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第8話 解放 ーENDー

 ―――1年後… 「私の妻はどこだ?!」  アンダルは剣と装着用のベルトを外して、ポイッ…! ポイッ…! と放り投げるように執事に渡しながら、妻の居場所をたずねた。  愛する妻のために近衛騎士団を辞めて、東方騎士団の団長となったアンダルは、面倒な執務を副団長に押し付けて、大あわてで自宅へ帰って来たのだ。 「あ! お帰りなさい、旦那様! 今夜は帰りが早いね!」 「ただいま、アスピラル!」  長男を出産したばかりの妻を、家族用の居間で見つけ… 満面の笑みを浮かべて、アンダルは唇にキスを落とす。    いったん唇を離し子供ごと妻を、自分の(ひざ)に乗せると、再びアンダルは熱烈にキスをする。 「んんっ! ちょっと、旦那様! もう、子供の前でダメだよぉ~!」  プクッ… と頬をふくらませて、妻は怒りながら… もっとキスして! とねだるように可愛らしく唇を(とが)らせる。 「大丈夫さアスピラル、この子はまだ理解できないよ」  アンダルは妻にチュッ… チュッ… とキスを続けた。  ひまさえあれば、夫のアンダルはこの調子で妻を可愛がるのだ。 「もう! せっかく眠ったのに、ほらぁ~! ブリンダールの可愛いおめめが、パッチリ開いているよぉ~!」 「ああ本当だ! 悪かった… すまないブリンダール、さぁ、ねんねしなさい」   アンダルは妻が抱く、(つや)やかな黒髪とパッチリ開いた深緑色の瞳の美しい子供の頬にもキスを落とした。 「ふふふっ… もう~! いけない人ですね、旦那さまったら!」  妻のアスピラルは、夫の顎にキスをする。 「この子は幼い頃の、ペルデルセにそっくりだ」  (とろ)けそうな甘い笑みを浮かべて、妻の耳元でそっと夫は(ささや)くと… 「そっちの名前は言ってはダメだよ、旦那様!」  妻は夫の耳をカプッ… と噛んでひそひそと注意する。  ペルデルセの兄メディシナの独断で、学園時代の友人だった、エスタシオン王国のプラサ王との間で…  ペルデルセを病死に見せかけ、後宮から解放してサルド王国へ帰してくれたら…  エスタシオン王国側に有益な貿易に関する契約を結ぶと、秘密裏に約束を交わしていたのだ。  薬草茶を飲み、深い睡眠状態に入ったペルデルセを、エスタシオン王国まで迎えに行ったアンダルが引き取り、サルド王国まで連れ帰ると…  第二王子メディシナの指示通り、アンダルは友人の侯爵に、いったんペルデルセを預けて養子にしてもらい、ついでにその時王子の名を捨て、アスピラルに改名したのだ。  王都ではペルデルセの美貌を知らない者はいないが、地方の田舎ならば、ペルデルセの顔を知らない者の方が多い。  そこで、アンダルは近衛騎士団を迷うことなく辞めて、領地がある田舎の東方騎士団へと入団した。  そしてめでたく結婚に至る。  ー END ー  このお話の命名は、スペイン語にお世話になりました。 ペルデルセ王子→道に迷う。 初恋の騎士アンダル→歩く。 兄王子メディシナ→薬。 プラサ国王→広場。 従者アバホ→下。    面白い響きの名前ばかりになりました(*'▽')    ここまで読んで下さり、ありがとうございます☆彡  また、どこかでお会い出来れば幸いです!

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