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ーー俺だって、ずっと綾人くんのことが好きだった。
でも俺には、綾人を好きだなんて言う資格はない。弱みにつけ込んで、脅しているのだから。
だからなんとしてでも、この気持ちは隠さなければならない。
二人の間につけ込む隙なんてないと、俺は初めから分かっていた。仁と綾人はずっと前から両思いだ。二人の気持ちに気付いた時から、俺はそんな二人をこっそりと見守っていた。
だが、幼い頃から二人を見てきた俺には分かる。告白する度胸もない二人が付き合うことは、今後絶対にない。
告白もしないくせに綾人との距離が近い仁を、いつも羨ましいと思っていた。仁はずるい。俺の気も知らないで。
二人の気持ちに気付いてから、俺の思いは胸の奥にしまっておくことにした。だがなかなか縮まらない二人の距離にもどかしくなり、何度か仁に綾人のことを問いただした時だって、仁は顔を真っ赤にしながら綾人への思いを否定していた。
昨日、その場のノリで仁をからかった時もそうだ。
ーー仁くんが、そんなんだから悪いんだ。
早く綾人くんを自分のものにしておけば、俺は綾人くんに手なんて出さなかったのに。
綾人が自慰をしていた時、とんでもなく興奮した。普段そんなことを考えなさそうな綾人が、俺よりも小さく細い手で、おぼつかず慣れない手つきで、健気に自分を慰めている姿が可愛くて堪らなかった。
そんな綾人の姿から思わず目を離せずにいた時、びくびくと体を震わせてイきそうだった綾人は、仁の名を甘く呼んだ。
その時、俺の中の何かがプツンと切れる音がした。
ーーもう、いいか。我慢しなくても。
『ーーへえ。綾人くんって、オナニーする時 仁くんの名前呼びながらするんだ?』
我ながら最低だと思った。どうせ付き合えないならいっそ体だけでもと、俺は半ばヤケクソになってしまっていた。
でも、一度手を付けてしまうと止められなくて、今まで我慢していた綾人への欲求が抑えられなくなり、溺れるように綾人に夢中になっていった。
ーー綾人くんを、俺のものにしたい。仁くんに渡したくない。
そんな思いばかりが、大きくなっていった。
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