215 / 216
第213話 きっとずっと【完結】
ちょっと、寒い……。あれ、オレ、ベッドに居る……。いつのまに?
――ベッド、颯、居ない……。
少し体を起こすと、下着だけになってて、毛布にくるまれていた。颯の匂いのする、毛布。
「――いい、におい……」
そう思ったけど、颯が、居ない。
毛布にくるまれたまま、のそのそ、と起き上がって――ウォークインクローゼットに入ったのは、覚えてる。でも、なんか、その後の記憶は、飛んだ、みたい。
次に目が覚めたのは、「――何これ……ヤバいな……」と。そんな声が、聞こえた、ような。んん。体、だるい。なんか頭、ぽわぽわ、してて。目が開かない。
かしゃ、と音がした。ん。何の音……。
「……なんでこんなに、死ぬほど可愛いのかな……」
……んん。何……? すぐに「慧」と、颯の優しい声がした。
「慧、ベッド、行こ」
「――うん……」
お姫さまにするみたいに、やさしく抱き上げられて、オレは、颯の首に手を回した。颯が、くす、と笑う気配がした。
優しい笑い方。大好き。
すぐに、ゆっくりと、ベッドに降ろされた。
そのまま、颯の重みが、体にかかる。
「慧――抱いても、平気?」
そっと、頬に触れる手。抱いても――。抱いても、平気って……聞かれてるの?
オレは、やっとのことで、瞳を開けて、上に居る颯を見た。
熱を持て余してるみたいに、自分のボタンを外していく。むき出しになってく、颯の、体。
「……いつでも――平気」
じっと見つめて、そう言ったら。颯の、その瞳から伝わる熱が――オレの心の中に、火を灯していくみたい。
ゾク、と、体の奥が、疼いて――自分から、ふわりと舞うフェロモン。
「めちゃくちゃ――可愛がって、いい?」
そんなセリフだけで、ゾクゾクする。
唇が重なって、激しく、キスされる。
胸に触れられて、乳首を捏ねて、摘まむ。どんどん、体の熱が上がる。舌が深く差し込まれて、息、苦しい。でも、熱くて――頭のなか、すごく、気持ちいい。擦りあわされるみたいに絡む舌から、颯の唾液がオレのに混ざって、口の端から、溢れる。
「ん、ふ……、ン……」
少し離れようとしたら、後頭部を押さえられて、もっと深く重なった。
「ん、ん……」
気持ちよくて、頭が真っ白になっていく。
颯の瞳に見つめられるだけで、イきそう。それでも、視線は逸らせない。
首筋に舌が這って、びく、と震える。指は胸。
肝心なとこ、触ってくれない。
「……んン……」
自分で触っちゃおうと、手を下に、もぞ、と動かしたら。
「ダメ」
「……っふ…… なんで……?」
「――死ぬほど、可愛がるって、言ったろ。まだ、待ってて」
「……っ」
体中、舐められて、甘く噛まれる。熱くて熱くて。自分の体から発せられる熱。颯がいい匂いすぎてもう、ゾクゾクしびれる。
濡れ切ってる中に指が入ってきて、気持ちいいところを、暴いてく。きゅうきゅうに、颯の指を締め付けると、よけい、気持ちいい。
「……はゃ……て……」
お腹の奥が疼いて、きゅんきゅんして、颯の肩に縋る。
「――慧……可愛い」
脚を大きく割られて、奥を指で抉られる。颯の綺麗な指が、オレの中にあるって、思うだけで、なんだかもう、たまらなくなる。
「あ」と声が上がって、びくん、と大きく震える。触られてもないのにイっちゃって、かぁっと赤くなると、ちゅ、と頬にキスされて、そのまま、また舌を奪われる。
気持ちいいしか、無い。キスに意識を持っていかれてる間に、準備されてた、颯のがオレの中に突き立てられた。
「……っあ、あ……んん」
――またイッちゃった。……やば。これ。
「……待って……っ……ちょっと……止まっ……」
涙が滲んで霞んだ視界の先で、オレを見た颯が、ふ、と笑った。
「ひぁ……っ!……っ……ぁ、……」
深く深く、入った颯が、そこで止まる。きゅ、と締め付けると、「っ」と颯が、声にならない声を、出した。
ぎゅう、と抱き寄せられて、ふ、と息を整えてる、颯が、壮絶に色っぽくて。
もう、体も心も、きゅんの嵐で。
もう、無理。好きすぎて、無理。大好きすぎて、辛い……。
ぽろ、と涙が溢れた。
「……はやて……」
「――ん?」
オレを見た颯が、涙を舐めとる。
颯の体、すごく熱い。汗ばんでて、いい匂いで。
「……颯の……」
ちょっと下に目を向けると。興味が湧いて、そろそろと、お腹に触れる。
「……中に、颯が、いるの――――大好き……」
颯、返事をしてくれないけど。
「ずっと……してたい……くらい、好き……」
思うことを、そのまま伝えて、颯の顔を見上げようとした瞬間。
いきなり、さらに奥まで、突き上げられた。
「ひゃ……っ……あ……!!」
――わ、や、ば。
まともに、何も考えられなくなる。
イきっぱなしみたいな感覚に襲われて、真っ白になって。
なのに、快感だけ。颯の熱と匂いだけは、はっきりしてて。
「……っあ……っン……っ」
「腰、動いてる――気持ちいい? 慧」
「……っん、ん」
うんうん頷く。
「……っ……はやて……すき…… も、と、シて……」
そう言って抱き付いたら、颯の体から、めちゃくちゃいい匂い。
延々攻められて――。
最後の方は、オレ、限界になってきて。
「も、むり……」
「――もう少し」
「……っんん、む、りだってば……ぁっ」
――なんか颯のスイッチがヤバい感じで入ったみたいで。
コンテストで優勝とかしちゃったからかな……気持ちが高ぶってるとか……?
