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第108話 昼・Ω会議 3

「あ、そだ、言ってなかった。 そうなんだよ、なんか突然うわーってなっちゃって……」 「いつ来たの? 巣作りしてた時?」 「ううん。オレ、巣作りしてた時は、すごくのどかな気分で、寝ちゃったから……えーと……なんか、颯が帰ってきて、巣作りがバレて……見つめ合った時、かな? 颯の匂いがして……」 「ああ、もうそれは、颯のせいで起きたヒートって感じ?」  啓太がニヤニヤしながらオレを見つめてくる。 「ん…… 多分、そう、かな。そんな気がしたし、颯も、そんなようなこと、言ってたような……」 「何て言ってた?」 「え。……えーと……慧のヒートは、オレに反応して起きる、みたいだな、とか。なんかそんなようなこと、言ってた」  そう言うと、皆はますますニマニマ笑い出して、奈美と紗良が顔を見合わせる。 「颯くんは、慧くんが可愛くてしょうがないだろうねー。いいなあ、私も番が出来たら、慧くんみたいにしよう~」 「ほんと~そう思う」  オレみたいに? ……って、どれのこと?  よく分からなくて首を傾げると、皆、ぷ、と笑う。  奈美がオレを見つめて「嘘嘘」と首を振る。 「慧くんは、慧くんだから可愛いのは分かってるー」  クスクス笑いながらそんな風に言われて、んー、とまだ考えながら、ご飯をパクパクほおばっていると、啓太がオレの顔を見つめる。 「αの慧には、可愛いとか言う奴居なかった?」 「……うん」  めちゃくちゃコクコク頷くと、啓太は苦笑いを浮かべた。 「まあ、αのツートップの片割れに、そんなこと言う奴居ないよな」  そう言った圭太に、紗良も頷く。 「私も、慧くん可愛いなって思ってたけど、言わなかったかも」  そっか、と頷きながら、確かにαには可愛いなんて言わないか、と思っていると、奈美がクスクス笑った。 「なんだか不思議だね。カッコイイって言われてたαの慧くんなのに、Ωになって、颯くんと居ると、ずーっと可愛いって気がする」  そんな風に言われて、オレは、「別にずーっと可愛くはないと思うんだけど」と、返す。  そのまま、ご飯を食べつつ、んー、と考える。  ……よく分かんないけど、オレが今、可愛いとしたら。  颯が、最初っからずっと、可愛いって言ってくれたから、な気がする。  カッコつけなくてもよくて、普通にしてて、可愛いって言ってくれるなら、それで嬉しいかもって。……可愛いって、言われること、嬉しいって、颯が思わせたから。かも。  ……とか言っても、どれが可愛いって言われるのかは、全然分かんないけど。この三人が言う可愛いも、いまいち、よく分かんないしなぁ……。  そんなことを考えていると、紗良が、オレを見ながらクスクス笑った。 「慧くんはいっつも、可愛いって言われるの不思議そうだけどね」 「……うん」 「でも、あんまり考えないで、自然で可愛いのがいいんだよね」 「……そうなの?」  てか、オレ、可愛いって言われてるの、ほんと、Ωになったここ数週間だけなので……。ほんと全然分からないんだよな。 「……別にオレ、見た目、変わってないよね?」 「うん。変わってない」  奈美が即答。二人もご飯を食べながら、うんうん頷いている。 「別にオレ、華奢になりたいとか可愛くなりたいとかはないんだけど……ていうか、無理だと思うし。骨格とかさ、そういうのは」  うんうん。三人は頷きながら、続きを待ってる。 「……なんとなく、颯とお似合いーて感じには、見られたいなぁって」  んー、と考えながら言ったオレのセリフに、紗良と奈美の二人が、突然、超楽しそうに顔をキラキラさせてくる。 「……? な、何?」  思った以上の反応に、ちょっと退きながら聞くと、紗良が笑う。 「こないだ飲んだ日に、お泊り会するって言ってたでしょ? その時話してたの」 「何を?」  楽しそうな紗良に、首を傾げる。 「慧くん、αの時のままだからね、全然それもカッコよくていいんだけど。ね、奈美」 「そうそう。ちょっと見た目可愛い化計画はどうだろうって、勝手に色々話してたんだよね~」 「って、もちろん、今もうすでにたくさん可愛いんだけどね~」  紗良と奈美がやたら盛り上がっているので、啓太を見ると。 「色々、服とか髪とか、可愛くいじりたいって、二人確かに騒いでた」  クスクス笑ってるので、オレは、見た目可愛くって言ってもなぁと、思わず苦笑。

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