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1枚目の手紙

遺書。 遺書という名の、これは手紙です。 ラブレターです。 きっと読まれることのない、ラブレターです。 今日はとても空が青くて、陽射しが眩しよ。 テツは今日も、陸上部で走ってる? ねえ、覚えてる?小学生の頃は、俺の方が走るの速かったんだよ? あっと言う間に、色んなことが、テツに追い抜かれたけど、 でもテツの背中を見ているのは好きだったから、悔しくはなかったよ。 できればずっと、見ていたかったな。 ずっと、思い出を積み重ねたかった。 いつも、俺の歩幅に合わせて歩いてくれる横顔。 勉強を教えてくれる時、教科書をめくる節ばった指。 お気に入りのシャーペンを俺の制服のポケットに挿して笑ったこと。 病院の屋上でお祭りの花火大会を見たこと。 薬の副作用で吐きそうになった俺の背中をいつまでも撫でてくれたこと。 忘れない。 たぶん、今年の夏はもう、花火が見れないと思う。 でもテツは毎年「来年も一緒に観よう」とは言わなかったよね。 ずっと、俺を忘れないで。 だけど、俺を忘れて。 さっき大きな発作がおそってきた。 俺は死ぬんだと思う。 近いうちに死ぬのだと思う。 そう思ったら、少しだけ、悔しくなった。 でも俺はテツの幸せを願ったまま逝きたいから やっぱり、俺を忘れてね。 好きだよ。 この遺書と言う名のラブレターは、誰にも読ませる気がないから、 言わせて欲しい。 好き。 きっと、この先、テツの生が終わるまで、俺以上にテツを好きになる人はいないと思う。 テツ、幸せになってね。 死にたくない。 花火を誰かと見るの? 晴れるといいね。 俺はいなくなるんだなあ。 死にたくない。 助けて神様 好きだよ、 怖いよテツ ごめんね。

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