――頭、へんになりそうなくらい気持ちいい中、そんな分析をして。
あとどれくらいするんだろう、なんて思いながら。
でも。大好きで。
「ん、……ふ」
また唇が触れてくる。
颯、キス、好きだな……オレも、好き。颯としかしたことないけど。颯とするのが絶対一番好きだと思う。
大好き。颯。
――多分、終わったのは、オレが、オチたから、かな。と思う。
◇ ◇ ◇ ◇
んんん……。
だるすぎる…………。
目を開けるのも、ちょっと大変……。
でも頑張って目を開けると、颯は、居なかった。
……あれれ? トイレ……?
そう思ったら、ドアが開いて、颯が両手に何かを持って、入ってきた。
「起きた? ちょうどよかった」
クスクス笑いながら、片方をオレにくれる。
「わぁ……」
あの日。
――颯と最初に、こうなった時に、作ってくれたご飯と同じメニュー。
「覚えてる? これ」
「当たり前。あのね、オレ、昨日、このご飯、美味しかったなあって、思い出してたんだよね」
「そうなのか? なんで?」
颯は、ベッドに座りながら、クスクス笑う。
「颯が作るご飯おいしいねって話になって。その時、思い出した」
「――そっか。オレもなんとなく、これ、作ろうかなって」
ふ、と楽しそうに笑う颯。
ちょっと、恥ずかしいけど、言ってみることに。
「なんか……颯、昨日、すごく……すごかったね?」
言ったら、思っていた以上に恥ずかしくなって、ぽぽ、と赤くなってしまうと。
颯が苦笑した。
「……ああ、ごめん。ちょっと制御効かなくて」
「――優勝したからとか??」
「ん??」
「ほら、なんかそういうので、気分が乗って、とか??」
「――それ全然関係ないかも」
「え。そうなの?」
そうなんだ、と思いながら頷く。
おいしいね、と話しながら、ご飯を食べ終えて、ごちそうさま、と手を合わせると、颯がクッと笑い出して、オレの頭を撫でた。
「ん??」
「――慧、さ」
「うん」
「昨日オレがベッドに運ぶ前、どこに居たか知ってる?」
「――……さあ?」
気づいたら、颯が抱っこしてくれてて、ベッド……?
「待ってて」
言いながら颯が、食事の済んだトレイを持って、部屋を出て行って――戻ってきた時には、スマホを持ってた。すごいほくほく笑ってて。
「何?」
「ん。覚えてる?」
はい、と見せられた写真は。
オレが、毛布と、颯の洋服たちを抱えながら、めちゃくちゃ安眠してるっぽい姿。
「……ん? これ、いつの?」
「昨日、昴たちが荷物持って来てくれてたからさ。慧をベッドに寝かせた後、少しリビングで話してたんだよ。皆が帰って、ここに戻ってきたら、こうなってた」
「――――これ……」
「巣づくり、だろ?」
「――っ」
「目ぇ覚めたら、オレが居なくて、寂しかったんだろ? 酔ってたから、そっち行って、オレの服抱えて、幸せそうに寝てるしさ。もう、なんか、可愛すぎるし――抱いてる間も、やたら煽ってくるし」
ぼぼぼぼ。
顔、あっつ!!!
「っっこ、これ、巣作りとかじゃないからっ……!」
「んー? 何で?」
クスクス笑う颯。
「オレ、もっとちゃんと作るって決めてるんだから……っっ」
そう言ったら、颯はそのスマホをオレから受け取ると。
「いいよ、これで。すげえ可愛くてもう、どうしてくれようかと思ったし」
「……っっこれじゃ、ダメなの……!」
「んー……まあ、じゃあ、そっちはまた今度、楽しんで? オレ、まだ合宿のやり直しがあるから」
「…………っ」
「とりあえず、この写真は、未来永劫、保存しとく」
「…………っ……」
真っ赤になってるオレの頬に触れて、颯がクスッと笑う。
「でも、オレが帰ってくる日に、やって」
「……」
「慧の巣作り――絶対見たいから」
ちゅ、とキスされながら。
「すげえ好き」
「…………うん」
「可愛い。慧」
「…………ん」
なんか恥ずかしいけど、やっぱり嬉しくて。
ちゅうちゅうキスされてると、あれよあれよと、ベッドに倒される。
「んん……??」
「がっつり食べたら、また抱くって――言ったろ?」
颯が、なんだか悪戯っぽく、笑う。「ん?」と考えて、すぐに思い出した。
あ。――最初の時のことか……。
なんかあれから。すごく色んなことがあって、人生、ぜんぶころっと、今まで考えてたものとは違ったけど。多分これからも、たくさんいろいろ、あると思うけど――。
ふふ、と笑ってしまうと、「ん?」と微笑む颯。
「……颯」
颯と一緒なら。いろいろあっても。
多分、きっと、ずっと楽しい。
「大好き」
ぎゅ、と抱き着いた。
-Fin-
ともだちにシェアしよう!