より『少し出来ない』。結果として両親からの愛情を、俺よりも上手く貰っていたように思える。まあ、俺の被害妄想かも知れないが。  と、まあ。亜嵐のことはさておき。  俺は今、この頼もしくも可愛い先輩、鈴木一太さんと――付き合っている。 (可愛い)  横目で、キラキラした瞳で漫画を読んでいる一太さんを見る。一太さんはボーイズラブというジャンルの少女漫画が好きな、腐男子というものらしい。……なぜ腐という文字が入っているのかは不明だが。  最近は俺も読んでいるが、なかなかどうして、面白い作品が多い。ハッキリ、俺もハマったと言って良い。 (まあ、生き生きしてる一太さんが可愛くて、そっちを見る方が好きなんだけど)  一太さんが「これがねっ」とか「ここが良くて!」とか、力説する姿が可愛い。そういう姿を見ているだけで、自然と笑みがこぼれてしまう。  一太さんは自分を『モブ』だとか、『壁際男子』とか言うけれど、そんなことはない。顔立ちは可愛い系だし、スタイルも悪くない。猫背だけど。  自分がいかに魅力的で、素敵な人間なのか、一太さんは解ってない。俺は一太さんこそ、他の人に狙われないか心配なのに。俺は顔が良いと言われる方だけど、結局は『栗原亜嵐の弟』だ。俺は俺なのに、偽物みたいな扱いをされることの方が多い。一太さんは、そんなことをしない。俺の方が良いと、言ってくれる。  一太さんが本を片手に、お茶請けに買ってきた焼き菓子に手をのばす。モグモグと口を動かす姿に、ほっこりと胸が暖かくなった。 (可愛い……)  一太さんにはナイショだが――。一太さん、俺が昔飼っていたハムスターに似ている。(言ったら怒られそうだ)  名前はハム太。  ハム太を思い出して、可愛いなーと思ってたら、いつの間にか恋愛感情になっていた。 「ん? どした?」  一太さんが小首をかしげて、焼き菓子を差し出す。それをパクンと食べると、一太さんは恥ずかしそうに顔を赤くした。 「可愛い」 「あ、あのなあ」  腕を引っ張り、唇を奪う。ふに、と柔らかな唇の感触を味わい、舌を味わう。 「あ、ん……」 「……甘いね」 「ん……」  瞳を潤ませる一太さんに、欲望がむくりと起き上がる。ダメだ。可愛い。  ぐいと腕を引き、ぎゅうっと抱き締める。首筋に顔を埋めて、一太さんの匂いを吸い込む。 「わ、風馬っ」 「一太さん……」  ちゅ、と首筋にキスをしながら、一太さんの手から本を奪い、テーブルに置く。一太さんはピクンと身体を跳ねらせ、可愛く震える。  反応に、ゾクゾクする。この可愛い人を俺の好きなようにさせて貰えるという背徳感が、じわじわと沸き上がる。 「一太さん、ベッド、行こう」 「っ、……」  小さく頷くのを確認して、内心嬉しくなるのを押し隠す。カッコ悪いけど、メチャクチャ嬉しい。一太さんが応えてくれるのが、堪らない。 「一太さん、好きです」 「……俺も」  俺は一太さんの身体を抱き寄せ、ベッドに横たえると、その上にのし掛かった。

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