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番外編 とある夏の一コマ(2)★

「勉強はいいの?」  そっと唇を離すと、陽翔が囁くように問いかけてきた。 「いい……気分転換も必要だろ」 「親いるのに?」 「静かにしてりゃバレねーよ」  智也はそう返事をしてシャツを脱ぐ。それから陽翔の服も脱がせてしまい、素肌を重ね合わせた。  ほんのりと漂う制汗剤の香りに混じって、汗ばんだ匂いが鼻腔をくすぐる。  そのことに興奮を覚えていたら、陽翔が抱きかかえるようにして体勢を変えてきた。今度はこちらが押し倒される形になり、期待と緊張が入り交じって心臓が激しく脈を打つ。 「っふ……」  耳朶をねっとりと舐められたかと思えば、首筋、鎖骨と対象が少しずつ下へと変わっていく。やがて胸元へと辿りつくと、そこも同じように舐められた。 「ちょっ、だから……そこは感じねーって」 「でもこの前、気持ちよさそうだったよ?」 「ん、ぁ……っ」  陽翔が上目づかいで見上げてきて、今度は先端に歯を立ててくる。すると、途端に智也の口から甘い声が漏れた。  そこは弄られているうちにツンと尖りを見せ、むず痒い痺れが広がっていく。自分でもよくわからないまま体が反応しているようで、智也は戸惑いを覚えた。 「おっぱい、ぷっくりしてきちゃったね……やらしい」  赤く充血した乳首を目にして陽翔が呟く。  羞恥心が込み上げてきたが、智也の体はすっかり鋭敏になっていて、それどころではなかった。むしろ、もっと触ってほしい――欲求に突き動かされるように自然と口が動く。 「なあ、ハル――」 「うん?」 「……もっと」 「もっと、なに?」  わかったうえで聞いてくるとは意地が悪い。  そう思いつつも、智也が素直に答えようとした、そのときだった。廊下を歩く足音が聞こえ、ドアがノックされたのは。 「ねえ二人とも~、お姉ちゃんがケーキ買ってきてくれたんだけど――」  母親の声だ。智也は急いで返事をする。 「い、今忙しいから後で!」  妙に大きな声が出てしまったけれど、母親は「はいはい」と返事をして去って行く。  ホッと息をつくも、すっかりそういった雰囲気ではなくなってしまった。 「あーやめだ、やめ。なんかシラケちまった」 「あはは……やっぱ家に誰かいるとドキドキするね」  仕方なしに身を離して服を着直す。落ち着いたところで、陽翔がぽつりと言った。 「やっぱ俺、高校卒業したら一人暮らししたいなあ。そしたら智也のこと好きに呼べて、いくらでもイチャイチャできるし」 「いや、家出る理由がイチャつきたいからってどうなんだよ」  苦笑しつつも智也は内心で思う。それも悪くない、と。  二人はフッと笑い合って部屋を後にしたのだった。

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